ホーリーブリザード! コアグレーション!!
「こっちもいくよぉ!」
美菓子は鮮やかな蒼い水流を発生させると、愛姫子と同じく究極魔法を唱えることとなる。
愛姫子の放ったそれは凄まじい威力を発揮、魔界の英雄と異名をとる須頃に対してもそれは絶大であり、大勝利をもたらしたのだ。
しかし、それと同時に相当なダメージを負ったことも美菓子は理解していた。
だが、躊躇している時ではなかった。
仲間と、そして先に負傷して昏睡状態の氷雨を早く救いたいと強く願い、強く念じた。
「究極魔法! ホーリー・ブリザード!!」
美菓子が唱えた呪文は地表を一瞬にして大雪原にし、暴風に舞い上がった絶対零度の聖なる氷の柱が幾重にも発生し五明の打った技を駆逐、さらに五明目指して氷の柱が迸った。
「な、なんという凄まじい力……」
五明が驚きと、わずかな恐怖を感じたその時、美菓子はさらに呪文を続けた。
「凝縮!!」
全ての氷の柱は五明一点に集結凝固し、聖なる氷の棺と化した。
美菓子の二段式の水の究極魔法は見事に五明を捉え、身動きが取ることができないように封じ込めてみせた。
「すげぇ……」
「二人の究極魔法、とくと見せてもらったぞ」
「あぁヒサ姉にも見せたかったな、あたしらの成長した姿を……」
それを聞いたオモチは、
「死んでない……それに五明も倒してない……」
前者は周知の事実、それぞれは氷雨の生命力が盛り返し、鼓動が強くなってきていることは肌で感じていたが、後者、つまり五明がまだ戦えるとは誰も予想だにしていなかった。
氷の棺を融解、粉々にし五明は濡れた全身を暖めるかのように魔法で暖をとった。
「驚きましたよ。あと少しで殺られるところでした」
再度構えた美菓子に五明は笑みを漏らしながらそう言ったが、目だけは笑ってはいなかった。
「五明様、そろそろ時間です」
「そうですね。ほんの少し遊ぶつもりがついつい力が入ってしまいましたね。須頃、飛べますか?」
「充分休ませてもらった。大丈夫だ」
「何よ!? 帰っちゃうの?!」
「愛姫子ちゃん! ここは素直に見送ろう! ウン。それがいい!!」
まだまだ戦う気の愛姫子を宥めるように言ったアシガルは美菓子と氷雨、それに魔軍幹部らを見た。
「アハハ、ここは撤退させてもらいますよ。伝説の存在の力、みせてもらいましたからね。魔軍幹部諸君、異議申し立ては魔城に戻ってから、魔王ジクイル様、それに魔参謀ビジョン様の御膳にて行いましょう!」
言うことだけ言って瞬間移動のようにその場から消えた魔界からの使者三名なのであった。
招かざる客の襲来を受けて満身創痍となったそれぞれは肩の荷を降ろしたかのように全身で深呼吸し、段違いの実力を有する五明らに脅威と畏怖の念を抱くのであった。
「やったね! 美菓子!」
「ウン! シンさん大丈夫ですかぁ!?」
氷雨が昏迷とはいえ、久々に揃ったアシガルパーティー。
だがしかし、己の恋に一途な美菓子は早速に自慢のフェアリーアップをヒラつかせながら、想い人であるシンにまとわりつくのであった。
もちろん氷雨の容態が峠を越えたことを知った上でのことだあったが。
そして戦いの終わりを見計らったかのように巨大な浮遊船が飛来、一行は魔軍幹部も含めて収容され、一路妖精の郷目指して帰還の徒についたのであった。
「ちょっとぉ! そこもっと詰めてよねぇ」
「うっさいわね! アンタこそもっとそっち行きなさいよ!」
どっちがどっちだか判りづらいほど性格の似た愛姫子とラヴチューンは言い争いをし、愛姫子は押されてアッパレと肌と肌とが重なった。
インラバという女性がありながら、愛姫子に密かに恋慕するアッパレは赤面し、何事か話かけようとしたがヤキモチ焼きのインラバに顔をつねられ押し黙った。
それぞれは何だかんだと楽しそうに過ごす船内なのであった。
つづく
萬しくお願いします!