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複雑な関係!

「久しぶりだな、インラバ」

堂々と現れた裏切り者は魔界の鎧を捨て、見たこともない鎧と剣とを携えていた。


兜を捨て去り額に真新しいキズをこさえていたアッパレを見て、様々な疑問が沸々とわくはずであったが、いや現にミューロはそれらのことを抱いていたのだが、インラバは違っていた。



「アッパレぇ~」

彼女は甘い言葉で遠距離恋愛の彼氏とでも再会を果たしたかのようにアッパレに抱き付いた。


(これだよ……)


ピューロは顔をプイッとさせると複雑な表情をしたし、ミューロもまた同じであった。


「アッパレぇどうしてこんな辺境の地に……わざわざワタシに会いに? うれしいわぁ……」

なおもうっとりと強靭な肉体にしがみついてアッパレの顔を見上げた。


「ウ、ウム。実はインラバに重大なお知らせがあって参ったのだ」

重々しく口を開いたアッパレは室内をぐるりと見渡すと意を決したかのように言った。


「オレは魔軍を抜けることにした! ピューロとザードと共に()()()打倒の旅に出る!」



(言っちゃったよ……もう少し言い方を変えればいいのに……バカだなぁ)

ピューロはガクッと肩を落とし、そう思った。



「い、今なんて?」

「ウム。だから魔軍を離れると」

「その後! その後よ」

「ん? なんだ? 愛姫子打倒の旅に出ると言った」



カツカツと高いヒールを鳴らしながら後ろへ下がったインラバは両腕をヘソの前でクロスさせると両手に禍々(まがまが)しい魔力を集中させはじめた。


『ヤ、ヤバイ!! インラバ(様)がキレる!!』


ピューロとミューロは同時に言うのと身を隠すのとが同時であった。


「ちょっと! どきなさいよ!」

「お前こそ自分の主を止めてみたらどうなんすかっ!」



「あ、愛姫子って誰よぉーー!!!」

インラバはそう言うと両手に貯め込んだ魔力をアッパレに向かって放った。


「ワタシという()()がいながら他の女の名前を口にするなんて! 許せない!!」

「わわわわわぁ……アッパレ様ぁ…………」

「インラバ様はアッパレ命だからね。まぁこうなるわよね」


爆煙が消えていくと黒焦げのアッパレが、それでも微動だにせず仁王立ちでインラバを直視していた。

くすねた鎧は一切のダメージを受けていないように見受けた。


「またそれか。とにかくオレは旅に出る! インラバも一緒にどうかと思ってやって来たのだが……ここまで嫌われているのならば仕方ない。行くぞピューロ!」



「えっ!? 今なんて??」

部屋の一隅に隠れるようにしていたピューロは同じく避難していたミューロに文句をつける。


「お前の主は相変わらず鈍感だな!」

「なに言ってんのよ! あなたの主だって同じでしょ!」

と小さい(いさか)いを起こした。



「一緒にどうかと」

「行く! 行くに決まっているでしょぉ! ミューロ、すぐに準備を!」

「えっ!? でも魔軍の任務はどうされるんですか……」


他の女の名前を口ずさんだアッパレへの怒りは、一緒に旅に出ないかとの誘いに一気に書き消され、ついでに魔軍隊長としての責務をも消し去ったようだ。あっさりと。



「知らないわよ! そんなもの他の()()()()どもがやればいんじゃないかしら?」


(これだよ……やっぱりアタイもついて行かなきゃよね……)


ミューロは即断即決すると手際よく、旅の準備をそそくさと開始していった。



自分に恋する魔女の心を知らぬアッパレ。

実は愛姫子に仄かな恋心を抱く魔剣士を恋人と信じきるインラバ。

そしてそれに巻き込まれること必至な使い魔ピューロとミューロ。ついでにアシガルも含めておくか。



実にめんどくさい一行はアシガルパーティーと今後も津々浦々と絡むことになるのだが。しかし。



つづく



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