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近衛隊に守られることに

 ベルティーナが料理長に話をしてくれた。


「料理長や料理人たちが、『いつでもお待ちしております』と申しております」


 ということだったので、さっそく厨房を訪れてみることにした。


 ベルティーナもいっしょに行ってくれると言ってくれた。だけど、彼女も仕事がある。付き合わせては気の毒である。だから、場所をきいて一人で行くつもりでいた。


 とはいえ、そういうわけにはいかないらしい。


 というのも、近衛兵がわたしを守ってくれるらしい。

 わたしの為に、常に五人の近衛兵が控えているという。


 ああ、いやだいやだ。


 王宮にいた頃も、一応は近衛兵がいた。だけど、いつも彼らの目を盗んではどこかに行っていた。だから、彼らはわたしを警護するのを拒否しはじめた。


 結局、わたしの警護はなくなってしまった。


 王族の命を狙ったり、なんてことはたしかにあるかもしれない。だけど、わたしの場合は違う。近衛隊は、そんな連中からわたしを守るわけではない。


 近衛隊はわたしを守るのではなく、わたしが何かしでかさないかを監視しているのである。


 彼らに四六時中見張られるのは、窮屈で仕方がなかった。だからこそ、彼らの監視から逃れる為にあらゆる手段を駆使した。


 ということは、ここでもやはり同じなのね。


 一応皇太子妃だし、仕方がないわね。それに、一応お姉様ってことになっているし。


 ここに来てまだ間もないというのに、彼らの目を盗んであちらこちらに行っていては、お姉様の身代わりだってバレてしまうかもしれない。


 みんなにはじょじょに慣れていってもらえばいい。


 わたしがほんのすこしだけ・・・・・・・・活動的で、窮屈なのが嫌いなのだということを。


「皇太子妃殿下、お初にお目にかかります」


 部屋の外に出ると、五名の近衛兵が並んでいる。その中で一番若い感じの金髪碧眼の美貌の青年が一歩前に出た。


「近衛隊の副隊長ダミアーノ・サバティーニと申します」


 まだ二十代前半かしら。他の四名よりかはずっとずっと年少に見える。


 まだ若いのに近衛隊の副隊長だなんて、きっと上位貴族の子息に違いないわね。


「はじめまして。アユ……、クラウディアです」


 つい本名を言ってしまった。お姉様の名前を名乗らなきゃ、よね。


 これから名乗ることが多くなる。気をつけなくっちゃ。


「皇太子妃殿下、お会い出来て光栄です。妃殿下のお噂は、かねてよりききおよんでおります」

「え?え、ええ、ええ。ありがとう。いい噂だといいのだけれど」


 そうだったわ。お姉様は、外見だけはいいのよね。ついでに猫っかぶりで外面がいいから、性格もよくみえるのよ。


 彼女の本性は、最低最悪なのに。


 この大陸中のすべての男性が、そんなお姉様にだまされているのよ。


 この国の皇太子も含めてね。


 だいたい、外見だけでも嘘ってバレバレじゃない。わたしってば、見た目は子どもっぽいし美しいというにはかけ離れすぎいる。せめて可愛いければいいけれど、それも「う……ん」って首を傾げたくなる程度。


 それなのに、身代わりで嫁がせるなんてお姉様もお父様もどうかしているわ。


「皇太子殿下より、妃殿下をお守りするよう仰せつかっております。鬱陶しいかと思いますが、出来るだけ邪魔にならないよう、目立たないよういたします。どうかご容赦下さい」


 ダミアーノは、ぺこりと頭を下げた。それから、並んでいる四人のところへさがった。


「あの、質問していいですか?屈強な五人もの近衛兵に守ってもらわないといけないことがあるのでしょうか」


 たとえば命を狙われているとか、日常茶飯時的になんらかの危険にさらされるとか。


 四人の近衛兵たちが、ダミアーノに視線を向けた。


 すると、ダミアーノの美貌に困ったような表情が浮かんだ。


「仰っているのが、命を狙われるとか危険があるという意味でしたら、それは違います。大昔は別にして、ここ数百年は皇族が凶刃に斃れたり、反乱が起こったりということはありません。妃殿下は、まだいらっしゃったばかりです。じょじょにお分かりになると思います」


 ダミアーノにそう言われれば、わたしもひくしかない。


「わかったわ。じゃあ、とりあえず厨房に行くわね」


 わたしはいったい、何の脅威から守られることになるのかしら。


 近衛隊の五名をうしろに従え、モヤモヤしながら厨房へと向かった。


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