獣人の娘、エピカ!
「やぁっ!」
愛姫子の奇襲は功を奏し、数匹いたゴブリンはバタバタっと倒れた。
「キャー! 近寄らないで魔物ぉ!!」
若い女性の声に敏感に気付いたアシガルは愛姫子に指示を出した。
「愛姫子ちゃーん! あの娘が危ない!」
「ってだったらアンタが助けなさいよ!」
愛姫子はクレームをつけつつもギギィっと止まり反転すると、今まさに少女に飛びかからんとするゴブリンを十文字に斬り裂いた。
「いやいや、相変わらず強い女子じゃ! 見とれてまうわい! ガハハハハ」
「エロ腕輪め! 俺の指示のお陰だろ!」
ポカッ
「口を慎まんかっ! このエロ勇者!」
またしても開戦された不毛な諍をうんざりした体の愛姫子は遂に実力行使に出た。
「アンタらはねぇ……ちょっとは真面目に冒険を楽しみなさいよ!」
そう言うとアシガルにオヤジの拳骨並みの一発を食らわせ、
「あとそこの腕輪! 導くもなにもこれじゃスケベが倍増しただけじゃない! こうしてくれるわ!」
そう言うと心眼の腕輪をグルグルと布で覆い隠した。
「あぁ! 見えない! 愛姫子の姿が見えん! なんということだぁ……この世はまさに絶望しかないというのかぁ!」
「もう! 大袈裟ねっ」
「心眼のくせに隠すとなにも見えないなんて……贋物だなコイツ」
わちゃわちゃと騒がしいパーティーに助けられたうら若い女性は両手を前に組むと、
「あの……どなたか存じませんが、助かりました。ありがとうございました」
そう言って深々とお辞儀をした。
「ん!? んん!?」
愛姫子はその女性の頭にピコピコ動く何かを見付けると女性に駆け寄った。
「ね、ねぇ! なにこれ!?」
「えっ? 耳ですが……」
「み、耳? えぇ!?」
「なに騒いでんすか?」
「そうじゃ! ワシには何も見えぬぞぉ」
「アシガル、見てよ! 耳ぃ~」
不思議そうにアシガル一行を見つめる女性は頭部に大きな三角の耳を付け、よく見ると体毛がふわふわのモコモコであり、人間ではないことを瞬時に思わせた。
「ほほう、まずは獣人の国ということか」
アシガルと愛姫子は不思議な風体の女性を見たり、お互いを見合ったりとしていたが、この世界には5種類の人種がいるのだという氷雨の説明を思い出すと、なるほどと納得をしたようだ。
「あ、あのぉ……改めましてお礼申し上げます。私はこの近くの村の住人、エピカと申します」
丁寧で品のある自己紹介にアシガル達も答える。
「アシガルでぇす……ハハ、一応勇者やってまぁす」
「愛姫子よ! ヨロシクね」
「心眼の腕輪様だ!」
「黙れエロ腕輪!」
「なんじゃと!? 貴様こそエロ勇者であろうがっ」
「あーあ、また始まった。うるっさいわよ!」
ガンッ
愛姫子は拳骨を行使して黙らせた。
(不思議な方々……しかも人間!? 村長が言っていた兆しとはこの方達なの……)
「んで? エピカちゃんはどうして一人でこんなところを?」
「そうっすよ! 危ないじゃないっすかぁ」
「えっと……村長に言われてある物を取りに出掛けていたのです。その帰り道に剣ゴブリンに襲われてしまって……」
「おぉソードゴブリン! 確かにちゃんとした武器持ってた!」
「あの、宜しかったら私の村に来ませんか? お礼もしたいので!」
アシガルと愛姫子は見合うとコクンと頷き、歓待を受けることにした。
「村はすぐそこですので! 参りましょう」
絵に描いたような村の娘、エピカの後を着いていくアシガルパーティーなのであった。
(村の娘かぁ。長いスカートが揺れる度に慎ましいお尻が! それにささやかなおっぱい! これはこれでまたなんとも……)
獣人にさえ欲情するアシガルであった。
つづく
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