昔かっこよかった幼馴染が不登校になっていたので陰キャな私は癒し係として関係を取り戻したい
昔は仲良かった幼馴染の彼が不登校と聞いて私は彼の家に向かう。彼の様子はだいぶ疲労困憊のようで、ため息も多かった。そして、私は彼をいやすために毎日の話し相手になることを提案する。そのなかで生まれる二人の関係はいかに……
私には幼馴染がいた。
彼は活発な方で、結構人と仲良くしていたり、私が困っていたら進んで手伝ってくれるような優しい一面も持っていた。
しかし、あくまでそれは小学校までの話。
幼馴染の性と言うべきなのか、中学校に上がってからは全く会う機会も、目に入ることすらなかった。
そんな感じのまま現在私達は高校生。
もちろん、と言っていいのかわからないのだが、中学校未満で交友が終わっているので、連絡先は持っていない。
といっても、家が近いので必要ないと言えば必要はない。
まあ、それがあるとないとじゃ、私にとっては会話の難易度が大きく変わってしまうのだが……。
一応、私について言っておくと、私は残念ながら人と接するのは上手でも好きでもない。
小さい頃からずっと彼の後ろにくっついていたので、彼以外にはあまり有効的な接し方がわからないのだ。
そして、中学生以降は、いわゆる窓際で本読んでるタイプへと昇格してしまったのだ。
それが私の現在である。
そんなある日、私は学校である話を聞く。
「ねえ?1組のあの顔がいいって前言ってた子、わかる?」
「え~っと、名前は出てこないけど顔はわかる」
「その子がね?不登校らしいんだよね~」
「え~、マジ?モテてたのに学校に来たくなくなることとかある?」
「人間関係ワンチャン?」
「説あるわ~」
そんな会話だった。
普通だったら私の彼だなんて断定はできない。
だが、前々から彼女らは私の彼について話していたのは知っている。
だから、この会話もきっと彼の話なのだろうと私にはわかった。
彼が不登校……。
私は情報を頭の中で唱えて少し考えた。
そして思った。
彼の家に行こう。
私は放課後になるとすぐに彼の家に向かった。
彼の家のチャイムを鳴らすと、申し訳なさそうな顔をした彼の母が出迎えてくれる。
「ごめんなさいね。あの今不安定なところがあって……」
「あ~、えっと、お気になさらず……?」
私はこういうときにどういう風な応対をしたらいいのか分からずに、なんとなくそれっぽい言葉を言って、やり過ごそうとする。
「まあ、あなたが来てくれればあの子も少しは元気を出せると思うから、これからも仲良くしてあげてね」
「はい、こちらこそ……」
そんな社交辞令じみた言葉を私は彼の母に言って、私は彼の部屋に案内される。
彼の母は、ゆっくりしていってね、と言って離れていく。
私は彼の部屋の扉にノックする。
そして、返答も聞かずに扉を開ける。
「来た、よ……」
私がそう言って入ると、布団を殻のようにして顔だけ出して、カタツムリな彼の姿を目にする。
それを見た瞬間、彼から私に向けて怒号が飛んでくる。
「出てってくれ!」
「な、なんでよ……」
「出ていってくれって」
「なんでよ!」
私が大声で彼にそう返すと、彼はベッドにモフッと顔を当ててはあとため息をついてから私に向かって言う。
「今部屋着なんだよ。一旦出ていってくれよ。このままの格好で話すわけにもいかないでしょ」
「なんでよ、昔は一緒の布団で寝たことだってあるのに」
「それとこれとは話が別だし、何時の話しているんだよ。下手したら幼稚園の頃とかの話じゃないか?それ」
「大して変わってないよ」
「ぼくはだいぶ成長したと思ってるんだけどね?……というか、女性の君が気にしないで男性のぼくが気にするっていうこの状況もアレだけどね?」
「だって、別に君と私の仲だし……」
「いやいやいや、勘弁してくれ。頼むから一旦出ていって」
彼がそういうので、私は頬を膨らませて不服の意を示しつつ一旦部屋から出る。
そしてしばらくすると、彼がぴょこっと部屋から顔を出して入っていいよと声をかけてくる。
「それで、なんで来たの?」
彼は自分のベッドに腰かけて、床に座っている私に言う。
「え、だって、不登校だって、心配だから」
「まだ、心配されるのか……」
「何か言った?」
「いや、不登校って知られてなのかぁって……」
彼はまたはぁとため息をつく。
「それで、なんで学校に来なくなったの?私より、楽しい学校生活送ってたと思うけど……」
「ん~、別に何でもないよ。疲れて体がパンクしちゃっただけ」
「何かあったの?」
私は立て続けに質問する。
「ん~、人間関係?人と喋るのは好きだけどさ、人数多いと考える事大石疲れちゃうんだよね~。まあ、そんな感じっぽい?」
そういう時の彼の声は、落ち着いているというよりは、元気がなく疲労困憊と言った様子だった。
そして続けて彼は、
「まあ、しばらくはこうやって一人でいるかな」
と、下を向いて元気のない様子で言う。
「私も来ない方がいい?」
私は心配になってしまって彼に聞く。
「いや、いいよ。来ても。まあ、話す相手が一人なら考えることも少ないし疲れないだろうし……」
「うん、じゃあ、明日も来ていい?」
「いいよ」
彼がそう言ったのを聞いて、私は立ち上がる。
「じゃあ、あんまり長居しても悪いし、私は帰ろうかな……」
そう言った時、私は思い出したかのようにして彼に言う。
「あ、連絡先くれない、かな?」
「それくらいならいいよ」
彼が快諾したのを受けて、私と彼は連絡先を交換する。
「じゃ、じゃあ、時間があったら毎日来ていい?君のそばにずっといたいから」
「うん?」
「じゃ、じゃあ……また明日ね!」
私は自分の言ったことを隠すように、彼から顔を逸らしてそそくさと部屋から出ていこうとする。
「明日来るんだったらその前に前髪切ってきなよ。可愛いんだから、もったいないよ」
「え?」
「うん?」
私は彼の言葉に耳を疑う。
彼は何か変なこと言ったか?と言った様子できょとんとしている。
私はなおさら赤面して彼の部屋から勢いよく出ていく。
明日も来よう。
それに前髪も切ろう。
私は彼の家を出た時からうきうきして明日のこの時間を待ち遠しく思った。
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