対峙、魔軍姉妹!
「やっぱりあたしらパーティーだけで行きましょ!」
光魔隊長マキと海鬼将ラヴチューンとの決着を付けるために出発する時になって急に愛姫子が言い出した。
魔軍を一度は追い払ったとはいえ、獣人部隊の被害もローウェンを筆頭に甚大であったからだ。
「いいえ! 私は行く末を見守る義務があります! 這ってでも付いて行きます!」
槍にしがみつきながらローウェンは同行すると言い張った。
「あんたさぁもうちゃっと戦えるんならまだしも……それじゃ足手まといでしょうよ!」
愛姫子はにべもなく突き放したが、邪魔だから言っているのではないことを一同は理解していた。そこでエピカが提案する。
「では私がヒーリングしながら兄に肩を貸して行きます! 付く頃には少しは戦えるようになっているはずです! 獣人族は治癒能力に長けているのです!」
この娘もかと溜め息をついた愛姫子であったが、美菓子もローウェンに付きっきりだったし、氷雨とアシガルと相談して同行を渋々許可した。
「足手まといにだけはなんないでよぉ!」
そう言うとさっさと北の砦目指して歩き始めた。
「あまり気にしないでね。あの子は不器用なのよ」
「そうなんすよ! ほんと不器用だけど、ああ見えて優しいところもあるんすよ!」
「だよね! 愛姫ちゃんはどうしようもないほど不器用だけど、結構人のことを考えてるんだよね!」
「いやいや、私が怪我をしているからです! 愛姫子様のお心、痛み入ります!」
「本当にお優しいお方です!」
冷たく突き放したつもりの愛姫子は何故か不器用のレッテルを貼られ、何故か優しさポイントが上がってしまい、恥ずかしくて後ろを見ることが出来そうもなかった。
「と、とにかく! さっさと行って倒して。獣人の国を解放するわよ!」
『おう!!!!!』
動ける者に怪我人を任せて、アシガル一行はゆっくりとだが北上していくのであった。
「ラヴ、わかってるわね?」
「えぇ! 姉さん! 残ったゴブリン達と飛竜を……」
「これで私は美菓子を、あなたは愛姫子と存分に戦える」
絆を取り戻した姉妹は必勝の策を講じてアシガルパーティーらを待ち構える。
「あっ! あれっすか?」
「そうです! あれが北の砦です」
「さて、幹部は愛姫子と美菓子に任せて、私とローウェン、エピカで何とか他を食い止めましょう!」
(えっ!? 俺は?!)
「アシガル殿は二人の戦いに必須な人物! これご覧の通り、俺も戦えるくらいは回復しました!」
ローウェンは無理を押して得意の槍をしごいて見せたし、エピカも弓矢を構えてキリッとした。
森から抜けると砦の入り口が見えた。
そこには待ち焦がれたかのように魔軍姉妹はニコッと笑い早速臨戦態勢となっていく。
「まったくセッカチな二人ね!」
「どの口が言ってんすかねぇ!」
「確かにね」
「愛姫ちゃんにだけは誰も言われたくないと思うなぁ」
「うるっさいわね! さぁ始めるわよ」
愛姫子がシャキンと剣を抜いたと同時にラヴチューンは呪文を唱え始めた。
「我が僕にして我が同胞よ! その力を結集し、我が力となれ! 合体ゴブリン! 合体飛竜!」
ラヴチューンの言葉に呼応し、ライダーゴブリンは集合すると合体し巨大化、飛竜もまた一匹の大きな飛竜に変化を遂げた。
「な、なんじゃあれはぁ……」
「我が魔法にて誕生せしは結合ゴブリン! 巨大飛竜よ!」
ユニオンゴブリンとヒュージ飛竜は氷雨、ローウェン、エピカの前に立ちはだかり、愛姫子にはラヴチューン、美菓子にはマキが。
(おぉ! よく考えたら女の子ばっかり! それによく見ると敵の娘もなかなか可愛いんじゃないですかぁ!?)
一人だけ妄想を始める場違いなヤツを無視して、今まさに最終決戦の火蓋が切られようとしていた。。
つづく
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