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ラスト編8 ロキスの告白

「ど、どうしたのだロキス。急に大声をだして」


 愛姫子を巡る熾烈な戦いが開始された玉座の間で、今まで沈黙を守ってきていたロキスの突然の発言に一同は驚き、真っ赤な顔をして長嶺を睨みつけるロキスに視線が集まった。

 普段は沈着冷静、竜人の中でも実力者で通っているロキスの異変にそれぞれはどうしたのかと固唾を飲む。



「長嶺様。あなたはこの竜人国の象徴! そこには品性と風格も備えねばなりませぬ。それがなんですか、長旅をしてきたばかりの勇者一行に労いの言葉を掛けたかと思えば愛姫子さんを嫁に貰いたいとは! 言語道断! 他に成さねばならぬ事が山積しています!」


 急に口を開いたかと思えば、出るわ出るわ、普段押し留めていたのか、その後もコンコンと説教は続いた。



「ねぇ、どうしちゃったんだろ、ロキス」

「さぁ……けど間違ってはいないようね」

「ロキスがあんなに怒ってるの初めて見たっすよ俺」


 美菓子を除くアシガルパーティーらは頬を朱に染め説教をするロキスの真意がわかってはいないようであったが、楽しむかのようにワクワクしつつも、長嶺の動向を探るように見ていたのは恋愛マスター美菓子だ。


 竜人らの静止を無視して説教を続けるロキスであったが、詰め所から現れた龍神、伴峰と海鏡が現れたことにより、一旦は口をつぐんだ。


「よぉ来たかエロ勇者と三美少女! 待ってたぜ」

「………久しぶりだな」


 岳才らと同じように、アシガル達が訪れるのを待ちわびていた伴峰であったが、ずしりと重苦しい空気が漂っていることに気付き、それと同時についにロキスが噴火したのだと察した。

 ニタニタしながら不機嫌なロキスを見ながら伴峰は長嶺と愛姫子を交互に見ながら話し始めた。



「まぁた愛姫子を嫁にーとかって言ったんだろ長嶺。だめだぞぉ愛姫子はこの世界を救うために召喚された大事な存在だかんな。お前の嫁にはもったいねぇのー」

「お言葉を返すようですが、僕には愛姫子意外考えられない!」


 竜王とて龍神には平身低頭であらねばならぬほどの身分の差があるにも関わらず反抗する長嶺を、今度は無口な海鏡が一言呟くように黙らせた。


「お前にはお似合いの竜人が既にいる……」


 その言葉に一同はざわついたが、その瞬間に静観していた美菓子が大きな声を弾ませた。


「はいはぁーい! ロキスさんでーす!!」

「おっ?! さすが恋愛マスター美菓子! 御名答ってやつだな。うん」


 仲間の竜人にさえ悟られぬように恋心を押し隠してきていたロキスであったが、その恋愛マスター美菓子と龍神らの目を掻い潜ることは出来なかったか、岳才とスノークリスタルは始めこそ驚き、互いに顔を見合ったりしていたが、宰相・久遠を除いて長嶺の補佐と面倒を甲斐甲斐しくしていたのは他でもないロキスであると知っていただけに、急に掌返しでもするかのようにロキス応援団となった。



「ロキス。お前の本当の気持ちを長嶺様に伝えてみてはどうだ?」


 そしてもう一人、以前からロキスの長嶺に対する特別な感情を密かに感じていたバルザークはロキスが自分の言葉で話す時がきたぞと言わんばかりに背中を押した。

 ロキスはここまで来たらやぶれかぶれとばかりに、普段の冷静な言動をかなぐり捨て素直な気持ちを、目蓋を固く閉じて一気にぶちまけた。



「そ、そうです! 私はこの戦いの最中、主君たる長嶺様に恋心を抱いてしまいました! ですがそれは叶わぬ想いと心に決め、この一生を長嶺様とこの国のためだけに捧げようと心に決めていました……ですが……長嶺様が愛姫子さんに求愛するのを見る度に、今まで感じたことのない……どうしたらいいか分からない怒りにも似た感情が私を襲うのです……どうしたらよいのか私にも分かりません! ただ一つ言えること……それは長嶺様を深く愛しているということだけです!」



 ロキスの心の叫びは玉座の間にこだまし、そのロキスの正直な言葉と純愛を後押しする者が続々と長嶺に返答を迫ったか。


「どうなのです、長嶺さま! ロキスはこれ程までにあなた様を慕っておりますぞ!」

「そうですわ。今すぐご返事下さいませ!」

「俺も長嶺様にはロキスのような聡明で健康な竜人がお似合いとお見受け致すが。如何か!?」


 岳才とスノークリスタル、そしてバルザークに続くようにアシガルパーティーらも長嶺に迫る。



「女の子にここまで言わせて断るわけないよね?! 長嶺さん!」

「そうね。ここで断ったら竜王の名が泣くわね」

「そ、そうだそうだ! お前にはロキスはもったいないけど、本人がそれでもいいって言ってんだったらしょうがない。ありがたいと思えクソキザ!!」



 長嶺はそれぞれの言葉を聞き動揺したが、確かにロキスなくして今の自分がいないこともまた事実であった。


(そうだった。いつもロキスが側にいて支えてくれていたから僕は竜王の重責を背負えることが出来ていたんだ)


 だがせっかくロキスに傾きかけた長嶺の心を掻き乱したのは宰相にして長嶺ラブの久遠であった。

 彼はまるでロキスだけが長嶺を支えてきたかのような周りの言動に怒りと嫉妬を滲ませつつも、長嶺と愛姫子をくっつけようと画策したが、そこは伴峰と海鏡が取り押さえ、口を抑えて横やりを阻止した。



「むぐゅぐぎゅ……なりませんじょ、で、伝説のすゅずゅきごふ……私が一番のりきゃ……でふご、もごもご……」

「はいよ。久遠も長嶺の補佐をやってるよなぁ」

「黙れ久遠……」


 そして意を決した長嶺はロキスの告白に対して答えていくのであった。



 つづく

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