心眼の腕輪、ゲット!
途中で出くわす洞窟ゴブリンらを倒しながらも洞窟内をかなり進んでいた。
途中で行き止まりになって戻ったり、宝箱を見つけては傷薬だのを手に入れながらも。
「そろそろ最深部じゃない?」
「ウン。かなり進んだよね?」
「帰り道も迷いそうね」
そろそろ疲れも出てきた頃合いか、それぞれはそれなりに疲労の色を濃くし、元気もなくなってきていた。
「あっそうだ! 鎧と剣のお代で置いていったっていう革袋の中身を見てなかった」
今やることかと疲れをみせた三人だったが、小休止とばかりに手頃な石ころに座した。
「何が入ってんのよ?」
興味なさげに袋の中から紙片を取り出した愛姫子は、
「魔界の木の実? ヘタクソな字ねぇ」
「どれどれ? 本当だ……」
「ちょっと待って! アッパレって書いてある。これってあの魔軍の幹部なんじゃない??」
四人は初のバトルを回想しつつ、確かに剣魔隊長アッパレと名乗った魔物のことを思い出した。
「でもなんで魔軍が俺ん家の鎧と剣を……」
「経緯はわからないけど、どうやらあの魔物だってことは確かね」
アシガルは紙片に書かれた汚い説明書きを読みはじめた。
数種類の魔界の木の実とその効能が記されていた。
「おぉ! どうやらこの黄色い実は体力回復の能力があるみたいっすよ!」
そう言って一粒ずつ手渡した。
この場合、敵の罠かと勘繰るものだが、四人にその概念はなかったようだ。
それぞれはポリポリ食べると疲れが嘘のように取れ、まるで出発前のように元気を取り戻した。
「なによ! 最高じゃない! 魔界の木の実!!」
「おそらく貴重な物よ、大事に使っていきましょうね」
「ちなみに今の木の実はモリモリの実と言うらしいっす。安直だな……」
スカッと体力回復した一行は遂に最深部へと辿り着いた。
祭壇のような造りの部屋の中心に宝箱が置かれていて、その隣にボタンのような物が設置してあった。
「なにこれ?」
言うのとそのボタンを押すのが同時であった。
「ち、ちょっと愛姫ちゃぁん! 何かする時は相談してよぉ」
美菓子のクレームを無視して白い壁を見詰めていた愛姫子は、
「あれ! なんか映ってる!」
「えっ!?」
「あれは前勇者カラケルの肖像画にそっくりよ!」
(カラケル……どうなんだろう。ご先祖様ってことでいいのだろうか?)
映し出された前勇者カラケルは静かに語りだした。
「よくぞ辿り着いた、勇者よ! そなたがここへ来たということは世界が再び魔軍の影に怯えている証拠! そなたはこれから険しい道のりを踏破し、蘇った魔王ジクイルを封印するのだ!」
「伝説の勇者は凛々しいわね」
「ですね。アシガルさんとは全然違って頼もしい感じです」
(ぐぐっ……返す言葉が見つからない……)
「長い旅を経てそなたは勇者として立派に成長することはもはや必定! そこでそなたが今後、効率的かつ円滑にその能力、煩悩パワーを高めていく為に必要不可欠なアイテムを授けよう! さぁその宝箱を開けるがよい」
「こんなに立派な感じでもやっぱり煩悩パワーで魔王を封印したのかなぁ?」
「真面目なふりしているだけなんじゃない?」
せっかくのカッコいい登場も女子高生には形無しだった。
「なんだ? 腕輪?」
「それは心眼の腕輪といって勇者を導いてくれよう!」
なんてことないただの腕輪に見えたが、アシガルはめてみて気付いた。
「んっ!? なんか目玉が出てきた!」
「どれどれ!?」
「本当だぁ。気持ち悪い……」
「心眼だから目玉? 安直ね」
せっかくのアイテムでさえ貶されてしまったが、もっと驚くべき事態となったのだが。
つづく
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