アシガルパーティー揃い踏み!
ズガシャン
ローウェンに連れられてやって来た美菓子と氷雨もまた問答無用で牢屋に入れられた。
しかしアシガルと愛姫子とは角度的にちょうど見えない位置に入れられ、アシガルらはまだ美菓子達の投獄を知らない。
「お兄様、よくご無事で!」
「おぉエピカ! お前もよく無事に帰れたな!」
「私はソードゴブリンに襲われたところを勇者様達に救って頂いたのです!」
エピカはそう言うと冷たい視線を村長に向けた。
「そういえば俺が連れて来た連中も仲間を探していたな……」
「そうなんですか!? 村長! いつまでも彼等を閉じ込めておく気ですか!」
普段は温厚なエピカの激しい責めに村長は大きな溜め息の後、二人が回収してきた獣霊石を前に置くと、
「わかったわかった! エピカが言うことが本当ならば獣霊石が教えてくれよう! さぁ我が村の二人の聖者よ、石に祈りを捧げ、在りし日の姿へと甦らせるのだ!」
エピカとローウェンは頷くと跪き、腕を組んで祈りをはじめた。
真っ白な二人の霊気はゆっくりと高く登ると、二つの石を練り上げ一つの石へと変えた。
「おぉ342年の時を経て今再び獣人国を救う灯火が甦った! よし、すぐにそのなんちゃらパーティーとやらを連れて参れ! 本物の救世主ならば獣人以外触れることの出来ないこの獣霊石をその手に取り、向かう先を示すはず!!」
ガチャ……ガチャチャ
二組の投獄者等は解放され、村長室に引き立てられた。
「あっ美菓子ちゃん! 氷雨さん! 無事でよかった!」
そう言ってアシガルは二人の美しくも豊満なボディをなめ回すように見た。
バシッ
「いい加減にしなさいよ、あんた! 二人とも! 心配したよー」
「あら、愛姫子も元気そうで!」
「愛姫ちゃんは相変わらずだねー」
なんとものんびりした再会であったが、村長室に来ると殺伐とした雰囲気に緊張が走る。
「アシガル様、愛姫子様! 本当にすみません! 村長が頭でっかちなもので……」
「おい!」
「だが、俺もにわかには信じがたい。救世主は今度こそ我等が獣人から輩出するものと信じていた。魔軍を解放した元凶たる人間からはもはや出ないものと思っていたが……」
「あぁローウェンさんも相変わらず逞しいお姿……」
(恋多き少女、発動ね。ウフフ)
「まぁいいわ! それで? どうしてあたしらを解放したわけ?」
急に場を仕切りだした愛姫子であったが、人間が魔軍を解放した件はうっかり聞き忘れていた。
「話はエピカから聞いたが、ワシ等はどうしてもおぬし達が救世主一行であると信じられぬ。そこで勇者! と名乗る若者よ、そこにある石を持ってみてくれぬか」
意外で簡単そうな注文にアシガルはツベコベ考えることもなしに、その辺の小石でも摘まむように獣霊石を手に取って見せた。
「この石がなんなんすか? あぁエピカちゃんが言っていた何か大事な石ころなんだっけ?」
そうアシガルが言った瞬間、これまで沈黙を保っていた心眼の腕輪がツラツラと語り出した。
「とくとみよ! 獣人達よ、これがアシガルが勇者である証! これよりは勇者アシガルの名のもとに協力を怠らず、崇め立てるのじゃ!!」
そこに居並んだ獣人達はあっさりと石を手に取ったことに驚き慌てふためき、そして頭を垂れた。
「いやはや、これは驚きいった! まさか心眼様まで一緒とは! 先に言ってもらえれば手荒な真似はせなんだ……」
「なになに? その石ころがなんなの?」
「なんかそれに心眼さんも有名なのかなぁ?」
「皆々、よぉく聞けい! 今ここに再び魔王ジクイルを封印できる唯一の存在、勇者が舞い降りた! 古き言い伝えに則り、我々は今後勇者一行を都にお連れする!」
『おぉう!!』
(なんなんだぁ? いったい)
つづく
より多くの人に読んでもらいたく!
萬しくお願いします!