交戦間近!part2
「んで? まだ苗字に拘ってるのかよ? せっかく栄中の美人と可愛いコンビとして人気なのに。そんな無愛想な顔してりゃ皆近寄りがたいって!」
グンジと呼ばれた少年はどうやら愛姫子と美菓子と同じ中学出身の旧友らしかった。
「フン! どうせあたしらは地味でおまけにスズキと、」
「サトウだもんね……」
「だからよぉスズキとサトウの何がダメなんだよ。多少世間様に多くいるからっていいじゃねぇか!」
「あんたにはわかんないわよ!」
「そうですよ。それにあそこにいらっしゃる方々だって在り来たりな苗字じゃないでしょ?」
美菓子は楽しそうに談笑する六人組を羨望の眼差しで見たが、グンジは眉を吊り上げて反論した。
「あのなぁ、別にあいつらだって何の苦労もしないで今があるわけじゃないんだぞ! しっかり困難に立ち向かって、時にはケンカもしたりしながら……それでもお互いを信じる気持ちがあったからこそ輝いてるんじゃねーか!」
グンジは溜め息を漏らすと続けて言った。
「お前らも信じられる仲間だとか苦難に打ち勝つ性根をすえろよな!」
(なによそれ……意味わかんないし)
(そんなこと言われてもなぁ……)
二人は試練という名の自分探しの旅の途中であった。
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「そういえばよぉ、お前ってダダ様とかドバ様とかと知り合いだったのかよ?」
ポカッ
「いったいなぁ! なにすんだよ!」
「尊敬語で話さんかっ」
「そうそう、気にはなっていたわよね」
アシガルと氷雨はバタバタしていたこともあって問い質す時間がなかった疑問を心眼の腕輪に問い掛けた。
だからといって敵がいつ攻めてくるかわからない状況ではあったが。
「おぉそなたらには言っていなかったか。実は我は前聖戦でカラケルと数多の仲間と共に戦った一員じゃ!」
「えっ!? そうだったんのか」
「私はてっきり前勇者様が身に付けていた腕輪なのかとばかり……」
「まぁもう少し旅を続けていけば、いずれ我も全てを話す時がこよう。じゃが今はそなたらは必死に経験を積み、身も心も成長してもらわねばならん」
アシガルは身ものくだりで氷雨のボディスーツに包まれた美しい肢体をなめ回すように見ながらホフホフしたが、氷雨は違った。
「ちなみに狼王も妖精巫女のオモチも前聖戦の仲間じゃ! なぁオモチ! 狼王はその力を後世に残し獣霊石に形を変えたがな」
「そう……シンガンが腕輪になっててビックリ……」
「ナハハハハ!」
(前勇者パーティー? ということは前聖戦からの因縁が今回の戦いにもあるということなの……?)
それを知る者は心眼の腕輪のみ。
「宜しく頼むぞ、勇者と名乗るからには期待する!」
シンは鉄の塊のような鉄槌をズドンと大地に当てると言った。
(あれ?)
「シンさん、ちょっとその鉄槌見せてもらえますか?」
「ん、なんだ? おぬしにこの鉄槌の価値がわかるか? これは世界に名を馳せる名工ガンテツの逸品!」
(やっぱりか……つーかローウェンの槍も多分そうだったんだよな)
「あら、ガンテツってアシガルのお祖父様じゃなかったかしら?」
「な、なんだと!? 人間とはいえ、その腕は名人の域! ガンテツ殿だけは我等も尊敬しているが、まさかお前があの方の孫とは……」
もはや臨戦態勢とは名ばかりの盛大な雑談で都合よく伏線を回収してくれる便利な一団なのであった。
(あぁ……それにしても、そろそろ愛姫子ちゃんのいい感じの太ももと美菓子ちゃんの豊満なおっぱいを眺めたいなぁ……)
そしてきっちり妄想するアシガルであった。
つづく