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04 わたしはそれなり!

離れていても治せることがわかった。それも楽しい、新たな秘密だ。


後回しにされたり、そっとされたり、そんななかでわたしは育った。サンデーがいなければ、クーロがいなければわたしは孤独に押し潰されていただろう。


学院に入って人と関わるようになって、わたしは自信がついた。家では家族に忘れられ、侍女だってわたしにちゃんと仕えないから、自分は駄目だと思っていたが、お話する相手が出来て、もっと仲良くなって、クラスの人とも普通に笑って話が出来ると自分はそれなりだと自信がついた。

わたしは、それなりだ。家族はわたしを大事にしないけどわたしは自分を大事にする。今はそう思っている。


この治療魔法を父親が知れば、それを利用しようとするだろう。それはいやだ。わたしは家のためになにかをしたくない。いつものようにそっとしておいて。そう思っている。


この力は絶対に秘密にするが、魔法が使えることを隠す必要はない。そう判断して、わたしは水魔法を人前で使うことにした。


火や風もやってみたら出来たが、水が一番しっくり来た。それで学院で水魔法を初歩から習った。おかげで治療魔法も上達した。


治療の魔法を動くカラスに向かって打っていたわたしにとって、動かない的に当てるのはとても簡単だったのだ。


わたしは慎重に平均点の魔法を使った。




婚約者のロバート様は、定例のお茶会にきちんと来てくれる。約束があって忙しいのに申し訳ないが、わたしはロバート様には我儘だから、お茶会をお休みにする気はない。


学院には婚約者同士で通っている人たちがいて、その人たちは朝、一緒にやって来る。同じ馬車に乗ってやって来るってことはどちらかがお迎えに行っているのだろうと思う。

わたしもロバート様をお迎えに行ったり、お迎えに来て欲しいと思うし、あの人たちと同じようにお昼を一緒に食べたいと思った。


それでお茶会の時、そのお話をすると

「なるほどね。わかった。だけど今日は約束があるから、もう

行かなきゃ。また今度」と言うと急ぎ足で行ってしまった。


わずか十分のお茶会だ。


侍女たちは片付けながら、聞えよがしに


「なんだか惨めね。たった十分のために着替えて、すがりついて、片付けをする身にもなって欲しいわね」と言いあっている。


「まぁ厄介者を片付けるために仕方ないわね。さっさと終わらせてアナベル様の所へ手伝いに行きましょう」


そんな声を聞きながらわたしは、裏庭へ行った。


今日はクーロが来ていた。クーロはいつもの木の枝から降りてわたしのそばに来た。


それから


「コゥコーコー」と鳴きながら少し歩いては振り返りまた

「コゥコーコゥ」と鳴いた。するとサンデーがやって来て

「ニャーニャーにゃ」と鳴いた。

そしてわたしの服の裾を咥えると歩き出した。どこかに連れて行きたいようだ。


庭の隅に壊れかけた門がある。そこを出ると森がある。森に入って少し歩くとカラスが蹲っていた。

お読み下さってありがとうございます。





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1話まえがきでのジャンルの定義について頭の隅に起きながら読み進めてきました。 不遇な少女が環境を乗り越えるために魔法というか超能力というかを身に着けたのならローファンかなぁと考えていましたが、魔法があ…
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