魔軍会議 其の二
マンテス国、妖精国への侵略の手筈をつけたビジョンは残りの隊長一人と三将軍を見渡すと何故か溜め息をついた。
(ここまではよい……だがこれからが問題じゃ。これまではアッパレとインラバが居たから程よい均衡を保っておったのだが……)
悩めるビジョンは咳払いを一つした後に指令を続けた。
「次に南じゃ! 南は版図こそマンテス国に次ぐ大陸ではあるが、インラバが思いの外、攻めあぐねた程の戦力を保持しておる! そこでここには海鬼将ラヴチューン! それに光魔隊長マキ! 宜しく当たれよ!」
既に指令を受けていた隊長らはビクッとするとマキとラヴチューンを交互に見た。
実は二人には曰くがあった。
マキとラヴチューンは双子の姉妹であったのだが、実力至上主義の魔軍にあって妹であるラヴチューンがいち早く出世し、将軍の座に着いた。
実力では引けを取らない程の力を保有し、姉でもあるマキは当初激しくそれに反発したのだ。
結果、そこから姉妹の間には大きな亀裂が生じ、険悪な空気を醸し出す結果となっていたのだ。
「軍令とあらば」
ラヴチューンは将軍としての余裕をみせたが、マキは悔しさをはらんだ唇をキュッと真一文字にさせながらも、
「仰せのままに……」
と、吐き出すように言った。
(これはどうしたというのだ!? 魔参謀殿はワザワザ火に油を注ぐおつもりか??)
(し、知らねぇよ! けど一緒の派遣軍じゃなくて助かったぜ! あの二人は一緒になるとピリピリして居心地わりぃからよ!)
重魔隊長ゴウワンと槍魔隊長バレンコフはヒソヒソ話をし始めた。
(姉妹の仲がよければインラバさんとかルシカァーさんとかよりも人気は上がりそうな姉妹なのに勿体ないですよね!)
次に話に加わったのは翔魔隊長マタタキだ。
(何を言う! マタタキ殿もインラバやルシカァーなどと違った可愛さがあるではないか!)
(おっさん! マタタキファンだったのか?)
(な、何を言うか! ワシはただマタタキ殿も引けはとらぬと言ったまで!)
どうやらゴウワンはマタタキのかくれファンだったらしい。
(あら、バレンコフだってインラバ愛が止まらないくせにぃ)
次に話に加わったのは淫魔隊長ルシカァーだ。
(うるせぇぞ! 淫乱女!)
(失礼ねぇ! ワタシの美学がわからないなんて早くインラバにフラれておしまいよ!)
(とっくにフラれておるわ! ガハハハハ)
(ですよね。インラバさんは昔からアッパレさんラブですもんね……)
そう言うとゴウワン、マタタキ、ルシカァーは、
『御愁傷様!!!』
と手を合わせた。
「ぐっ、てめぇらぶっ殺す!!」
「やかましぃ!! 静かにせぃ! このガキどもがっ!」
魔界の長老にして魔軍きっての頭脳派、魔参謀ビジョンは遂に爆発したが、4隊長の雑談に付け加えての老体の喝破がよほど面白かったのか、海鬼将ラヴチューンも光魔隊長マキも一触即発の火花を収め、互いにそっぽを向いてはいたがクスクス笑っていた。
それらを見た陸鬼将オルドランも空鬼将バルザーグも顔を弛めた。
(どうもこやつらの緊張感の無さには困ったものじゃが、今回はよき鎮痛剤となったか?)
老体にムチ打って大声を張り上げ息切れしたビジョンは、一呼吸すると更なる指令を下していく。
「そしてここからが問題じゃ……最北の大地、竜人が君臨する島国であるが……」
そこまで言ってビジョンは何故か口ごもった。
一同はその理由を解していた。
最強にして最恐の種族、竜人。
その力は絶大にして強大であった。
これまで名だたる猛者を繰り出してきた魔軍ではあったが、無事に帰ってきた者は皆無である。
「アッパレとインラバの両隊長を失った今、空鬼将バルザーグ、お主にしか頼めぬ……」
二隊長を失ったことは魔軍の戦力ダウンを物語っていたということか。
つづく
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