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「孤独の剣士」

これはカイトがヴァート達に合う少し前の話です。

[再生の王国]

鳥が自由に飛び、民が街を歩く。こんな平和な日常が続くならどんなに辛い事でもやり遂げる。あの日抱いた復讐の心。今は亡き最優の…


「ほい!!早く行くぞ〜!!!」

「…まだ早いだろ」

「釣れないなぁ!で?正直に!ね?き!た!い!してるだろ?」

「…はぁ。…まぁな」

「だろ〜!じゃあ出発だ!カイト!」

「……だな…。お前も来るか?」

「…」

「無駄だって!あいつが話に乗っかるのは勇者様方だけなんだから」

「………はぁ。少しは剣を磨いたらどうだ?ライト。」


黒と白の髪。赤と青のオッドアイ。細い腕に握られた剣は白く輝き、太陽の光を反射する。


「うぉ?!久々に声聞いた!今日は運が良いな!!」

「はぁ…」


再び彼は剣を振る。青年の名は[ゼロ]。ライト、カイトに並ぶ勇者候補の一人であり、[始まりの勇者]の一番弟子。人々は彼を[孤独の剣士]と呼ぶ。


「ため息なんて付いて…楽しいかい?毎日毎日剣振って!」

「楽しさを求めて剣を握る訳じゃない。」

「あっそ!」

「…強くなるんだ。ライト。今以上に。何も失わない様に。」

「強く。ねぇ…どう思う?カイト?」

「正論だと思うが?」

「本音は?」

「……。ゼロ?俺の主観だが聞いて欲しい。」

「……話せ」


[魔神の勇者]カイト。彼の持つスキルの一つ[データ]。彼が視界に映す生き物の基礎データを把握することが出来る。

故に、戦場や作戦会議の場に置いてカイトの発言は重要視される。


「剣を握る意味を見つめ直すべきだ。」

「……何が言いたい」

「…お前は剣を持たなくて良いって意味だ」

「それは無理だ。俺の心はもう決まってる。」

「違うな。縛ってるだけだ。揺れ動く心を復讐の鎖で縛ってるだけだ。」

「…」

「お前は…」

「黙れよ。[魔神]。」

「……!」

「意味じゃない。意思だ。あの日の俺の弱さを。零れ落ちる命を…ただ見ることしか出来なかった。弱者の俺を…動かす為の意思だ。剣を持ち、戦場に赴き、悪を斬り殺す。俺の存在が…民の平和に繋がる様。俺は剣を握る。」

「…そうか」

「おいおい!!これ以上はやめとけよ!勇者候補同士の喧嘩なんて、流石の俺でも手が焼く!」

「…さっさと行けよ。今は一人にしてくれ…」

「…悪かったな」

「…」


王宮から立ち去る二人の勇者候補。背中を向け、ゼロは再び剣を振る。これが彼の日常。ただひたすらに、剣を振る。自身が強くなるために。己の復讐の為に。


「おっ!!ゼロじゃないか!久しいな!!」

「…?!勇者様?!?!」


ライト、カイトと別れ、六時間が流れた。王宮の扉が開き、一人の男性が大きな声で叫ぶ。ゼロは剣を止め、男性の元へと走る。


「おっと!!どうした?ゼロ?」

「試練を…頂きたいのですが…」

「はははっ!!変わらないなぁ!!よし!良いぞ〜。やるか!!」

「感謝します。」


銀髪の男性は笑顔で応える。彼の名は[ラペン]。別名[盾の勇者]。王国ベータに配属しており、彼の所属するパーティーは第二位。


「試練内容はどうする?」

「戦闘で…」

「難易度は?」

「一番キツイ奴を…」

「なるほど…よし!解放条件は対象の殺害。それ以外は…そうだな。現実世界で1週間経過したら…って感じで。どうだ?」

「最高です。」

「よし!やるか!!」


[盾の勇者]ラペンはゼロの頭をガシガシと撫で、笑顔で叫ぶ。


「試練!!!…頑張れよ」






          「孤独の剣士」





燃え盛る炎の海、空を埋める雲、とある王国。

石が溶け、木は燃える。地面を照らす炎に囲まれた王国にゼロは放り出された。


「…なるほど」


嫌でも思い出す。500年前の悲劇。立ち尽くすゼロの目の前に銀髪の男性。[ラペン]が現れる。


「?!勇者様?何故…」


突如、ゼロの足場からバリアの柱が生成され、攻撃される。ゼロはギリギリで避け、頭の中を整理する。


「なるほど…全盛期の…」


再びゼロは飛んで来るバリアを素手でガードする。が…


「グッ?!」

(重…?!?!)


衝撃に耐えられず、ゼロは吹き飛ばされた。空中で体勢を整え、腰に添える二つの剣のうち、白色に輝く剣。[白級(はっきゅう)剣]を右手に握る。


「行くぞ…(はく)…」


以上なスピードで追撃してくるバリア。ゼロは白級剣を下段で構え、タイミングよく、上に切り上げる。


(ざん)


バリアを真っ二つに切ったゼロは左脚で地面を蹴り、右脚で空気を蹴った。ラペンの心臓に狙いを定め、剣を振るう。


(かい)


途中。見えないバリアがラペンを包む。しかし、ゼロはこれを読んでいた。故に振るった左手の剣。名を[黒級(こっきゅう)剣]。バリアを破壊し、そのまま心臓に突き刺す。瞬間


「ガッ?!」


ゼロの腹にラペンの左肘がめり込む。いつの間にか左手から離れた黒級剣が地面に落ちる。


「?!」


最中に追撃の右腕の拳。ゼロは狙われた顎をすぐにガードするが…


「ガハッ?!」


二回目の左肘。そして…


パンッ!!!!!!


ガードを物ともしない右腕のフックがゼロの顎を砕く。


ガシャンッ!!


地面に黒級剣が落ち、続いてゼロが地面に倒れ込む。


「…あじか…」


倒れたゼロの背中に、冷たい感覚が走る。


「…あ……」


バン!!!!!!!!!!!


バリアの柱にゼロは潰された。吹き飛んだ肉片が辺りに飛び散る。開始二分でゼロは死んだ。



-------------------


「あ」


目を開き、ゼロはニヤリと笑う。現役の勇者。戦って改めて感じる絶望的な壁。何度繰り返しても勝てないと感じるこの絶望がゼロの身体を動かした。


「これに勝ったら…間違いなく…俺は…」


溢れ出る力への執念。ゼロは白級剣を右手で構え、ラペンが姿を現すのを待った。


「……」


燃える王国。先程と場所は変わらない。ゼロは不自然に感じ、白級剣を上段に構える。


「フーーーーッ…」

(これは普段の試練じゃない。つまり)


ドン!!!!!


「始まり方も違う!!!」


ゼロの背後からバリアの柱が押し寄せる。ゼロは白級剣を上から下に振り下ろし、バリアを真っ二つにし、瞬時に黒級剣を左手に持つ。追撃を警戒し、辺りを見渡す。


「グッ?!」


突如、ゼロの左脚に激痛が走り、ゼロは膝をつく。


「マジか…クソッ…」


薄く透明なバリアの板がゼロの左脚を切断した。たった一瞬の判断が、敗北へとゼロを誘う。


「次だ…」


ザンッ!!!!!


膝を付いたゼロは地面から生える複数の透明なバリアに全身を貫かれた。







次回「孤独の剣士 後編」



勇者候補ランキングと勇者候補内ランキング


一位/一位 「???」  

一言「もっと頑張ります!!」


二位/三位 「ライト」

一言「スピードが命」


三位/四位 「カイト」

一言「…もっと任務に当ててくれ」


四位/二位 「ゼロ」

一言「邪魔だ」




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