ひっぺがし作戦、展開!
「だけど使い魔くんにそんな大それたことが出来る魔法とか特技とかあるんすか?」
疑いの眼差しで使い魔二人を見たアシガルであったが、アッパレとインラバは自信満々に応じた。
「何を言う! お前の力を見せ付けてやれ! ピューロ」
ピューロはムズムズと手をちょこまか動かし小声で念仏でも唱えるようにしていたが、
「使い魔ジック! いでよ、手癖の悪い猿!!」
ボムッと煙の中から、どう見ても頓馬な間抜け面の猿が尻を掻きながら鼻水を垂らしていた。
ズデン。
一同は一斉にずっこけたが、むしろ上出来と言わんばかりにピューロはガッツポーズをした。
「ピューロは具現化魔法が得意なのだ! そしてこの間抜けな猿が必ずや目的を果たしてくれるはずだ! だよな!?」
どこの選挙戦の街頭演説かと思わせたアッパレであったが、最後は勢いをなくし、ピューロに答えを委ねた。
「よーし、手癖の悪い猿! あの緑色の首飾りを素早くひっぺがして来るっすぅ!!」
「ウキー! キキキキー!!」
しかし、ピューロの命令に背くように何かを要望するその猿は、そっぽを向くとまたもや尻を掻いた。
ズズズ。
一同は一斉にずっこけたが、ミューロが持っていた笹団子を例の手癖の悪さでササッと奪取した猿は無心にそれを頬張った。
「と、とりあえず腹が減ってんのかな?? けどすげぇすばしっこさ! これならひっぺがし作戦うまくいくかも!」
食料など持参していない一同は、猿に言うことをきかせる為にどうしたものかと苦慮していたが、おもむろに立ち上がったオモチがポケットから都合よくバナナを一房取り出した。
「おぉ、なんと都合のよい妖精なのだ! それを与えればきっと言うことを聞くに違いない!」
「……あげる……」
猿はバナナをいただくと旨そうに咀嚼した後、ピューロの元へと戻った。
「よーし、手癖の悪い猿! あの緑色の首飾りを素早くひっぺがして来るっす!」
誰が予想したであろうか、その猿は信じられないスピード、まさに一瞬、その刹那、三つの首飾りを手に提げ、甲高い鳴き声を発していた。
「は、はえぇ!!」
「今よっ! ミューロ!」
虎視眈々と出番を伺っていたインラバはミューロに素早く指令を出すと、ミューロも間髪入れず魔法を唱えた。
「はいっ! 使い魔ジック! いでよ、鴨ぉ!!」
ボムッと上空に現れた鴨は空の回送車両であるかのように猿の目の前で止まると、猿は鴨に乗り込み、何処か遥か彼方へと片道キップを握ったかの如く、飛び去って行くのであった。
「まさに鴨が、」
「ネギを背負って」
「来る……もとい、去って行った……」
ギャグパートを唖然として観覧するしかなかったのは五明らであったか、頼りの綱たる首飾りを間抜けな猿に奪われた挙げ句、なんの変哲もない鴨共々、見送るはめになってしまったからだ。
「なんかわからないけどラッキー!! いくよ愛姫子ちゃん!」
「えぇ! 獣人変化!!」
「よしっ! 美菓子ちゃん! 受け取れ!」
「はーい!」
連携プレーよろしく、アシガルは即座に獣霊石をして愛姫子を変化させ、貯めた煩悩を美菓子に照射した。
「この辺の手際の良さは感服するのぉ」
「おっ? 誉めてくれたんか?」
ポカッ
「いったいなぁ! 何すんだよ!」
「首飾りが無くなったとはいえ、強敵には変わりない! 油断するなっ」
アッパレとインラバがそれぞれの使い魔を誉めちぎり、成功を喜び合った後、壮絶なバトルが開始されていくのであった。
「オモチよ、場合によってはあの力を授けねばなるまいなぁ」
「……ウン……」
そして驚くことなかれ、アシガルは氷雨の命の灯火が強くなっていくのを接触する肌で感じた。
(愛姫子ちゃんと美菓子ちゃんが戻ってきたよ! その調子だよ! 氷雨さん!! 頑張っていきましょい)
と、語り掛けつつも、二の腕をモミモミといやらしく触っていくアシガルなのであった。
氷雨は混迷の最中、さらにセクハラを受け続けて眉を潜め、うなされるようであった。
「じゃあ、おっぱ始めるわよっ! いざ! 直江!」
先鋒ラヴチューンは臨界点を突破したエネルギーを爆発させるように直江に躍りかかっていくのであった。
つづく
萬しくお願いします!




