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ラスト編10 変わりゆく妖精国では

 ドワーフの老人ダダと妖精の老人ドバは久しぶりに帰郷する孫でも待つようにそわそわしていたが、籠場と同じく大きく成長を遂げたアシガルパーティーを見ると話したいことがたくさんあったはずが、言葉をなくしたように見詰めるしかなかった。



「あれーどったの? ドバの婆ちゃんてば」

「ダダおじいさんも! 固まってる……」


「ウフフ。あなた達の成長した姿に驚いたのかしら? アシガルパーティー、ようこそ妖精の国に!」



 変わらずの美貌とナイスバディとで出迎えてくれた女王クイーンスフレ、そして横には筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)のシンが笑顔で立っていた。


 アシガルらはヒノモト、竜人国と世界を回っていることを告げると、スフレとシンは妖精巫女(エルフプリーステス)のオモチを呼び、恒例の国紹介をするよう指示した。



「よう、オモチ! 元気だったか?」

「…………ウム……」

「アハハ。相変わらずね、オモチちゃん!」


 何故か母のように慕っている氷雨と熱い包容を済ませたオモチは、愛姫子と美菓子の手を引いて早速街へと繰り出す。


 活気あふれる街並みは以前とは比べものにならぬほどであり、他国との交流を積極的に行ない始めたのだとオモチは言う。

 そんな唯一といっていい魔法の国のでもある妖精国へ学びに来る者も大勢いるらしく、人間、獣人、そして竜人の姿まであり、大いに賑わっていたか。



「我が国で魔法を習得したいと各国から毎日引っ切り無しに渡航者が来る。今まででは考えられない……」


 確かにアシガルらが最初に渡った時には海上で防衛組長のシンと入国について揉めたなぁと思い出しながら練り歩く一行。

 そしてオモチは魔法学院の前で立ち止まると、アシガルらに向き直り魔界からもそんな人物が来ていることを告げた。



「ミミコを覚えているか?」


 突然の問いに愛姫子は腕組みし、美菓子は空を仰いだが、即答したのは氷雨であった。


「それってオモチちゃんと戦った闇魔法使い(ダークマージ)じゃなかったかしら?」

「あぁ思い出した! オモチに返り討ちにあったヤツな! ま、まさか!?」

「ウン……ヤツは今、この国で修行している。スフレも寛大」



 闇魔法使い・ミミコ。

 それは魔階段で死闘を繰り広げた魔界十鬼衆(じゅっきしゅう)の一人であり、アシガルの言った通りオモチの混成接続魔法にあえなく倒された女魔法使いであった。



「けど驚いたな。魔界に戻れば魔法の修行なんか出来そうなもんだけどなー」


 学院内に入ると魔法の鍛錬に励む様々な種族に混じって、例の巨大な水晶に乗るミミコをすぐに見付けることができた。

 オモチは鍛錬を中断させるとすぐさまミミコを呼ぶと、彼女はゆらゆらと宙を浮きながら近寄って来た。


「お久しゅうございますです。()()使()()ミミコであります!」


 畏まって片言の敬語でそれぞれにちょこんとお辞儀したミミコであったが、確か()魔法使いではなかったかと訊ねたのは美菓子であった。


「はい。確かにオモチ()()に敗れるまではそう名乗っておりましたが、今はただの魔法使いとしてこの国で修行を重ねておりますのです!」



 ミミコ曰く、闇魔法では己の限界を超えることは困難であると判断し、ここいらで表世界の正攻法の魔法を学ぶために妖精の国にやって来たのだとか。

 そして巨大で強い魔法力を持つオモチを師と仰ぎ弟子入り。現在ではまったくの素人を相手に講師として学院に在席しているのだとか。 


「まったくスフレは甘い……」


 オモチは半ば目障りであると言いたげにミミコを見たが、当のミミコはオモチを敬愛し、師匠としてあれこれと指示を仰ぐ。



「へぇ〜。オモチに弟子入りねー」

「オモチちゃんも満更でもないない感じ!」

「オモチは魔法力ではこの世界随一ですものね! しっかりと魔法を後世に残す義務があるのね!」


 ベッタリと引っ付くミミコの頬を遠慮なしに押し返しながら、普段は無表情であるオモチも少し顔を赤くして、自分のやるべきことをやっていくだけだと語る。



「シンさんは世界の海を守る立場になって、世界各地から魔法の修行に人々が押し寄せる。かぁ……妖精の国も活気に満ち溢れていいことじゃないか、オモチ!」

「そうだな……そのうちオモチの後継者たる者も選び、新たな巫女として育てなければならない。オモチ、なかなか忙しい……」



 活気あふれる国を慈愛に満ちた女王クイーンスフレが治める。

 その完璧な姿を目の当たりにしたアシガルらは城へと戻るとスフレやシン、ダダとドバらと共に豪華な晩餐を囲み、その日は遅くまで語り明かし、翌早朝には精霊石(せいれいせき)をスフレに返すと、新たに整備し直してもらった浮遊船に乗り込み、次なる目的地である獣人国目指して出発していくのであった。



『さらばじゃ! スズキとサトウよ!!』

「ありがとう! 氷雨、今度は私が遊びにいきますわ!」

「アシガルパーティーよ、改めて感謝する!」

「……愛姫子、美菓子。二人のことは絶対に忘れない。なぁシンガン……」




「ありがとね、精霊石……カワイイ妖精に変身できて私、すっごく嬉しかったよ!!」


 美菓子はそう呟いて、癒しの妖精と勤勉なドワーフが住む魔法の国にいつまでも手を振り続けるのであった。



 つづく

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