素晴らしき朝食
わたしは、もともと食べることが大好きである。
一方、お姉様は体型を維持する為にあまり食べない。わたしにすれば、食べた分だけ動けばいい。だから、いくらでも食べてその分体を動かせばいいと思っている。
なんにせよ、食べることが大好きである。だから調理をすること、それから食材などにも自然と興味を抱いた。
いつかの日か、王宮から追いだされる。それだったら、料理を極めておいた方が食いっぱぐれがない。というわけで、料理人たちがいない間を見計らって、王宮の厨房で調理をしては自分で食べていた。
わたしの料理の師は、王宮の図書室にある料理本である。
「最高よ。久しぶりだわ、こんなに心のこもった美味しい料理は。彼らの調理の邪魔にならないタイミングで厨房に行って、直接お礼を言いたいんだけど」
「ありがとうございます。料理人たちもよろこびます。あとでこちらに来るよう、料理長に伝えますね」
「いいえ。よければ、厨房を見学させてもらいたいの」
「わかりました。料理長に話をしておきます」
人心地ついたところで、ベルティーナに伝えた。
そんなこんなで、あれだけあった料理を完食してしまった。
おそらく、料理人たちは足りないよりかは食べ残した方がいいとかんがえて調理してくれたはず。だから、かなり多めに作ってくれたのに違いない。
それを、完食するってどうなの?
ベルティーナは、わたしの食べっぷりを感心してくれた。
だけどほんとうは、朝一番からこれだけ食べてしまって呆れているわよね。
彼女だけじゃない。料理人たちも、驚くに違いない。
ベルティーナが食器などを下げてくれて、食後の紅茶をすすっている。
料理人たちも、朝食の後片付けが終って自分たちの朝食の時間をすごすでしょう。向こうさえよければ、庭園をぶらっと散歩してから厨房を訪れてもいいかな、なんてかんがえていた。
そのとき、すぐ右隣の部屋のガラス扉が開いた。
そういえば、右隣の部屋は主寝室だっけ?
替え玉皇太子の部屋だわ。
紅茶のカップをカップ皿の上に置いて様子をうかがっていると、でかいというかごつい人が主寝室からテラスに出てきた。
主寝室のテラスにも、こちらとおなじように真鍮製のテーブルと椅子が二脚置いている。
主寝室のテラスまでは、じゃっかん距離がある。向こうは、こちらに背を向けたまま両腕を空に突き上げ、思いっきり伸びをしている。
替え玉皇太子は、わたしに気がついていないのね。
まぁ、その方が面倒くさくなくっていいけれど。
挨拶するのが面倒だし、それ以前にバツが悪いかもしれない。
わたしじゃなく向こうが、だけど。