悶絶! ラヴチューン×直江
「海神突斬!!」
以前にも増しての強い斬撃であったが、直江はスルリと避け、間を取った。
「ちょこまかと! 海波拳・発射!」
本来は肉弾戦での技であるはずの海波拳を、まるでロボットアニメのロケットパンチさながらの飛び道具に変えたラヴチューンは発射と同時に鋭く斬り込み、直江に攻撃の隙を作らせなかった。
「スゲェ……前に愛姫子ちゃんと戦った時よりも腕を上げてる??」
「一時的とはいえ、私達の力も加わっているんですもの!」
自信満々に妹を誇らしげに語ったのはマキだ。
「いやいやラヴチューン殿は元々戦闘センスは抜群! そこに我が剛力! それにマタタキ殿のスピードが加わったなら鬼に金棒!! ガッハッハッハ!!」
「だか一発も当たってはおらん! 不気味じゃあの直江という魔女……」
「そうそう、それでいいんですよ。あの首飾りはただの保険。相手の能力を引き出せるだけ引き出しましょう」
ニタリと笑った五明は、今にでも飛び掛かってきそうな美菓子を牽制するかのように無慈悲な眼を向けた。
「そろそろいいかな……マリオネット・ストリンガー!!」
一方的なバトルに見えたが、実は所々で直江は罠を張っていた。
それは無色透明な蜘蛛の糸のようなネットであり、ラヴチューンはそのネットに捕まり、身動きが取れなくなってしまった。
「くっ……何よこれぇ! 粘着質で取れない!」
「捕まえたよ。スパーク・ストリンガー」
ネットに高圧電流が流されたのか、ラヴチューンはその身体を引き裂かれるほど締め付けられ、そして電流が骨の髄まで染み渡るような激痛となり、悲鳴をあげた。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
お気に入りの鎧は砕け、思わず大剣を手から離してしまった。 それでも締め付けと電流は容赦なくラヴチューンを襲い、ついには身体を包む程度であった鎧下の服までも引き裂き、肌が露となった。
「ラヴーー!!」
「なんという惨技か!」
「このままじゃラヴちゃん、素っ裸にされた挙げ句にやられちゃうわよぉ!!」
マキは苦しみもがく妹に叫び、アッパレは惨たらしい敵の技に怒り、インラバは素っ裸を強調、それに同調したのはアシガルだった。
「まずいぞぉ! このままじゃラヴチューンがやられる! でも全裸も見てみたい!! けど痛そうだし……」
脳内会議でも開くが如く独り言を繰り広げるアシガルに、心眼の腕輪は言った。
「お前、先ほど自分の新たな力が解放されたことに気付いておらんのか?」
「えっ!? 俺ってなんかパワーアップしたのかよ!?」
ポカッ
「いったいなぁ何すんだよ!」
「レベルアップというやつだ、今のお前なら愛姫子と美菓子以外の誰かにその煩悩を照射することが可能! なはずだ。名付けて他人行儀やめました!」
「なんだよ、そのネーミング……だっさいなぁ」
「やかましい! 早くラヴチューンに煩悩照射せんかっ! 風前の灯ぞ!」
「だな! よぉし、他人行儀やめましたぁ! 受け取れ、ラヴチューン!!」
今まさに夢のコラボ、勇者が魔族へとその力を与えた瞬間であった。
スパークストリンガーの餌食となっていたラヴチューンは薄れゆく意識下の中で確かにそれを受け取った。
(なんて温かくて安らかな温もりなの? 力が湧いて出てきちゃうじゃない!!)
ラヴチューンは真っ白な激流の主となってストリンガーを引きちぎると裸同然であったが、都合よく見られたくない箇所は隠されており、全魔力を拳に集中、照準を無傷の直江に合わせると声を張り上げて奥義の名を叫んだ。
「いけぇ! 荒波激海嘯!!」
必殺の荒波は直江を捉え、山津波のように飲み込み、直江に致命傷を与えた。
「くっ……油断した……」
パサッと小さな身体を地面に委ね、直江は気絶。それをもってラヴチューンの勝利となった。
「なんと! 直江が負けるとは……」
「大丈夫だいじょうぶ。しっかりと任務は果たしてくれましたし、死にはしませんよ」
驚く須頃に五明は軽口を叩くと、すぐに応急治療を施して草むらに横たわらせた。
「やるぅ! ラヴチューン!」
「ラヴチューンさんスゴい気合い!!」
愛姫子と美菓子、それに歓喜に沸き立つ仲間を順に見渡したラヴチューンは最後にアシガルを見詰めると、
「あんたの真心、受け取ったわよ……」
そう言って善根込めた戦いの勝者となったことを確認すると倒れ伏したのであった。
(と、とりあえず一勝!! それにラヴチューンの真っ裸同然のフォルムは俺の脳内に永久にフィルムしておくぞぉぉ!!)
目に焼き付けるとはまさにこの事。
そして戦いは愛姫子×魔界の戦士・須頃へと以降していくのであった。
つづく
本日二話目の更新です!
萬しくお願いします!




