ごちそうとエルフとドワーフと
「へぇ~これが妖精の国か! なんだ人間と同じサイズじゃない!」
「そうみたいね、あの妖精子供と呼ばれた子達が小さいのね」
そんなことを話ながら船はいよいよ妖精の国に上陸を果たした。
そこここに大きなキノコのような建物が隣接し、港では商船やらがひしめき合い、活気に満ちていた。
妖精子供達を引率しながらも大人エルフとドワーフの組長シンはアシガルパーティーを誘う。
「とりあえず、このお宿で休んでいて下さらない? 私どもはもう少し他用がございますの」
大人エルフはそれだけ言うとシンを伴って部屋を出て行こうとしたが、アシガルは一つ質問した。
「ちょっといいですか? 出来れば鍛冶屋なんかに買い出しに行きたいんすけど!」
「あら、装備品でもお求めかしら?」
「いや、愛姫子ちゃんの剣を手入れするのに必要な材料を仕入れたいなと思いまして」
「悪いわねぇ! アシガル!」
愛姫子は悪びれることなく礼を言った。
「でしたら妖精の郷の方がより良い物資が揃っている。我々はこれより郷に戻る。そなたらも一緒に来ればよかろう」
観念したのかシンは当初とは打って変わって親切にそう言った。
「やりましたね! 一気に目的地まで行けるだなんて!」
「そうね! ラッキー! じゃあシンちゃん達の準備が出来るまでここで休ませてもらいましょ!」
「シンちゃん……」
「あら、よかったわね親しみを込めた呼び名を頂戴して」
「そうよね。馴れない海上での戦闘でクタクタよ」
「それにお腹も空いたよねぇ……」
「おぉこれは気付かず申し訳ない。 この宿はルームサービスもある。メニューを見て好きな物を注文したらいい!」
「やったね! じゃーあたしはねぇ……おっ!? 妖精の国にもあるじゃない! あたしは背脂ラーメン大油!」
「本当だぁ! 私はホワイトソースイタリアン!」
「私もイタリアンにしてみようかしら?」
「俺は今度はカレーラーメンだなぁ」
それぞれは好きな物を注文すると待ち時間を有意義に過ごしたのであった。
「あの大人なエルフさんは何者なのかなぁ?」
愛姫子は大油に隠れた熱々の麺をものともせず啜りながら疑問を提議する。
「さぁ? だけどシン様と立場は変わらないような口振りだよね」
ちゃっかり推しメン呼びした美菓子はホワイトソースと太麺を絡めながら美味しそうに頬張った。
「エルフのお偉いさんでしょうね、やっぱり。あら? このイタリアンという食べ物なかなか美味しいわね!」
氷雨もミートソースを麺と絡めつつ独特の楕円形の容器を手に持って言った。
「何にしてもこの国のお偉いさんと御近づきになれたのはラッキーすよね! おっ? この国のカレーラーメンのルーはしゃばしゃば系か!」
それぞれは食事に疑問にと滅裂であったが、食し終えると大人エルフとシンについての話題で持ち切りだった。
「何にせよ郷に行けるんだし、あの二人に妖精の女王様に会えるように計らってもらいましょうよ!」
「究極の魔法をゲットしなきゃだしね!」
「どんな魔法なのかしらね? その辺は口なしさんは知ってるんじゃないの?」
話を振られた心眼の腕輪であったが、眠っているのか返答はなかった。
「こいつ時たま無言になるんすよね。しかも肝心な時に!」
(ムフゥ。これから試練が待っている。心するがよい……)
(えっとぉ郷に行ったら鍛冶屋に寄って、双俊の剣の手入れをして、とりあえず各々の後ろ姿でも頂きますか! 船上では揺れる度にダンダラスカートが翻って最高だっけど、やっぱりフェロモンも必要だし……)
鍛冶屋としてエロ代表として今後の予定を組むアシガルであった。
つづく