43 リリーは振り返る
わたしは、充実していた。コリンの研究の手伝いもフィリーと畑に出るのも楽しい。
学院には、年に二度行って話をしている。ハリソンが卒業してから回数に変更があって、こうなった。
そしてわたしは学生のなかに弟のカイルの姿をみつけた。もう家族とは縁を切ったし、向こうも近づいて来なかった。
そこで終わったつもりだったが、なぜか気になった。
しばらくしてなにが気になったのかわかった。制服が不自然に古いのだ。わたしの研究用くらいに。
普通にしててあんなに古くなる?
それで、ギルにそれとなく尋ねたら資料をくれた。
「カイルに関してだ。ただいまの彼を説明するには家族のことも少し関係あるから、すこし触れてある」
家に戻ってそれを読んだ。
なんというか・・・いろいろ考えた。わたしは不満はあったけどお金に不自由をしたことはなかった。
食事も美味しかったし、欲しいだけ食べていた。学院に行くことも当たり前で・・・帰りにお茶もしていた。
魔法の才能がなくても文官として働いて、恐らくナタリーに紹介された相手と結婚していただろう。
それがカイルは苦労している。一年遅れで入学したとか・・・家にお金がなくなったのだ。わたしが考えもしなかった事態だ。
ギルやブルース様に相談してカイルに匿名で奨学金を渡すことにした。
そこから、想像すると両親も苦労しているだろうが、それはそれだった。
詳しく知る必要はないと思っている。
そして、わたしはハリソンと結婚するんだなと思い始めている。
魔法士として好きなことを思い切りやれるのも、ある程度王室が後ろにいるからだということはもう、わかるし、王妃殿下がドレスを作ってくれて、そのデザインを決める席にハリソンがいる。これはそういうことだ。
政略の面はないとは言えないが、誰の結婚でもその面はあるだろう。ハリソンはずっと好意を示している。わたしの気持ちは・・・よく分からない。
消去法で決める形は申し訳ないなと思うくらいの好意はある。大事にしようと思う。
プロポーズされたら、「はい」と答えよう。
誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。
とても助かっております。
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