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ラスト編15 世界の中心でセクハラを行う

 世界を旅して回ったアシガルパーティーは無事にマンテスへと戻った。


 各国では目まぐるしい変化が見られ、世界中何処へ行っても仲間がいることが嬉しくもあり、また頼もしくもあったか。

 そして旅立つ当初は悩める乙女であった氷雨も晴れ晴れとした顔をして父王に帰宅の報告をなした。


「おぉ氷雨よ。無事であったか! どうであった世界は」


 父王にして世界の尊厳王たるケムタ13世のその質問は悩みは解消されたかと言っていた。

 アシガルと愛姫子、そして美菓子は氷雨の背中を強く押すと、氷雨は決意を固めた凛とした表情で玉座に座る父王と脇に控える兄にして次代の王を約束された雲月を順番に見るとキッパリと言ってのけた。



「はい。世界は混沌から平和と繁栄に向けて一致団結していました。マンテスも兄が次期国王となり、新たなステップに進む時! (わたくし)もその手伝いをしようと決めました」



 てっきりヒノモトへと渡るつもりなのだと思っていたのはアシガルパーティーだけではなく、ケムタ13世も雲月も同じであったが、氷雨の決断はマンテスに残ると言っている。

 本当にそれで良いのかとケムタが質問しようとしたその時、まだ話は終わってはいないと氷雨は制止した。



「ですが、王が代わりこの国の行く末が固まったその時には私はヒノモトへと参ろうと思っています! 」


 その決断に笑顔で賛成したのはアシガルらであり、ヒノモトを考慮していた雲月であった。

 やはり手元から離れていくのだと肩を落としたケムタであったが、何よりも可愛い娘の決心を尊重せずして国を守れるかと断腸の思いで見送る覚悟を決めた。



「氷雨、この国のことは俺と、これから迎える前戯とで頑張って治めるつもりだ! だが、落ち着くまでお前が居てくれるのならばそれに越したことはない! 嬉しく思うぞ!」

「はい! 私にとっても永遠に愛すべき故郷! その時まで兄上の手足となって働きましょう」



 そんな会話を少し控えた場所から拝聴していたシンガンの子孫にしてマンテス国の技術神官を務めるテンガンは、ようやっと母国の今後の礎が明確になり、未来は明るいとホッとした顔を浮かべていた。



 これで思い残すことはないとアシガルは愛姫子と美菓子に他にやり残したことはないかと訊ねた。

 二人は元々自分の意志でこの世界に来たわけではない。

 勇者アシガルの召喚により転移して来たのだ。

 世界が丸くおさまったのならば何も思い残すことはないと、たが少し名残惜しそうな顔でアシガルを見て笑った。


 しかし次の瞬間には、大混乱に陥ることとなる。


「んで? 二人はどうやって帰るんだ??」

「は?」

「え?」



『…………はい〜!?!?』



 まさかの召喚主が元の世界に戻す方法を知らなかったのかと怒り心頭の愛姫子。

 ヘナヘナと絶望する美菓子。


 いやそれはアシガルも同じであった。

 この世界を救うために()()()()()のだから自分達で()()()()()()()()()ものとばかり思っていたのだ。



「な、なんだぁ!? ど、どうすればいいんだぁ!?」

「それはこっちのセリフよっ! そろそろ中断してたゲームやらなきゃって思ってたのにっ」

「わ、私だって……これから爽やかイケメンと運命的な出会いを求めてオシャレしようと思ってたのにぃぃ……」


 大混乱で神聖なる玉座の間は穢された。

 しかし天然娘の氷雨は呑気にもこう言ってのける。


「じゃあいっそのことこっちで住んだらどうかしら?」

「やぁだよぉ! 向こうにも私達の暮らしがあるんだからぁ……」

「そ、そうか! それだったら永遠に二人は俺のモノってわけか……ゲヘヘ」

「ゲヘヘじゃないでしょ! あたしだってそろそろママのご飯が食べたいわよっ」



 いつまでも続きそうな痴話喧嘩に割って入るタイミングを逃していたのはテンガンであった。

 彼はシンガンに転移者を元の世界に戻す方法を事前に知らされていたのだが、あまりにもジタバタする伝説のスズキとサトウが面白過ぎてつい言いそびれてしまっていた。



「あ、あのぉ帰る方法なら私がしっかりシンガン様から聞いておりますが……」


 アシガルの胸ぐらを掴み今にも渾身の一撃を加えようとしていた愛姫子と、地面に子供のように寝そべっていやいやする美菓子は、顔を真っ赤にした後、咳払いを一つすると、冷静な振りをして小声で呟いた。


「し、知ってるんならいいのよ」

「そ、そうだよね。こんなはずないもんね」

「良かったじゃない! 二人とも!!」


 しかしそのテンガンの助け舟に舌打ちした者が一人。

 そうアシガルは愛姫子と美菓子が戻ってしまうと知るやいなや、例のセクハラを敢行する。


「だったら最後くらい好きにさせてもらうよ! それっ」


 これまで一度たりとも戦いで剣を抜いたこともないクソ勇者の分際で、これまでで最速の動きを発揮し、愛姫子の後ろを取ったアシガルは、彼女のエロチックなフェロモンを嗅ぎながら腰に手を回し、くんかんか。


「なっ❤ まだ鉄拳制裁が欲しいってわけー!? ハッ!」


 愛姫子の鋭い裏拳を見事に掻い潜ったアシガルは美菓子の前に仁王立ちし、今回ばかりはツンツンではなく、そのたわわなおっぱいを鷲掴みにして堪能した。


「一度思いっきり触ってみたかったんだよねぇ美菓子ちゃんのこの巨乳!!」

「あっ❤ い、いやぁ! ア、アシガルさん! ダ、ダメェ……ハン❤」



 急に始まった犯罪行為に固まる者共を背にラストはやはり氷雨にも被害が及んだか。


「極めつけはやっぱり氷雨さんのダイナマイトボディを下から上まで触り尽くす! 太もも! 尻! そして爆乳ぅぅぅ!!!」

「も、もう! 最後だからって大胆なんだから❤ ダメよぉ……アシガルったらぁ……んんぅん」



 これが日常茶飯事であったが、ここは世界の中枢、大マンテス国の玉座の間であることをすっかり忘れているエロ勇者アシガルは尊厳王の雷を受け、大罪人であるかのように城から投げ出された。



「こんなエロガキが勇者とは情けない! さぁさっさと別れの地へ参るがよい! テンガン、そなたも同行せよ! 間違ってもこのような破廉恥(はれんち)な行為をさせるでないぞ! さっさと行かんか! この国の恥さらしが!!」



 ついでに三美少女に倍返しの折檻を受けたアシガルはボロボロの体で剣を杖代わりに、己の故郷に向けてパーティーを進ませるのであった。



(の、残ってるぞぉぉ三人の気持ちえぇ感触が! グヘ、グヘヘヘへヘェ)


 久々に言うが、お前、本当にエロいよな、アシガルよ。

 羨ましいよ。

 ほんと。



 つづく




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