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決着! 勝者は誰だ!?

(今ラヴチューンの荒波激海嘯に匹敵する、いいえそれを上回る技を打たなきゃやられる!)


それはほんの一瞬の出来事であったが、目まぐるしく思考をフル回転させていた愛姫子にとっては充分過ぎる時の流れであった。



(ゴチャゴチャ考えていてもしょうがないわ! 私は最強! そう最強の存在なのよっ!)

両手で激海嘯を止めた愛姫子はやぶれかぶれに見えた。


「決まった! これで終わりよ! 愛姫子!!」

己の一撃必殺の技が、渾身の一撃がターゲットを捕らえたことにほくそ笑んでラヴチューンは眉を吊り上げた。



「愛姫子ちゃんピンチ! くそぉ!!」

「いやまだじゃ! よく見ろ! あの瞳は露程(つゆほど)も諦めちゃおらん!」


「愛姫子ぉ! 跳ね返すのよっ!」

「愛姫ちゃん、頑張れっ!!」


(みんな好き勝手なことを! やってやるわよ!)


「はぁぁぁぁー!!」

愛姫子は激海嘯を押さえる右手にアシガルの煩悩パワーを、左手にフェンリルの加護を集めると何かに気付いたかのような驚きの表情をしたが、ほんの一瞬の出来事であり、誰にも確認出来るものではなかった。



(これだっ! あたしの新必殺技!!)

凛々しく眉を寄せた愛姫子はその大声だけで跳ね返すかのような絶叫を(とどろ)かせた。


破邪拳聖(はじゃけんせい)!」

二つの異なる聖気を己のオーラとミックスしたそれは激海嘯を跳ね返すどころかかき消した。


「なっ!? なにぃ?!」

真っ先に驚愕の表情をしたラヴチューンは愛姫子の姿を見失っていた。


「ど、どこだ!? 愛姫子!」

「上よ! ラヴッ!!」


姉マキの声に頭上を振り見たラヴチューンは見切ることも、応戦することも出来ずに、ただ猛烈な勢いで落下してくる愛姫子の真っ赤な姿だけを見詰めていた。



「くらえぇー!! 烈火爆流斬(れっかばくりゅうぎり)ぃぃぃ」

愛姫子は両手で己のオーラからなる紅蓮の刃を振り下ろすと、文字通りの灼熱の炎が炸裂したかのようにとぐろを巻いてラヴチューンへと向かって行った。


(こ、これは!? ぐぐっ……)

避けられず、腕をクロスして防御したラヴチューンだったが、予想を遥かに上回る高エネルギーに圧倒され、大地へと激しく打ちのめされた。



スタッ

紅に燃え盛る愛姫子は次第に熱が冷めていく鉄のように通常スタイルへと戻っていった。


直撃を受けたラヴチューンに意識はもはや無く、それがアシガルパーティー、並びに獣人らの勝利であると確信させた。


「やったぁ! やったやったやったやったぁ!! やっぱり愛姫ちゃんは強いよぉ~!!」


先程までの疲れはどこへやら、美菓子は愛姫子の回りをピョンピョン跳ねながら嬉し泣きをするという器用な振る舞いを見せたし、氷雨はいよいよ(たくま)しく成長してきた愛姫子、それに美菓子を交互に見ては頼もしく感じていた。



「これこそ神以(しんもっ)て伝説! なぁエピカ!」

「えぇ! 救世主ですわ!」


それぞれに称えられた愛姫子は痛々しくもびっこを引いて放心状態のアシガルの目の前まで来ると崩れるようにアシガルにもたれ掛かって、

「アンタのお陰よ、アシガル……」


チュッ


と、誰にも見えないように土煙に汚れたアシガルの頬に(わず)かに振れる程度のキスを(ほどこ)し、アシガル共々倒れ込むのであった。


まだ荒々しい愛姫子の鼓動は脈打ち、アシガルへと伝わっていく。

(温かいなぁ……愛姫子ちゃんの心は……)



うっすらと感じたその心地よさと共に二人は深い眠りについていくのであった。



つづく


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