獣人国、行脚!
「と、まぁ冗談はここまでにしておこうかしら?」
トランスしたかに見えた氷雨はニッコリすると言った。
(ありがとう。場の雰囲気を和ませる為にしてくれたのよね……)
氷雨はアシガルのセクハラが人間と獣人の確執を取り除いてくれたことに感謝した。
制裁を終えた二人も清々しい顔をしていたし、エピカとローウェンもアシガルパーティーは思っていた人間と違うことを感じて心を許し始めた。
「どうだ? ワシの一挙手一投足が救ったのだぞ!」
「……しっぺ返しは全部俺じゃねーか! けど最高の感触だったなぁ……みんな」
多少の痛みを伴ったが手に残る温もりをいつまでも噛み締めるアシガルであった。
「ねぇ、ローウェンさん。都で王様に会うんですよね?」
「えぇ、あなた方にはまずはこの獣人国を治める王様に会ってもらいます。その昔、魔軍討伐の旅に出た勇者カラケルはこの国で仲間を得たと聞きます。王様はその伝聞を知る唯一の存在!」
美菓子は熱心にローウェンの話に耳を傾けていたが、アシガルは面白くないと言わんばかりに美菓子を目で犯すように睨みつけた。
「なんか美菓子ちゃんローウェンさんと仲良さげっすね……」
「あら? 気になる? 恋多き娘なのよね。私も驚いたわ」
「ムムムムム……気にいらない! みんな俺のもんだもん!」
「いつっからあんたのモノになったのよ!」
「あぁまた声にだしてたぁ……」
豊かな自然を愛でながら話に花を咲かせて歩く一行は中央大陸もそうだが、魔軍の進行を受けているのが嘘のように麗らかな営みがそこにはあった。
「出たっ! ソードゴブリンと弓ゴブリンだっ」
穏やかな日常をぶち壊すモンスターの出現に戦闘態勢をとる。
「ここは俺にお任せあれ!」
ローウェンはそう言うと愛槍を構えると素早い動きで敵を翻弄すると瞬時に斬り裂き、突き差し掃討してのけた。
「へぇーローウェンさんもなかなか強いじゃない!」
「ですよね! カッコいい♡」
「美菓子ちゃん、なんですってぇ!?」
「あの槍も相当な攻撃力があるわよね」
得意気に槍をしごいたローウェンは語る。
ローウェンが持つ槍は世界を巡る伝説の鍛冶職人、ガンテツの逸品であり、ガンテツは獣人国を巡って戦士に武器を提供してくれた恩人なのだと。
「ぐっじいちゃん……そんなことして旅してんのか……」
「アシガルのじいちゃん凄い人だったのね!」
一同はそんな会話をしつつも、都に到着し城へと向かった。
獣の国、人間とは異なる文化が根付き、建物なども独特な雰囲気を醸し出していた。
国王との謁見となり玉座前にひれ伏す面々は少し緊張していたか。
「王様のおなーりぃ!」
ローウェンやエピカが狼人間ならば王様は熊人間といったところか。
「おお、そなたらが今世の勇者パーティーか! なるほどなるほど、前世の勇者カラケルとよく似ておる! それにスズキとサトウもまた……」
「愛姫子よ!」
「美菓子ですぅ」
二人は下の名前を強調することはやはり忘れてはいなかった。
ローウェンは畏まりながらもマンテスの姫、氷雨も紹介した。
「なんと! 王族も魔軍討伐の旅に!? マンテス国はやはり王族の鑑であるなぁ」
雑談めいた会話はしばらく続いたが、それまでにこやかに対話していた国王は一段落したところで表情を締めると声のトーンを落として言った。
「さてそなたらが知りたい勇者の伝聞であるが……」
本題に入った国王に熱視線を送るアシガルパーティーであった。
つづく
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