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決戦前夜2

まだ魔軍だった頃のインラバが切り取った獣人国北方の砦に傷付いたマキを抱えラヴチューンは退却していた。


姉であり部下でもあるマキへの治療を指示したラヴチューンはそれでも側から離れなかった。

(いつから私達はこうなったんだろう……)


昔の幻影に想いを馳せてみる。

お互い切磋琢磨していたあの頃、姉であるマキはいつも妹ラヴチューンの手本であり、目標であった。


いつしか実力では勝るとも劣らない力を得たラヴチューンは自分に足りないものを研鑽し始める。

それは精神面と苦手な知識を得ることであった。



マキは優しく腕は確かであったが、いつも誰とでも平等な立場で物事を考えるクセがあった。

そんな違った生き方を選んだ姉妹に、亀裂が招じる出来事が起こる。


魔軍の復活を経て各国への侵略に際し、魔参謀ビジョンは新たな仕組みの軍の編成を行った。

残酷なことに姉マキは部隊長、妹ラヴチューンはその上の海鬼将に任命されたのだ。


当初ラヴチューンは姉より上役であることを激しく拒んだが、ビジョンの説得に応じ将軍として生きる道を選ぶ。

幹部は皆そうだがどれだけビジョンの世話になったかわからないほどの恩義があるからだ。


しかし姉マキは激しく動揺した。


いつも自分の後ろを歩いていた妹が何故、自分の上を行くのかと。

しかし実力至上主義の魔軍にあってその疑問は成り立たなかった。

一番許せなかったのはいつも自分を手本にしていたはずの妹が、自分を飛び越えて将軍になったという事実であった。



「ラヴチューン、あなたは出世に目が眩んだ!」

「なんでよ! 魔軍の発展のために一生懸命勉強して武を極めた結果でしょ!?」


一度歯車が噛み合わなくなるとそれっきりであった。

互いに任務に忙殺される日々の中で互いを思いやる心をどこかに置き忘れたかのように憎悪が増していく。





そんなことを考えながら、今回の作戦にどうして姉妹を組ませたのかと魔参謀ビジョンの心を探りはじめたところでマキが目を覚ました。


マキは呆然と天井を見詰めると言った。

「私は負けたのね……」

「えぇ……私もあのままやりあっていたら負けていたかもしれない……きっと」


姉妹は今、敗北を必死に受け止めるだけで精一杯のはずなのに、何故かそれよりもこれまでのわだかまりをときたいと思った。



(どうしてかしら? あの必死で仲間を守ろうとした美菓子という少女を知ってしまったから?)


(どうしちゃったの、私……あの愛姫子とかって女の子の溌剌(はつらつ)とした戦いっぷりがそうさせているの??)


どうやら魔軍姉妹はお互いを許し信じ、元通りの認め合う洗練された姉妹に戻ろうとしていた。



マキは力なく手を伸ばすとラヴチューンの手を握り言った。

「ごめんね、ラヴ……本来ならあなたの努力を一番に認めてあげなきゃならなかったのよね……」


ラヴチューンも握り返すと涙を溜めて返す。

「私の方こそお姉ちゃんを裏切るみたいな真似をしていたよね……お姉ちゃんの方が立派なのにね……」


「いいえ。あなたを将軍にしたのにはきっと理由があるはずよ。ビジョン様はいつも全体を見渡しておられるんだもの」



二人を隔てていたわだかまりは一気に氷解し、その次には沸々と打倒アシガルパーティーという共通の目標を成し遂げるために燃え盛っていた。


『二人で協力して勇者パーティーを倒そう!!』


固く誓い合った二人は魔軍幹部ではなく、ただただ純粋に勝ちたいと願うのであった。



つづく



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