4話 北本さん
雪島に見つかってしまった。これではどうにも言い訳ができない。
「えっと、あの......」
北本さんが何かを言いかける。
「何だよ?」
「私、北村くんの彼女で......」
え?
「そうか。お前だったのか」
雪島は納得したらしい。
「すまない。勝手に割り込んだ。北村、嫌いにならないでくれよ?」
特に何も返事はしない。
雪島がどこかに行く。
「北本さん、さっきのは気を使ってくれたんだよね?」
「まあ、北村くんなら......」
北本さんの声が小さくなる。
「じゃあ、ありがとう」
そう言って、ぼくは立ち去ろうとする。
「ちょっと待って......」
「ん?」
「付き合って、って結局、その、どういう......」
そうだ。ぼくは告白したんだ。不誠実だった。
「今度の日曜日、一緒に買い物に行かないかなっ、て思ってさ」
「日曜なら大丈夫だから、駅前に9時でいい......?」
「じゃあ、そうしよう」
ぼくは北本さんと別れる。
教室を出て、家に帰る途中で、小山さんが電柱の後ろに隠れているのが分かる。
気づいていないふりをして、小山さんに驚かされてあげよう。
電柱の隣を通り抜ける。
しかし、ワッと出てくるわけでもない。
「気づけ、アホ」
後ろから叩かれる。
「いや、気づいたんだけど、花を持たせようと......」
「そんな花はいらん。気づかれる予定でいたのに」
そうだったのか。
「それで、北本さんとの日曜日、どうするわけさ」
「聞いてたの!?」
「私は、大体ずっとフラーレンのことは見てるからさ」
ぼくの頬が少し熱くなる。
「そんなに照れんでいい。こっちまで恥ずかしくなるし」
夕日のせいか、いつの間にかカラコンを入れられているのか、小山さんが赤く見える。
「それで、本題なんだけど、日曜日、盛大に振られて来い。雪島的には北本さんはフラーレンの彼女に見えているらしいから、邪魔は入らないはずだ」
「振られる、ってどうすれば......」
「また言ってるよ。誰でも簡単に落ちると思ったら大間違いだぞ」
「それもそっか」
「ただ、アドバイスをするなら、水着でも買いに行けばいい。そう提案したら引かれること間違いなしだ」
「じゃあ、そうする」
「それでだな、昼は北本さんに合うわなそうな店を選んで食事をする。それくらいだな。後は好きにやればいい」
「ありがと」
「あ、後一つつけ足しておくことがあった。来週は私と買い物に行ってもらうからな」
「いいけど、どうして?」
「どうして、って......考えろ、アホフラーレン」
小山さんは顔を背ける。
日曜日。
「おはよう......」
北本さんが駅に来る。
「じゃあ、行こっか」
「うん!」
ぼくは覚悟を決める。
「どこに行くの......?」
「水着を買いに行こう」
「え......?」