説明してよね!
「あの……よ、よろしくぅ。ハハ……」
冴えない勇者アシガルに冴えない挨拶を頂いた美少女二人は眉を潜めて質問する。
「よろしくってどういうこと!?」
「まさかあなたと旅をするなんてことないですよね!?」
まるでカツアゲでもするかのようににじり寄ると、アシガルを一方はジロジロと、そしてもう一方はマジマジと見た。
「あ、俺の名前はアシガルっす。一応勇者やってまぁす……。ハハ」
予想だにしなかったアシガルという変な名前。しかも自分は勇者です発言に二人は笑い転げながら、腹を押さえながらも自己紹介を始める。
「あたしの名前は鈴木愛姫子よ」
「私は佐藤美菓子です」
「あぁ、そうすか。スズキさんとサトウさんすね。よろしくぅ」
ドスンと利き足を床に大きく叩き付けた愛姫子はアシガルの胸ぐらを掴むとニコッと笑い、その行動とは裏腹に爽やかな笑顔を振り撒いた。
「愛姫子って呼んでね」
「私も美菓子って呼んで欲しいです」
こちらは柔らかな微笑で下の名前を強調し、暗に苗字で呼ぶなといった風情だ。
「あそうっすか、じゃあ愛姫子さんと美菓子さんすね」
二人は忌々しい鈴木と佐藤から開放されると、キョロキョロと辺りを見渡し、アシガルに質問責めに打って出た。
「…………あっそうっすよねぇ。この世界のこと何も知らないんすもんね。じゃあざっと説明しますね」
時はカラケル世紀342年、世界は五つの大陸に七つの国が存在し、各国々が統治し平和な世の中であった。
そこへ突如として出現した魔王ジクイル率いる悪魔の軍団が七つある国の内、二つを掌握、瞬く間に征服し、混沌と殺伐とした世界に塗り替えた。
憂いた残りの国の国王達はこぞって魔王退治の勇者を急募、幾千の志願者が立ち上がり、魔王打倒を夢見て旅立ったが、吉報が届くことはなく、ジリジリと魔王軍の侵略の憂き目にあっていた。
いつしか勇者には召喚による異世界転移者が付けられる習わしとなり、連日のように勇者志願者が王都を訪れ、魔王討伐のため旅立つパーティーが王都を出発、激励され、あるいは最後の別れを惜しんでいたのであった。
「とまぁこんな感じっす。ここは残った国の中で一番の栄華を誇るマンテスって国っす」
愛姫子と美菓子は転移した世界の情報をインプットするように腕組したり、天井を見上げてみたりした。
「なるほど、わかったわ! 退治しましょう」
「相変わらず決断が早いよぉ、愛姫ちゃんはさぁ……」
愛姫子は拳を握って凛々しく宣言し、美菓子はすがり付くように困惑の顔を作った。
その姿がなんとも艶やかでセーラー服に身を包んだ二人を一層芳しくしていた。
そして今をときめく美少女二人は雑談、談笑を持って己の使命を理解した。
アシガルは説明の最中もチラチラと見たことも聞いたこともない珍しい格好をする美人で勇ましい愛姫子と可愛いく淑やかな美菓子の胸や尻や太ももを覗き見よろしくバッチリとその目に焼き付けながらも言葉を締めくくった。
「なんで僕と一緒に魔王退治に出掛けてもらってもいいですか??」
キリッと睨み付けた愛姫子は全否定するように上から目線で冴えない勇者アシガルに言い放った。
「ちょっとぉ! そんな過酷な旅に勧誘するのに最寄りのスーパーに買い物にでも行くようなヘナチョコな言い回しはやめなさいよっ」
「へっ?」
「そうよねぇ。出掛けてはないよぉ。せめて旅立つとか出発するとかねぇ?」
「美菓子の言う通りよ! まずは街で買い物ね。装備を調えなきゃ!」
「いいね! 私はドレスとかがいいかなぁ?」
どこまでもマイペースな二人に翻弄されながらも勇者アシガルは心の中で、
(こんな美人と可愛い子と旅するならありだな!)
と、当初の目的を早くも忘れ去り、心決断するのであった。
それは魔王退治とは全くもってかけ離れた理想と執念に燃えていると言っても過言ではなかった。
(やったぁ! いつもやってるRPGを体験できるなんて!)
と、気色張った。
そして美菓子も同様であった。
(この時代のかわいい衣服や飾りなんかを身に付けてみたいなぁ!)
愛姫子は普段は陰キャなゲーマーであり、美菓子は根暗の妄想屋さんであり、アシガルもまた脱力系エロ小僧であった。
しかしそんな三人が後々に救世主としてカラケル歴に燦然と輝く英雄になろうとはまだ誰も知らない、まだまだ旅立つ前のワンシーンであった。
「勇者アシガル! 国王様がお呼びだ! すぐにそこの召喚者らを引き連れて参れ!」
先ほどの神官に促されるように勇者アシガルパーティーは一列縦隊で場内を練り歩くのであった。
つづく