その後~アッパレとインラバ遊歴!~
「俺はマンテスで愛姫子に負けた後、インラバに魔軍を抜けることを直接話して晴れて浪人となったんだがな……」
晴れて浪人とはまた珍奇な言い回しであるが、マキとラヴチューンは黙って聞いていた。
「まぁ遊歴と言ってもなかなか強い相手に巡り合える訳でもなく、修行の仕方さえ分からぬまま愛竜ザードを駆っていたわけなんだが、この獣人国の最南端に位置するところに謎の塔があってな! そこを攻略してきたのだ!」
インラバは二人の逃避行を駆け落ちとでも思っているのか話の端々で身を揉んだり恥ずかしがったりモジモジしたりしていたが、マキもラヴチューンも黙殺した。
「その塔には見たこともないモンスターがひしめいていてな、しかもなかなかの上級! 倒し尽くして最上階まで登り詰めるのに苦労した!」
(途中から体力が尽きて逃げてたじゃないっすか……)
(一人で攻略したいな口振りね! インラバ様の魔法の手助け合っての話でしょうが!)
ピューロもミューロも不満をあらわにしたが、喉から出かかったそれを慌てて飲み込んだ。
「最上階にはな、古めかしい宝箱が一つあった。開けてみるとな、摩訶不思議な光がチラチラとグルグルと回りながら俺とインラバに降り注ぐように散っていくのだ!」
もはや姉妹は真面目には聞いていなかった。
(こんな虚言癖があったかしら? アッパレ……)
「するとどうだ! 何故か身体が軽くなり、心が洗われるような爽快な気分となったのよ!」
「えっ!? それだけ!?」
ついにラヴチューンもツッコミを入れてしまった。
「それがねぇ、何か渋い声が何処からか聞こえて来たのよねぇ……」
こいつもかとマキは呆けてしまった旧知の二人を上目遣いに交互に観察し、一応聞いてみた。
「どんな言葉を聞いたの?」
「それがな、意味不明なんだ! なんか第一の封印は解いただの、次は妖精の国へ行けだの……全くもって不可解極まりない!」
『…………』
ついに姉妹は閉口してしまったが、腕組みしてその不思議な体験を思い出しながら語り聞かせるアッパレとインラバは魔軍に居た頃よりも陰が薄れ、これが本来の在るべき姿なのだと直感させた。
「なるほどね、じゃあアッパレとインちゃんはこれから妖精の国に行くのね?」
「えぇ! 私達の駆け落ちはまだまだ続くのですわ!」
「まぁ他に行くあてのない旅。だったら従ってみるのも一興かと思っている! だがその前にマキ殿とラヴチューン殿の魔力を感じたから気になって北上して来たということだ」
「そっかぁ! 二人はもう自由なんだね」
魔軍幹部と一口にいっても互いをライバルと認め切磋琢磨するだけではなく、信頼と友情とで結ばれたメンツなのだ。やはり袂を別つのは寂しい。
「互いに死んだ訳でもない、きっといつか何処かで再会も果たせよう! 俺はそう信じている」
「そうよぉ! 私らだって寂しい気持ちを希望に変えて旅立つのよぉ」
クスクスっと笑った姉妹は笑顔で送るべきだと思いなおし、アッパレとラヴチューンの門出を祝して見送る覚悟を決めた。
愛竜ザードにまたがったアッパレとピューロ、そして同じく飛竜にまたがったインラバとミューロ。
「また吉日にて逢おう!」
「マキっちもラヴちゃんも健康には気をつけてちょうだいよぉ! 私のように魅了するボディを目指すのよぉ!!」
「アッパレさんもインちゃんも達者で!」
「アッパレ、それにインラバ! また逢おうね!」
しばしの別れを経て、アッパレらは妖精の国を目指し、マキとラヴチューンは魔城に帰還するために呼び笛で新たな飛竜を調達していくのであった。
そして我等がアシガルパーティーはと言うと。
つづく