ヨロシク相席!
妖精のご先祖ドバは伝承されし紅き勾玉を愛姫子に、蒼き勾玉を美菓子に手渡すと祈りを捧げた。
「太古の昔より我らを守護せし妖精王よ、今世の悪を撃ち破る希望の光にその力を貸し与えたまえ!!」
二つの勾玉はメラメラと燃え盛るような光と、それと反共するかのような涼やかな光を織り成し二人を包み込んでいく。
「よいかっ、ソナタらは成長率が加速している! そして今、守護神妖精王の加護を授けた! 勾玉に従い究極魔法の元素霊と契約を交わし、見事究極魔法を手に入れてみせよ!」
二人にその声が聞こえていたのかどうか。
とにかく二人は光の中に消えていくのであった。
「必ずゲットするわよ! 美菓子!!」
「えぇ! 愛姫ちゃん!!」
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「おぉ! 見てみろ、さすがはゴウワン! 自慢の怪力は健在だ!」
「ねぇ! 見てみてぇあっちではマタタキちゃんが奮戦してるわよぉ!」
アッパレとインラバは旧友にでも会ったかのように喜んだが、ピューロとミューロは凄まじい戦いに怯えていた。
「ん!? 姉さん、あれインちゃんじゃない!?」
「えっ? 本当だ、アッパレさん達だわ。また様子を見に来たのかしら?」
以前、獣人国にて再会していた両者はお互いに気付くと飛竜を寄せ合った。
「また会ったわね! だけど、どうしてここに?」
ラヴチューンの問いに例の不思議な体験談part2を手短に語ったアッパレ。
その体験が真実であることを如実に表す見た目の変化にマキとラヴチューン姉妹は驚嘆した。
そして姉妹は現在の戦いの状況をアッパレらに説明、自分達は今回は後方支援の任に着いていることまでを話すと、インラバは脱力したかのように言った。
「ねぇ、だったら二人の戦いを眺められる場所に着陸して観戦しましょうよぉ……疲れたわぁ」
その一言に全会一致で大地の人となったそれぞれに、使い魔二人はせっせと茶菓子だのお茶だのを提供した。
「インラバ様が大好きな笹団子を求めておきました、どうぞ!」
「粗茶ですがこちらもどうぞ!」
「あらあら気が利く使い魔ちゃん達だこと」
マキは穏やかな笑顔を向けると使い魔二人は誉められたことに満足な笑みと赤面で返したりした。
「そうか、愛姫子はいないのか……」
残念がるアッパレのほっぺたを強めにつねったインラバをみてラヴチューンは腹を抱えて笑う。
ごまかすようにアッパレは声援を送るわけである。
「頑張れー! ゴウワン!」
「マタタキちゃんもファイトォ!!」
「むむ? あれはアッパレ? アヤツが何故ここに……」
「インちゃん!? それにアッパレまで! 久しぶりに見たなぁ」
戦闘中にもかかわらずゴウワンとマタタキは久方ぶりにアッパレとインラバの顔を見た喜びは一塩であったか。
俄然やる気を出すのである。
「なんだぁ!? あっ! あの魔物が着てる鎧、父ちゃんの形見じゃんか! 勝手に持って行ったのはやっぱりナンチャラ隊長アッパレだったのか!!」
アシガルは愛着されている鎧と剣を確認すると、戦闘中にも関わらずアッパレらがいる相撲観戦さながらの即席枡席と化した現場へと駆けて行った。
「ちょっと! アンタ! それは俺んちの鎧と剣だぞっ! 返せよ!!」
「ん!? なんだ愛姫子の腰巾着ではないか。木の実を置いていったではないか」
まるで知り合いのように語らうアッパレに獣人国で絶戦を繰り広げた姉妹はアシガルも枡席に誘うよう促した。
「あら、あなたが勇者なの? 可愛い♡ 私はインラバよ、ヨロシクね♡ あなたもこっちへおいでなさいよ」
(ムム……甘口のマキ、辛口のラヴチューンときて、今度は激辛のインラバ女史……!)
ムズムズとむず返ったアシガルは、
「あ、じゃあお邪魔しまぁーす!」
美女達に囲まれるハーレムという名の枡席へと着座していくのであった。
「あら? まさか敵を調略しようと? やるわねアシガル」
そんなわけないのであるが、氷雨に勝手に感心されるアシガルであった。
つづく




