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シン×ゴウワン!!

愛姫子と美菓子は光のトンネルを走り続けていた。

「どうなってんの?! 全然トンネルを抜けないじゃない!」

「だけど一本道だし……進むしかないよ」



いつしか見慣れた路上に出た二人は激しい既視感を感じた。

この冒険の発端である易者(えきしゃ)が路地に(たたず)んでいた。


「ちょっとぉ! 早くあたしらを()()()の世界に戻しなさいよ!」

「易者のお婆さん、私達早く戻らないといけないの……」



「ホッホッホッ。存外早い帰りであったのぉ。己を見詰め直し、何かを掴んで参ったか?」

「フフン! あたし、スズキで良かったと今は思ってるわ!」

「私も。大勢いるサトウの中から選ばれたんだもの……仲間と一緒に困ってる人達を助けなきゃ!」


「それが答えよ! 自分の苗字に誇りを持って、弱気を助け強きを挫く! 分かりやすくていいわ」



愛姫子と美菓子は息を切らしながらも爽やかな汗を拭きつつ笑顔でお互いを見合った。


「よろしい!! 合格じゃ! おぬしらは今までスズキとサトウの名だけでやってきたようなもの。しかしこれからはその名を(いつく)しみ、信念を持って、更なる飛躍の段階に入ったのじゃ。己を信じ、仲間を大切に思うその心を忘れるでないぞ!!」




――――――――――――




「来たぞっ、ゴブリン隊、前に出ろ!!」

敵の出現を確認した防衛組長シンは大喝(だいかつ)するとゴブリンを前衛に、妖精らを後衛に配置した。



爆音を(とどろ)かせながら重魔隊長ゴウワンを筆頭に魔軍が到着。

空には翔魔(しょうま)隊長マタタキが鳥人間を指揮し、殿(しんがり)にマキ・ラヴチューンの姉妹が続いた。


両軍はついに広い平原で相対した。



「あっ! あの姉妹がいるじゃん!」

(ラッキー! 可愛いんだよなぁ甘口(マキ)辛口(ラヴチューン)! それにマタタキは中辛ってとこかな? グヘへ)


相変わらず場違いな妄想を持って欲情するアシガルだが、戦力的不利は(いな)めなかった。



「これはかなり厳しい戦いになりそうね……」

氷雨はそう言いながら手を握り、離さない妖精(フェアリー)巫女(プリーステス)のメガネ少女、オモチの実力に期待するしかなかった。



「やぁやぁ! 我こそは魔軍にその人ありと言われる剛力者(ごうりきしゃ)! 重魔隊長ゴウワンである!! 妖精、並びにドワーフどもよ、悪いことは言わん! 即座に降伏するべし!!」


落雷と爆風が一編に来たかのような大声が大地と空を震わした。



「私はこの国の防衛を引き受ける防衛組長! エダゴー・シンボ!! 魔軍の軍門に降るつもりはない! いざ尋常に勝負!!」


負けず劣らずの大音声(だいおんじょう)で答えたシンは自慢の鉄槌を構えるとパワー系ドワーフらも臨戦態勢となった。


「おろかな! これでもくらえっ! 剛腕戦斧(ごうわんせんぷ)

サイの化身、ゴウワンは丸太のような腕を振り上げ、巨大な斧を大地に叩きつけた。

地平線まで割れるようなその威力に妖精らは吹き飛ばされたが、オモチは魔法を使い妖精を守った。



「エルフ(ウォール)

「くっ、怯むな! お返しだ! ドワーフ・ショック!!」

応戦するシンもゴウワンの怪力に負けず劣らずのパワーを持って反撃に出た。


互いの技と技はぶつかり合い大爆発。両雄一歩も引かぬパワー対決へと移行していくのであった。



(な、なんだかなぁ……パワー系同士の戦いってむさ苦しいんだよなぁ……愛姫子ちゃんと美菓子ちゃんがいないのはやっぱり戦力ダウンだよなぁ……)



違った意味でダウンを憂いたアシガルは空のマタタキと対峙する氷雨を見つけ、とりあえずお尻をエヘヘと覗き見していくのであった。


(もう氷雨さんだけ見とこ!)



つづく

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