美菓子、失恋! その時に包容を
長い宴も終わり、次の日は体力を完璧に回復するために一日休暇とした。
旅の疲れを取り、それぞれは思い思いに過ごした。
例えばアシガルは激しい戦闘で痛んだパーティーの装備品を修繕したりパワーアップさせたりと鍛冶屋の倅として腕を振るった。
愛姫子と氷雨は獣人国の都を練り歩いて食べ歩きをしてみたり美しい景色を眺望したりとリフレッシュ休暇を楽しんでいた。
しかし美菓子にとっては地獄に突き落とされるような事実が待ち構えていたのであった。
「おぉ美菓子様! 紹介致します! 俺の許嫁のロンリです!」
紹介されたロンリと呼ばれた女性は淑やかで静かそうなおっとりした獣人であった。
「…………」
美菓子の想いを知っていたエピカは無言で落ち込む美菓子を慰めるのに苦心したが、女心など微塵も知らぬローウェンは何故落ち込んだのかと美菓子に詰め寄り、しかも自分への想いなど露ほども分かってはいなかった。
「…………グスン」
傷心の美少女、夢破れた美菓子は一人黄昏、黙々と装備品のバージョンアップに勤しむアシガルを訪ねた。
「ど、どしたんすか!? 目が真っ赤! それに元気もないっすよ?」
アシガルはありのままを言ったまでであったが、美菓子にとっては砂漠のオアシスに思えたに違いない。
美菓子は急にアシガルに泣き付くと、
「アシガルさんは優しいよね……いつもいつも……」
そう言って、手をアシガルの背にまで伸ばして抱き付いた。
(ななな、なんだあ~!? 美菓子ちゃん、どったの!? いやいやこれは棚からぼた餅! いやいや、千載一遇のぉ!)
ムラムラを催したアシガルはギュッと美菓子を抱き締める。
答えるかのように美菓子もより強く抱き締める。
(これはもぉしょうがないっしょ!? 行く所まで行くしかないっしょ!?)
「こやつ失恋したおなごの気持ちもわかっとりゃせん……」
ポカッ
と、不純な犯罪顔のアシガルを久しぶりに殴った。
「いったいなぁ! 何すんだよ!」
「ばっかもん! 美菓子はローウェンから受けた失恋で傷付いた心をただ誰かに慰めてもらいたいだけなのだと何故わからん!」
「し、失恋ですってぇ!? 俺という存在がありながらぁ??」
「お前も自分で言っていておかしいと思わんのかっ」
少しの間、抱き締めてもらった美菓子は、その間に気持ちの整理をつけて、新たなる旅立ちへの出発の準備とした。
「あぁ! なんだかスッキリしました。ありがとうございました! アシガルさん!」
「えっ? も、もういいの!? だってこれからが本番でしょ? これからキッスだとか諸々と……」
去り際にクルッと回って微笑んだ美菓子にはもう失恋の影は見当たらなかった。
「何言ってるんですかぁ! 余りイチャイチャすると愛姫ちゃんがヤキモチ焼いちゃうじゃないですかぁ!」
美菓子はそう言って勝手に来て勝手に癒され、勝手に中断すると勝手に笑って出て行った。
(立ち直るの、はやっ!)
「あ、相変わらず女心は難しいなぁ……」
アシガルはムラムラを堪えるように装備品のバージョンアップに再び精を出すのであった。
(けど美菓子ちゃんの整った頭と清潔な香りは最高だったなぁ……しかもあの巨乳が俺に密着してムニュ~って……)
先程の残り香を鼻をひくつかせてムズムズするアシガルであった。
(フン、このラッキースケベが)
つづく
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