アシガルパーティー、南へ!
準備が整ったアシガルパーティーは城を出立すると、グングンと南へと進んでいく。
もちろん、愛姫子・美菓子・氷雨・アシガルと一列縦隊の黄金率は保ったままに。
そして途中ゴブリンと遭遇し戦闘を繰り広げつつも。
「しっかし骨の無いザコばっかねぇ……」
それもそのはず、敵が現れると愛姫子が即座に斬り捨てるか美菓子が射抜くかだからだ。
「この辺は魔王が世界に解き放ったモンスターの中でも最弱の部類に位置する歩くゴブリンか跳ねるゴブリンばかりよ! いきなり隊長クラスと渡り合ったあなた達の敵ではないわね」
「だけどセクハラアッシーはよく一人でゴブリンを倒して都まで辿り着けたわよねぇ」
もはや勇者の冠を剥奪されてしまったアシガルは脱力ぎみにも、
「それはそれは長く険しい道のりでしたよ! うん」
と答えたが、
「逃げ足だけは速そうですもんね! アシガルさん……」
と、どうやら破廉恥のレッテルを貼られているようであった。
やり場のない自分という存在を消したいが為に、アシガルは180度回頭してのけた。
「ところで氷雨さんのその剣は珍しい形ですよね!」
話が急に自身の愛刀の話題になるとは思っていなかった氷雨は極々、割りと、スムーズに、その話題に食い付いてくれた。
「これ? これは時雨といって名工・巌斉という有名な刀鍛冶の、逸品よ!」
エサに食い付いた大魚をなんとかバラさないようにアシガルはリールを優しく流してはそっと巻くように話題を引っ張る。
「というかマンテスで忍者ってあまり聞かないっすね! まぁ流れ者ならありかなぁとか思うんすけど、氷雨さんはプリンセスだし……」
そこで吊られるように、雪崩式のように美少女二人もついにアシガルの竿の餌食となった。
「そう! それ! マンテスはどちらかというと洋風なのに、そこのお姫様が忍者って超違和感!」
「確かにです! もっと氷雨お姉様のこと知りたいですっ」
南へ向かいつつも、軽く息を吐いた氷雨はざっと経緯を語った。
忍者の訓練、つまり薫陶を受けたのは東の大陸、ヒノモトから来た老師であり、ゆくゆくはヒノモトに渡り忍者の最高位である棟梁の目録を得たいという夢があるのだ。
「へぇーその老師に会ってみたかったなぁ!」
「それで忍術を体得した忍者なんですね!」
「えぇ! 投げ技もあるのよ。今度見せるわね」
(なんとか話が反れてくれた! えかったぁ……あっ)
アシガルは歩を止めると三人の前に躍り出た。
モンスターが出現する以外、長閑な田舎道を歩いて来た。小鳥はさえずり、小川は透き通った水がユルユルと流れる。
なんとも平和で豊かな道程であった。
「皆さん、着きました! ここがニシナカ村です」
両手を広げて到着を告げたアシガルだったが、ポツンポツンと軒が列ねるばかり、人影はなく文字通り閑散としていた。
「何て言うの? 辺鄙な村ね。やっぱり……」
「愛姫ちゃんハッキリ言い過ぎだよ! のんびりしていていいじゃない!」
「それでこれからどうするの?」
三者三様のお言葉を頂戴したところでアシガルは村長にパーティーを連れて来た旨を伝えに走って行くのであった。
辺鄙な村。
である。
辺鄙な…
つづく




