対決! 美菓子、本気パワー炸裂!?
「いい? 美菓子の弓と私の手裏剣で上空のボスを揺さぶりましょう。堪えかねて下降してきたら接近戦よ! 美菓子は距離を保ちつつ魔法攻撃を、私はその合間を縫って休みなく攻めまくるわよ!」
氷雨の作戦に同意した美菓子は相当使った薔薇の花弁をまた三枚むしると上空のボス目掛けて連射し、氷雨もまた手裏剣を間断なく投げ続けた。
「くっ、伝説のスズキかサトウだからといって、これが生まれたての実力なの!?」
どこかに余裕を持っていた光魔隊長マキはその鋭い連射と手裏剣の速度に内心慌て始めた。
(飛び道具がないわけではないけれど、ここは一旦陸に降りるか)
氷雨の目論見通り大地の人となったマキは即座に魔法攻撃で二人を牽制した。
氷雨はその軌道を見極めると前に後ろに左右にと回転したりジャンプしたりして避けたが、美菓子はフロストインパクト(氷系攻撃魔法)で相殺してみせた。
「なかなかやる! ではこれはどうか! 魔界の闇を照らす後光の光よ、我に力を! 魔光撃滅掌!!」
目映い光のようで魔界のジメジメした闇をも含むようなその痛烈なエネルギーの塊は美菓子を襲った。
「危ない!」
咄嗟にローウェンが美菓子を庇ってマキの渾身の一撃をもろに受けてしまった。
「ロ、ローウェンさぁん! 大丈夫ですか?!」
「なんのこれしき! 美菓子さん、あの攻撃だけは受けてはなりませぬ! 昔聞いた、魔界の光。何人たりとも防ぐことも弾くこともできないと聞きます……」
ローウェンはそこまで言うとパタリと倒れてしまった。
「美菓子! 他の獣人にローウェンを任せて戦いに集中して! でないと今度やられるのは私達よ!」
(なに!? なんなのよ! どうしてこんな……)
もはや初恋よろしくローウェンへの恋心に脇目もふらず邁進していきたい気持ちの美菓子は、眼前に力なく横たわるその人の傷付いた頬を撫でると普段は柔らかい眼差しを凛々しく吊り上げてマキと対峙した。
「許せません! 仇は私が必ず!!」
「いや死んでないでしょ!?」
氷雨の絶妙な突っ込みも犬に論語とばかりにシカトした美菓子は全身全霊を賭けて強敵マキを倒す事だけに集中しだした。
美菓子の本気は膨大な量の魔力を解放し蒼きオーラが身を包んだ。
「物凄い力だ。しかし私には勝てないよ! もう一度くらいなさい! 魔光撃滅掌!」
「そんなものぉー!!」
美菓子は全魔力を右の手に集め、魔光撃滅掌をその手で押さえ込もうとした。
「危険よ美菓子! ローウェンが言ったことを忘れたの!?」
しかし美菓子はお構いなく、なおも押さえ込みにかかった。
「バカめ! これで一人倒したようなものだ! ハハハ」
自身の技に絶対の自信があるマキはそう言って嘲笑ったが、美菓子の本気はその遥か上をいっていた。
「跳ね返せ! 私の本気パワー!!」
技の名なのかただの気持ちなのか、そう叫んだ美菓子はなんと魔光撃滅掌を跳ね返し、マキにお返ししたのだ。
「な、なんだと!? くっ」
一瞬にしてピンチと言う名の撃滅掌が逆にマキを襲った。
「うぉぉ! こんなことが……」
絶対最強と信じて疑わなかった技を、今まさに受けつつマキは思った。
(こんなメチャクチャな力を持った者に敵うわけないじゃない!)
撃滅掌は逆に押さえ込みに入ったマキ共々大爆発をおこし、巻き起こる噴煙の中、自滅したマキが力尽き倒れた。
「勝負はあったわ! 魔軍のモンスター達! まだやると言うなら最後まで相手をしてあげるわ! どうするの!?」
氷雨の凛然たる声は森に響き渡り、それが戦いの終わりであると両軍に伝えるようでもあった。
つづく
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