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ラスト編4 さらば愛しき魔軍達よ!

 世界平和の名の元に各国有識者による協議は様々な草案をまとめ、魔城の修繕を終えた魔軍は一足早く魔界へと旅立つこととなり、別れの宴が催された。



 表世界とは自由に行き来することが出来るようで、アシガルや表世界の住人らとは今生の別れというわけではなかったが、異世界からの転移者である愛姫子と美菓子とは最後となる。


「ヒックヒック……あんたとはきちんとケリをつけたかったわよ……グシュグシュ……」

「ラヴ、飲みすよ! もう!!」


 宴でかけつけ三杯酒を煽ったラヴチューンは姉であるマキに(たしな)められつつも、しゃっくりなのか泣いているのか分からぬ体で愛姫子に絡んだが、お酒の飲めない愛姫子は大量のごちそうを目の前に集め、むしゃむしゃと咀嚼しつつも言い返した。



「あんたねぇ……うまっ! これ美味しいわねぇ。もぐもぐ……何回言わせるのよ。あたしの勝ちだって……これもうまっ!」


「ラヴチューンも俺と魔界でさらに修行して強くなっていつか再戦だな!」

「あら、()()()()()さんも真面目なのね」

「氷雨ぇ、トリンコフじゃないわよぉ。バレンコフよ!」


 愛姫子に負けず劣らずの大食漢のバレンコフに氷雨とほろ酔いのルシカァーはそんな会話を重ね、美菓子もマキとの会話を楽しんでいた。


「勇者アシガルよ、アッパレとインラバのことくれぐれも頼む」


 別れの宴というに再建に忙殺され、出席叶わなかった元弟子と元部下を気遣うオルドランにアシガルは笑顔で答え、ゴウワンとマタタキは愛姫子の大食いを食い入るように見ては楽しんでいた。



 そんな盛り上がりを見せるアシガルパーティーと魔軍らの席にいつの間にか各国の代表らも集い、楽しくも一夜限りの宴は深夜にまで及んでいくのであった。






「では我ら魔軍は出立する。勇者アシガルよ、色々と世話になったな!」

「新生魔軍、これより魔界の平和を守る任務に付く! アシガルとその仲間よ、別れの時じゃ」



 次の日の早朝、二日酔いのラヴチューンを抱えるように魔軍らは勢揃いし、ジクイルの惜別の挨拶と参謀ビジョンの言葉に笑顔と盛大な身振り手振りで送り出すアシガルパーティーと表世界の代表たち。


 そして意外にも新たに魔軍に組み込まれたメンバーを見て一様に驚いた。

 魔技場(まぎじょう)でマキとルシカァーとの同級生対決を演じたルルカと白金が新たに魔軍に加わり、氷雨をオバサン呼ばわりした()伏魔八騎将のお趙と、ヴォルクス四天王として立ちはだかり、これまたオバサン呼ばわりしたお嬢の姿があった。



「まぁ同級生の縁てやつかしら? ルシカァーよりも美しい私がこれからの魔軍の美の象徴となりましょう!」

「言ってくれるじゃない! あなたには負けないから」


「参謀ビジョン様の片腕としてこれからはマキに変わり私、白金が万事補佐していきますよ」

「そう簡単にはいかないのよ、白金!」


 仲間になっても火花を散らす同級生達を苦笑いで送り、お趙とお嬢が氷雨をオバサン呼ばわりする前に魔城に押し込んだことにより別れとし、浮遊していく魔城が魔界へと帰っていく姿を眺め続けるアシガル達なのであった。



「なんだかんだ良い奴らばっかだったわねぇ……」

「うん! あの人達なら魔界も安泰だね!」

「そうね。お趙とお嬢がメンバーに加わるとは思わなかったわ」

「まぁ抜けたところはあるけど、ジクイルにはビジョンさんっていう知恵袋とオルドランさんていう懐刀がいるから! なんとでもなるだろ!」



 そんなこんなで、アシガルらは遥か上空にまで浮上した魔城が消えゆくその瞬間まで、視線をそらすことなく見守り続けるのであった。



「行くぞ! コンプリートの旅に!! 魔界の歌姫・妖貴妃(ようきひ)よ待っていてくれよっ」

「愛姫子、今度会った時こそ決着よっ!!」





 その後、魔界へと渡った魔軍は混乱を極める各地を行脚し、無益な争いを鎮めつつもジクイルの言うコンプリートを目指してその鉄壁の団結と、新たに志願する者とで大いに飛躍していくことになる。


 そしてオルドランは唯一気掛かりであったライバルにして魔界の英雄との異名を持つ須頃(すごろ)と再会、改めて魔軍の成すべき事に共鳴した須頃は魔軍へと参入。


 将軍オルドランと副将軍須頃として軍の中枢を担うこととなる。


 ラヴチューンとバレンコフは己を極める修行に明け暮れ、マキとルシカァーは同級生の入軍により刺激され、ゴウワンとマタタキは愛を育んだという。

 ルルカと白金、そしてお趙とお嬢を新たに加えたジクイルは美女美少女に囲まれ、いつ果たせるとも知らぬコンプリートの道を永遠と続けていくのであった。



 そしてアシガルパーティーはやり残した事を果たすべく、世界各地を巡っていく。



 つづく


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