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最終回 異世界最強! スズキさんとサトウさんと旅に出ることになったが、俺は最後尾を行った!

 次の日の早朝、最後まで同行するつもりであったテンガンは目的地だけ伝えるとニシナカ村に残ると言い出した。


「西の洞窟! その心眼の腕輪を手に入れた部屋の宝箱にお戻しなさい。さすればお二方が元の場所に戻れます。シンガン様からの最後の言伝てです。さぁ最後はパーティーだけで行ってらっしゃい」



 送り出されたアシガルパーティーは何となく無言の内に洞窟へと辿り着き、始めは苦戦した初期ダンジョンをぐんぐんと進み、例の心眼の腕輪を手に入れた部屋へと到達した。


「じゃあ言われた通りに腕輪を置くよ?」


 アシガルが腕輪を置くとガチガチガチっと機械音のような音が洞窟内に充満し、ホロスコープのようなものが壁に映しだされた。



「さすがは我が子孫よな! 我等が遺恨を見事解決してくれたか! やるじゃん子孫!! ナハハハハハァァァ」


 陽気なカラケルの言葉と、今回に限りその姿は鮮明に映し出されていた。


「あら、アシガルよりも断然イケメンじゃない!!」

「本当だ! 陽気なところは同じだね!」

「ちょっと待って! 隣にいるのは……口なしさんよ! ほらほらぁ!!」


 先代勇者カラケルの横には若かりし頃のシンガンも肩を並べていた。

 アシガルらが懐かしむように食い入っていると、シンガンも喋りだす。



「後輩諸君! この映像を見ているということは世界に真の平和がもたらされた何よりの証拠! 感謝するぞ! そしておそらくは我もまたお主らと共に旅をしたことと思う。その時の我の分まで礼を言っておこう!」


 それを聞いたアシガル達は心の奥底に仕舞い込んでいた、一番の悲しみ。

 一緒に旅した仲間であり、導き手であったシンガンに想いを馳せ、滂沱(ぼうだ)の涙が止めどなく溢れて仕方なかった。




「我らの時代と同様、そなたらにも別れの時だ。悲しみは一瞬! 心に根付いた深い絆は一生消えはせぬ!! さぁ新たに出現した扉を開けるがよい」



 アシガルは酷く視界が曇っていたが、それでも扉を開けと、そこにはマンテス国と同じような魔法陣が敷かれ、愛姫子と美菓子が飛び出てきた扉が立っていた。


 その扉は自然に開いていくと、赤い光と青い光が吸い込むように愛姫子と美菓子を手繰り寄せる。

 徐々にその姿を消していく二人に、今生の別れのようにアシガルと氷雨は抱き付くと思いの丈を叫び合う。



「あなた達に出会えて本当によかったわ! ありがとう! 大好きよ、愛姫子! 美菓子!!」


「あ、あたしだってメッチャ楽しかったよ! ヒサ姉! あたしお姉ちゃんが欲しかったの……これで願いが叶ったよ!!」


「氷雨お姉様ぁぁぁ! お別れしたくないよぉぉ……みんな、みんな大好きだよぉぉぉ」


「こらこらぁ! 湿っぽいのはやめようぜぇぇ……だけど俺にとってこの()()で旅できたことは何よりの宝物だ! 絶対に忘れないからな! 愛姫子ちゃん! 美菓子ちゃん!!」



 四人は肩と肩を触れ合わせて、互いの涙を拭い合う、そして最後にアシガルは愛姫子と目が合い、愛姫子が一言呟いたことにより召喚は解かれ、伝説のスズキとサトウは元の世界へと戻っていくのであった。



 二人が消え去った洞窟内は薄暗くなり、急にカビ臭くなったような気がした。

 アシガルと氷雨は別れの辛さに我慢出来ずしばらくは互いに身を寄せ合っていたが、オモチと狼王が迎えに来たことにより、地上に戻る決心をつける。



「なんでお前らがここに? ヒック」


 アシガルは泣きすぎてしゃっくりが出ていたし、涙腺が崩壊した氷雨は必死に狼王の毛皮で拭った。



「すべてシンガンに聞いていた。シンガンが腕輪になる時に……」

「そしてこうも言っていた。次代の勇者とこちら側の協力者らはなかなか洞窟から出てきはしないだろうとも……」


「な、なんで大昔の人間がそんなことわかんだよっ」

「そ、そうよね。どうして? オモチちゃん、狼王」


 そんな二人の質問に懐かしむように空を見上げたオモチは一言。


「オモチ達も昔同じ思いをしたから……」

「そうさ。あの時のスズキとサトウとの別れのとき。お主らに負けないくらい泣き明かしたものよ」


「そうか………よしっ氷雨さん、マンテス城に戻ろう!」

「ぐしゅん……そうね! 元気出さなくちゃ愛姫子と美菓子に笑われるわよね!」



 立ち上がった二人はもう振り返りはしなかった。

 一歩、また一歩と確かに地に足をつけて前進していくのであった。




 魔神の末裔、黄泉姫の野心から始まったこの長きに渡る戦いは終焉を迎え、各国々は世界平和・世界平等を合言葉にいつまでも争いのない時を刻んだという。



 忍者の郷ヒノモト

 一大観光地として大いに賑わい、特に姉妹国となったマンテスと深い関係となり、興野流忍術と武術の発祥の地として修行者が集まったという。

 氷雨が新棟梁となり、庭月が補佐するヒノモトはいつまでも研鑽の国として尊ばれることとなる。



 竜人国

 最強にして最恐集団は真羅八竜神(しんらはちりゅうじん)の元、竜王・長嶺が治め、世界に睨みを効かせつつも穏やかに暮らし、バルザークが治める南方はかつて魔軍で一緒であったアッパレが治めるサンジョー国、それにインラバが治めるツバーメ国と特に友好関係を結ぶこととなる。


 スノークリスタルが治める東方は氷雨がいるヒノモト、岳才が治める西方は魔軍ゴウワン共々、妖精国、特に世界防衛組長に就任したシンと固い友情を育んだという。



 妖精の国

 世界防衛隊としてドワーフは全海域を守り、癒しの郷であり、魔法が唯一残された大地には学ぶ者が多く訪れ、観光も盛んとなる。

 その後、オモチは後継者を輩出。ミミコの協力もあり魔法学院をよりもり立て、その全てを慈愛に満ちたクイーンスフレが微笑みながら見守ったという。



 獣人国

 古の暮らしを守りつつ、新たに世界に旅する者達も増え、新旧折り混ざった豊かで勇猛な国として一目置かれるようになる。

 中でも聖人ローウェンとエピカの英邁さと優愛は人々の手本となり、魔犬兄妹フェブスとタバサがこれをよく補佐し続けたという。



 ツバーメ国

 一度は世界を悪に染めた魔神・黄泉姫を祀る唯一つの場所として世界に真実を伝える重要な役割を果たすようになる。

 心からの祈りの発祥の地として代表であるインラバ、ミューロ、そしてサンキラークは穏やかな国造りに励んだという。



 サンジョー国

 剣と信仰の国、そして鍛冶の国として数多くの修行者と職人が集まる熱気のこもった地として広く知れ渡るようになり、伝説のパーティーを幾度となく救った小さな英雄ピューロに手を合わせる者が連日のように渡来。

 少し頼りない王子アッパレは招いたキッシュ、ロッシュによく助けられ、後に剣聖王として名を馳せ、後に隣国ツバーメ国の姫インラバと婚姻する。



 マンテス国

 世界の中心として常に見本となるような政治を行ない、豊かな土地と立地を活かし、各国の中継として大いに栄華を誇ったという。

 ケムタ14世となった雲月は父王の意思を引き継ぎ、前戯と結婚し、盤石なる礎を築いたという。



 魔界

 ジクイル魔軍の巡遊により、荒れ狂う大地は落ち着きを取り戻し、表世界同様に平和と平等が少しずつ浸透していくこととなる。

 後に大解体が行われ、幹部らはそれぞれが自由に行動し、ある者は表世界に、そしてある者は魔界に残ったという。



 スズキ愛姫子

 元の世界に戻り、これまでの捻くれた性格から陽気で人を照らす太陽のような存在となり、新たに見つけた夢に向かって邁進した。


 サトウ美菓子

 愛姫子同様に明るく誰にでもその包み込むような優しさで接し、そして誰からも愛されるぶりっ子キャラとして目下爽やかイケメン彼氏と出会うべく磨きをかける毎日を送る。

 


 アシガル

 稀代の勇者、アシガルは伝説のスズキが残した最後の言葉を胸に、さすらいの旅人となり、誰もその後を知る者はないという。

 ただ時より訪れるセクハラ旅人の噂は常に人々に笑いと、彼が息災であることを告げたという。





「アシガル、あんたのこと好きよ」




 異世界最強! スズキさんとサトウさんと旅に出ることになったが、俺は最後尾を行く!


 完




これにてこの物語は終了となります。

長らくご愛読下さった方々には感謝しかありません!

拙い文章、拙いストーリーではありましたが、最後まで書くことが出来たのはそんな皆様方があられたからです。


コメントにて様々な指摘などを頂きまして今後の執筆に役立てつつ、褒められた箇所をさらに伸ばせるように頑張っていきたいと思います!


本当にありがとうございました(`・ω・´)ゞ

萬屋グリヤン

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