「孤独の剣士」決着
前回、ラペンの試練を終了したゼロは[時空の勇者]エデンと[未来の魔神]ライシの二人と対面する。ライシに戦闘を求められ、一発即発の中、エデンが二人に「試練」で決着をつけないかと尋ねる
「逃げんの?。」
エデンはにっこりと笑い、二人に尋ねた。ゼロと白髪の男[ライシ]は少し固まると、違いに賛成の意思を伝えた。
「逃げる訳ないだろ」
「[俺]に言ってんのか?」
「じゃあ!。決まりだね!。うん。」
エデンは振り返ると囁き、大きな声で叫んだ。
「難易度は一番低い奴…クリア条件は……。うん。別に良いか!。ゼロ!。ライシ!。」
「…おう」
「こいや!」
「……!。試練。」
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目の前のエデンは消え、辺り一面に草が生い茂る。見晴らしの良い平原の奥に[過去のエデン]が空を見上げて立っていた。
「…おい魔人。この勝負…」
「最後まで言わなくても伝わるから黙れ。先に死んだ奴の負けだろ?余裕だな」
「…エデンを甘く見るな。」
「甘く見た事ねえよタコ。お前を下に見てるだけだ。どうせ今回もスキル無しなんだろ?舐めやがって…」
「俺のスキルは…」
「冒涜。それが舐めてんだよ。何人の勇者が、お前に託したと思ってる…。お前にスキルを使われて、機嫌の悪くなる奴らが過去に居たか?あ?」
「そう言う問題じゃない。」
「なら何だ?プライドか?託された想いを100%答えられる自信が無いから使わないってか?…未完成でも託されたのなら、利用するだけ利用して、最後に結果を残す。それが[継承]だろ…。イラつくな。」
「無駄話が長い。来るぞ」
「知っとるわ」
「#################」
ゼロは攻撃を警戒し、[白級剣]を右手に持ち、左手で[黒級剣]の柄を握る。隣でライシはジャンプし、右手の人差し指に付けている指輪を取り外した。瞬間。
「?!」
音もなく、地面が抉られ、ゼロは体勢を崩す。ライシは指輪をエデンに向け、大きな声で叫んだ。
「雷鳴」
「######」
エデンは空を見上げて右手を上げる。途端に雲ひとつない空から雷がエデンに向かって落ちた。しかしそれは、エデンのスキル[リセット]によって無効化される。
「流石に強いな…なら」
ライシは右手の中指の指輪を外し、二つの指輪をエデンに向けた。
「雷炎」
エデンに向かって正面から炎の槍と空から再び雷が落ちる。地面に着地したライシはすぐに加速し、エデンの懐まで近付いた。
「二つは避けても同時に三つは無理だろ」
ライシは右手を強く握り、冷気の風を纏った拳は、エデンの腹を狙う。ライシの読み通り、エデンは炎の槍と雷を、両手で[リセット]した。追撃の拳から逃れる為に、一歩後ろに下がる。
「…?!」
ライシの拳はエデンの腹をギリギリ掠めた。普段のライシなら追撃する所なのだが…
「ロードしたのか!」
ライシのスキル[三人称未来]の見せる世界では、ライシの頭上と背後から雷と炎の槍が迫って来ていた。エデンはすぐに体勢を戻し、かすった腹を[リセット]する。ライシは体勢を急いで戻したが、避ける動作が間に合わず…
「断」
「?!」
雷と炎の槍は白く輝く[白級剣]によって軌道を断たれた。着地したゼロはライシを見下ろした。
「テメェ…」
「危なかったろ?感謝でもしてろよ。」
「誰が?!…初撃避けれなかった癖にペラペラと…」
「…[未来の魔神]が過去を掘り上げるな。」
「あ"?」
「んだよ。今ここで殺してやっても良いんだぞ?」
「やってみ…」
ドカンッ!!!!!
ライシの頭に向かってゼロの[黒級剣]が振り下ろされた。
「最後まで言わなくてもわかるから黙れ。」
間一髪で避けたライシは左手でゼロの左手を殴る。
「…」
「知ってんだよ」
ライシの読み通りゼロは左手を剣から離した。ライシは[黒級剣]を奪うと距離を取り、地面に落とした。
「お前…」
「ほら…使えよスキル。愛剣が一本無くなっちまったぞ?それとも良いのか?ぶっ壊すぞ?この黒いの」
「お前には壊せねえよ…そこらの剣とは次元が違うからな。」
「…なるほどな。確かに壊れないみたいだな。じゃあ…これをアイツに[リセット]して貰ったらどうなるか…」
「…?!」
「見ものだな」
ライシは足で黒級剣を拾い上げ、エデンに向かって投げた。危険を察知したエデンは、右手を構える。次の瞬間。
「ガァハ?!?!」
黒級剣によって、ライシは切り刻まれた。左脚は千切れ、右手は輪切りに。地面に倒れたライシは、笑いながら大きく眼を開けた。
「使ったな!!!スキル!!おいおいおい!!!」
「黙れ」
「冒涜!!プライド!![俺]の言ったとおりだ!一つのスキルでこれなんだ!!」
「黙れ…」
「過去の未練を断ち切れば!お前はそこらの勇者を軽く超える才能がある!!!なぁ!なんでだ?ここまでの力があって…なんで使わない!」
「黙れ!!」
「黙らねぇよ!!!未完成どころじゃない![俺]のスキルですら反応出来なかった!!……だからこそ…むかつくな…」
傷を再生したライシは立ち上がり、ゼロに近づく。
「この力を持って勇者じゃない?そんな事言ってたら…500年前、[俺]を足止め出来てた理由に納得が出来ない。[俺]が弱いとでも言いたいのか?過去に未練タラタラのお前が自分自身を否定してたら、本当にお前より下の連中はどう思う。」
「…」
「正直…鬱陶しいとしか思えない。」
「何が言いたい」
「…はぁ。もっと自分を信じてやれって事だ。…今回は[俺]の負けだ。助けて貰ったし、二発貰った。」
ライシは左手の小指の指輪を外して右手の人差し指にハメる。
「…」
「だがもし次。[俺]とお前で戦う日が来る時は…」
ライシは地面に転がる石を3つ拾うと、全力でエデンに向かって投げた。
「本気で来い」
「?!」
「####?!」
瞬間、エデンの首に穴が空き、[リセット]しようとする両腕を吹き飛ばした。試練はクリアされ、ライシはゼロに笑いながら囁いた。
「はぁ…同じ不器用同士。宜しくな。」
「……」
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「…」
「お?。早かったね!。どうだった?。勝負ついた?。」
「あぁ![俺]の負けだ。…」
ライシは俯くゼロの頭を叩くと王宮の外に歩き始めた。
「…。エデン!」
「!。なに?。」
「次の試練はもっとマシなやつを用意しろ」
「?。ごめんね?。わかった。」
「じゃあなゼロ。次会う時は…言った通りにしろよ?」
「…はぁ。気分次第だな」
「ざけんな」
言葉を吐き捨てたライシは王宮から消えた。二人の会話の距離感に、違和感を覚えたエデンは、興味深そうに質問してくる。
「?。仲良くなった?。」
「んな訳ないだろ」
ゼロは[白級剣]を持つと素振りを始めた。
「嘘だぁ!。僕とゼロの間に秘密は無しでしょ?。」
「秘密も何も事実だ。アイツが勝手にしてるだけで…」
「ほんとかなぁ?。うん。別に良いや!。いつ飲み行くの?。」
「……あと二時間ほど素振りをする。暇つぶしでもやってろよ」
「!。じゃあさ?。二時間ゼロの試練やりたいな!。多分一番難しいでしょ?。」
「…この前クリアしただろ」
「あれはまだ未完成だったじゃん!!。お願い?。」
「はぁ…」
「やったぁ!。」
「…二時間の試練だ。…楽しんでこい」
「うん!。楽しんできます!。」
ゼロは素振りをやめ、目を閉じ、エデンの肩に手を置いた。
「試練」
「…はぁ。もっと俺は…強くなる。エデン。いつかお前を…」
「超える為に」
[孤独の剣士]は一人で囁いた。そして再び…剣を振る。
エデンの試練について…
勇者や魔人によって多くの試練がありますが、その中でも、エデンは三つの試練を使えます。
一つは「過去の自分」
二つは「過去の所属勇者パーティ」
三つは「転生前の英雄パーティー」
です。
他にもライトは「過去の元魔王軍」を複数…など。
まだまだ[試練]の複数持ちが存在するのでお楽しみを!
ご覧頂きありがとうございます。世代の勇者「ゼロ」に関しての短編小説は次回の後日談(酒場での会話)にて、最後になります。本編での活躍をお楽しみ下さい。いいねと感想、ブックマーク登録も是非是非。それでは