獣人国編 終 さらば獣人の国!
アシガルパーティーは束の間の休暇を終えると次の日には玉座の間に集まった。
「ウム。アシガルパーティーよ、改めて礼を言おう! この国を救ってくれたこと感謝致す!」
集った兵士らはアシガルらを称え盛大な歓声を上げた。
「我等はこれよりマンテス国と同盟を結び、魔軍に対して徹底抗戦の構えを取る! ローウェン、エピカ! その方らは獣人国の聖人として、また代表としてマンテス国に参り、ケムタ13世殿にワシの書簡を届けて参れ!」
「ははぁ! 精鋭を揃え、早急に発ちます!」
「アシガル様達の活躍も氷雨様の御無事なこともしっかりとお伝えしますね!」
そう言うと聖人兄妹二人はアシガルらと固い握手を交わし再会を約束し、挨拶を済ますと凛々しく部屋を出て行った。
美菓子は哀愁漂う複雑な表情で、それでもローウェンの勇姿を目に焼き付けるように見てから笑顔で送った。
「さて、この奥の間にカラケルが残した伝聞がある。直接聞いてみるがよい!」
一行は言われるがままに隣室へと行くと例のボタンと新たな宝箱がポツンと置いてあった。
今度は私が押すねと美菓子はポチッとボタンを押すと先代勇者カラケルの陰影が現れ、つらつらと語り出した。
「よくぞ参った勇者パーティーよ! お前達がこのボタンを押したということはこの獣人の国を見事救った証! よくやった! 流石は我が子孫! ナハハハハハハ」
「なんか性格変わってない?」
「そうかしら? 元々こんな軽い感じじゃなかったかしら」
「ちょっと性格変わってるよね、愛姫ちゃん!」
早速ディスりを受けたカラケルであるが無視して続ける。
「獣人国の至宝、獣霊石を携え、次に目指すは北西! 妖精の郷だ!」
「今度は妖精かぁ……かわい子ちゃん一杯いそうでトキメキますなぁ!」
ガンッ
「あんたはそればっかりね!」
「あぁまた声に出てた……」
「妖精の郷には古の時代より伝わりし超魔法がまだ残っている! 獣人国では狼王の加護を授かったことと思う。――――そして同じく精霊石をゲットし、ついでに妖精らの信頼を勝ち取り、最終的には究極魔法を手にするのだっ!」
「おぉ究極魔法だって! ついに俺も呪文持ちになるのかなぁ!?」
「それはないっしょ!」
「覚えるんなら私ですよぉアシガルさん!」
「私も魔法を覚えたいけどね」
「ヒサ姉はもう魔法みたいな忍術があるじゃない! ここはやっぱりあたしと美菓子っしょ!」
例によってカラケルの話が途中であるにも関わらず雑談が絶えない一行を心眼の腕輪はジッと見定めていた。
(次なる国では厳しい試練を受けるが……)
「最後にこれだけは言っておこう! 妖精らは獣人よりさらに人間に猜疑心を持っている。半島に上陸することすら苦労すると思え! では次なる地にてそなたらを待つ!」
「妖精は心清らかで乙女には心を開いてくれる存在ですよっ!」
何処で仕入れた情報かわからないが美菓子には妖精の在るべき姿がキチッとインプットされているらしかった。
「決まりね! 今度は妖精の国! 信頼を勝ち取って、精霊石をゲットして、究極魔法もゲットってわけね」
「相変わらず短絡的ね。愛姫子は……アシガル、宝箱を開けてみたら?」
計らずも忘れかけていた宝箱を開けるとワールドマップと書かれた地図が入っていた。
「なにこれ? GPS機能でもあんのかな? あたしらの現在地を矢印で示してんじゃん! この光ってるのが妖精の郷よ! きっと」
一行は地図を携え、玉座の間に戻ると次の行き先を国王に告げた。
「なるほど。ならば北西の港に船を用意させよう! これからはその船で世界中を旅するがよい! そなたらに狼王の加護があらんことを!」
気前のよい国王の計らいで船をゲットしたアシガルパーティーはバージョンアップした装備品で装いも新たに獣人国の城を出発していくのであった。
――――――――――――
「王様、報告します! 最南端に突如として現れた謎の塔は今朝方その姿をきれいさっぱり消したとの報告がありました!」
「ムムム……勇者殿にはわざわざ言わなかったが、突然出現したその塔には何かいわくがあるのではないかと思っていたのだが……消えたということは勇者らには必要がなかったということか?」
アシガルパーティーを見送った国王は一抹の不安を抱きつつも救世主らの旅の無事を祈らずにはいられないのであった。
獣人国編 終
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