装備しちゃうよ! スズキさん! part3
「しっかし、あんな別嬪さん二人と旅に出れるなんてラッキーだなぁ! ニイちゃんは!」
ニタニタしながら鍛冶屋のマスターは顎髭をジョリジョリさせた。
満更でもなさそうな勇者アシガルはそれでも愛姫子と美菓子がどんな職業でどんな能力を持っているのかは欠片ほどではあるが興味を抱いていた。
長い時間、刀剣コーナーの辺りでゴソゴソしていた愛姫子は突然一振の剣を天高くかざすと、
「これよっ! 真っ赤に光って自己主張してる!!」
それを見たマスターの和やかな顔は一変した。
「おい、元気なネェちゃん! 本当にそれが欲しいのか?」
「そう! この綺麗な剣があたしを呼んでるわ!」
なお一層難しい顔をしたマスターはアシガルに言った。
「あんた、とんでもねぇ仲間を召喚しちまったようだな……ちょっと待ってな!」
マスターはそう言うと店の奥へと消えて行った。
「なに? なんなの?」
「さ、さぁ……。けどその剣は確かにこの店に並ぶ刀剣とは格が違う気はするっす!」
「そうなの? お目が高いってやつ? アシガルってこういうの詳しいの?」
綺麗な剣を両手に持ち、初めて興味が湧いたようにアシガルの顔を覗く愛姫子を見ると、眉毛を八の字にしてロウソクのように溶けただらしなくも蒸気させた顔で答えた。
「ま、まぁ俺も村で唯一の鍛冶屋の倅なんすよ! だから目利きもするし、自作もするんすよ!」
「へぇ! 旅には便利ね! 鍛冶屋同伴なんて!」
(俺は勇者でしょー!)
と、心で突っ込みを済ませると、奥からマスターが戻ってきた。手には似たような装飾がなされた少し短い剣を携えていた。
「ほらネェちゃん! その剣はこの短めの剣と一対なんだ。なかなかその剣を欲しがる奴が現れなかったから一本はしまってたのさ」
ジャキっと二本の剣を手にした愛姫子は両手で剣を握る。すると絶妙なグリップ感を覚え、抜いてみたくなった。
「ねぇ! この剣を差すベルトが欲しいわ!」
ニタッと笑ったマスターはちゃっかりその剣専用の腰ベルトも持参していた。
「あるよ! 付けてみな!」
愛姫子は細い腰にベルトを巻き付け、左右に剣をたばさむとシャキンと二剣を抜き放った。
「こ、こりゃあ本物だ……。あんたやっぱりとんでもねぇヤツを召喚したもんだ……」
「どういうことっすか?」
ゴクリと唾を飲んだマスターは早口に言った。
「実はあの二本の剣は俺が鍛えた物じゃあない。俺のお師匠さんが造った逸品よ! あれを求める者が現れるとは思ってもなかった! というか、刀身を始めて見たぜ! 選ばれた者にしか抜くことが出来ねぇ特別な製法が成された魔剣さ!」
(師匠さん? 魔剣!? それってまさか……)
心当たりのあるアシガルは魔剣と言われた二振りの剣を抜き、軽く素振りをしたり、持ち変えたりと自在に操る愛姫子に視線を向けるのであった。
(二の腕がプルンと揺れるのもモヤモヤさせるんだよなぁ……)
つづく