防衛組長とエルフと
アシガルはパーティーのリーダーとして妖精船の頭であることは間違いなさそうなドワーフに話しかけた。
いや美菓子を遠ざけたいがために。
「あのぉ俺達、魔王打倒の旅をする勇者一行なんすけど、導きにより妖精の郷を目指してるんすけど……上陸しちゃってもいっすか??」
何とも押しの弱い口上にドワーフは一言で返した。
「だめだっ」
「な、なんでっすかぁ!?」
「お前達のような氏素性の知れぬ輩を無闇やたらと入国させるわけにはいかない」
「お言葉を返すようですが、獣人国の王から妖精の郷に話がいっているはずです。友好国としてアシガルパーティーを向かえ入れるようにと」
氷雨は少し強めに言ったのだが、ドワーフの答えは覆らなかった。
「私は聞いてはいない。それにこちらも重要な任務の遂行中だ」
にべもなく拒絶されたことに腹を立てたのは愛姫子だ。
「ちょっとぉ! さっきから聞いていれば……アンタ何様!? アンタの国じゃないでしょうが!」
ドッシリと構えたドワーフは、
「私はこの国のドワーフを束ねるエダゴー・シンボ。そしてこの大陸の防衛組の組長も兼務している。その私が預かり知らぬ話。よってそなた達の入国を許可するわけにはいかない!」
「なになに!? お偉いさんなわけ??」
「みたいですね! エダゴー・シンボさんだって♡」
「そんな上の方が存じないとは……」
「ほれ、もっと強気に交渉せんか! こっちはそのお偉いさんらを助けたのじゃからな!」
「そうっすよ! 俺達の助けがなければあなた方はピンチだったじゃないっすか!」
「それに関してはお礼申し上げる。が、それとこれとは話が別!」
「ぐぐぐ……」
理路整然と捲し立てられアシガルは口ごもってしまったが、妖精船の内部から穏やかな声がそんなアシガルを助けるかのように会話に入ってきた。
「いいではないですか、シン。助けてくれたのは事実。それに悪党でもなし、恩を仇で返してはいけません」
「し、しかし! 私は人間の入国など聞いてはいない!」
ガチャッと扉を開け、姿を現したその声の主は淑やかで清らかな大人な雰囲気の女性であり、その耳は尖っていることから妖精であることは一目瞭然だった。
「あら? シンに話してなかったかしら? きちんと獣人王からの書簡は届いておりますわよ。なんでも獣人国を魔軍の魔の手から救った勇者と伝説のスズキ、サトウが次なる目的地を妖精の郷と定め旅立ったからヨロシク頼むと」
シンと呼ばれた巨体ドワーフは初めて狼狽した姿をさらし、慌てて反抗していた。
その感じからして老練な人物と勝手に思っていた一同は存外まだ若いドワーフなのかと思ったりもした。
「こら! 妖精子供! 勝手にあちらの船に行くんじゃない!」
シンの怒声を気にかけず妖精子供と呼ばれた細かな妖精らは愛姫子や美菓子、氷雨らとワイワイと交流を始めた。
「ほら子供らも懐いていることですし。悪い気は感じません。許可をあげて差し上げたらどうですか? 組長」
なおもしっとりと話すエルフの言葉に、遂に防衛組長は折れ、
「貴女がそこまで言われるならば致し方なし! 本船はこれよりテラドマリの港に入港する! そちらの船も付いて参れ!」
「やったね! 無事入国ねっ」
「渋いお声!」
「誰なのかしら? ドワーフ組長さんと同等か、それより上の立場の方なのかしら?」
(そんなことより……ついにきたぁー! 大人で美人で……しかもエルフ! 谷間がヤバイ! スリットからタラバガニみたいなお美しい脚が……)
入国より何より女体だとばかりに、しれっと欲情するアシガルであった。
つづく