五明、無双!
突如として現れたのは魔界の使者、五明はつらつらと自己紹介をした後、再度魔軍の体たらくを罵った。
隊長たるマタタキはもとより、解任されたマキ、ラヴチューン姉妹、そして魔軍を裏切ったはずのアッパレ、インラバまでもが憤慨し、口々に反論した。
「いきなり出て来て偉そうよ! 相手が強いだけだもん!」
「あら、認めて頂いてありがとう! ねぇオモチちゃん」
「……うん」
マタタキと氷雨、そしてオモチは交戦中に互いの実力を認め合い、負ける訳にはいかないと奮戦していたらしい。
「そうよ! あんたら愛姫子の力を見てないじゃない!」
「その通りよ。余所者は大人しくしていてもらいたいものです」
姉妹もマタタキに同調、
「戦うと分かるが、愛姫子はグレートだ!」
「そうなの? そうなのよぉ!」
ついでにアッパレとインラバも加わる。
(なんだぁ? 仲間割れ?? つーか魔界って……敵が増えてるじゃん!!)
アシガルはそう心突っ込みをかましながら、そそくさと氷雨・オモチ陣営に戻った。
「おや? そこのちょこまかとコウモリのような日和見くんがまさか勇者さんですか? 失笑ものですね。アハハハハハァ」
その言葉にムッとしたのは氷雨であり、眠りについていた心眼の腕輪である。
しかし、心眼の腕輪は五明、それに特に須頃の存在に強烈なインパクトを受け、
「よいか、絶対にこちらから手を出してはいかん! 奴等は魔軍らとは段違い! 実力も性格もな」
戦闘を止められたアシガルと氷雨、オモチは取り敢えず魔軍内部の言い争いと認識し、静観することにした。
勝ち気なラヴチューンはなおも五明に噛みつき、須頃、直江らはマキ、マタタキと対峙し、一触即発の雰囲気を醸し出した。
「ハァ……わからない連中ですね。いいでしょう、実力の差というものを少し調教して教えて差し上げましょう」
相変わらずの慇懃無礼な態度で構えた五明に速攻で仕掛けたのはラヴチューンだ。
「ビジョン様に言付かってんのよ! 生意気だったらぶっ倒してもいいってねっ!! 海波拳!!」
「おやおや、もう少し言葉遣いからやり直しましょうか」
そう言ってラヴチューンを人差し指一本であしらって衝撃波で吹き飛ばすと、
「さぁお次は誰が調教されたいのですか?」
「ラヴちゃん! このぉ! くらえ、高速超音波ぁ」
「アハハ、これが超音波ですって!? あなたはまずは音の概念からやり直しです、それ」
マタタキは五明がちょちょいと指を上げ下げしただけで地面へと叩きつけられた。
しかし間髪入れず、マキが背後に回り攻撃した。
「ダークインパクト!」
五明は残像を残して逆にマキの背後に回り、
「あなたも魔界の瘴気を勉強し直しです」
背中をポンと押されたマキはまるで瞬間最大風速に当てられたかのように吹き飛ばされた。
「ど、どうなってるんだ?! 魔軍幹部がまるで子供扱いじゃないか!」
「えぇ、口無しさんの言う通り、ここは自重しましょう。相手が悪すぎるわ……」
旧友らをことごとくやられてしまったアッパレは怒気を込めて名乗りを上げた。
「五明とか言ったな、次は俺が相手だ! 一手ご教授願おう!」
「おや? 裏切り者の、逃げ腰隊長に何が出来ると言うのです! 片腹痛いとはまさにこのこと!」
ギャグパート担当のアッパレは今、二段階に解放されたその力を見せるのであった。
(なんか、やられる時の女性陣の悶絶がなんとも心を揺さぶるんですわぁぁ)
ピンチのはずの今、ラヴチューン、マキ、それにマタタキとインラバとを密かにカレーの辛度に例えていたアシガルは独特の感性で成り行きを見守って、何故か煩悩パワーを貯め始めるのであった。
つづく