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三本勝負14 謝りなさいよ!

 第三回戦、愛姫子の出番となり、立て続けに現れる刺客の難問に対してバッタバッタと猪突猛進で解決していく愛姫子。

 だがその一つひとつには彼女の優しさが溢れ、不良を改心させ、商い中のコンビニ店長ローウェンまでも協力者とし、倒れた老人ガンテツと妊婦マキを見事窮地から救い、救命士エピカにマキの旦那バルザークとレアキャラを多く出現させた。



 自分の目的を果たすために扉を持ってその場を離れる愛姫子を名残惜しそうに見るは不良ラヴチューンとバレンコフであったか。


「なぁんか台風みたいな奴だったな……俺達もたむろしてばっかじゃダメだよな……」

「そうね……なんか目的を見付けて一日一日を大事に生きなきゃって思わせる不思議な女ね……あいつ……」



 その言葉を聞いたローウェンは腰に手を当てて笑顔でそんな二人に声をかける。


「だったらウチでバイトでも始めたらどうだい? ちょうど立て続けにバイトさんが辞めてしまって困ってるんだ。それに君達はいつもコンビニの駐車場でたむろしてはいるが、万引きをすることもないし、自分達の出したゴミはちゃんとゴミ箱に捨てているのを見ていたからね。もし良かったらだけど」


 ローウェンのその言葉に目を輝かせた二人は、やりますと声を張り上げ、長い時間留守にしていたコンビニへと入っていくのであった。



「これは驚き! なんと不良二人を更生させ、ついでに人手が足りないコンビニとやらの助勢にもなりましたねぇ!?」

「だな! 愛姫子は自分でも気づいてないだろうけど、知らず知らずのうちに立派に人助けしてるっつーことだな! 言葉は悪くても内面からでる正直で真っ直ぐな行動が人を変えるってところか??」


 実況と解説のウンチクに顔を曇らせ、呪うような顔つきでモニターを見る黄泉姫は、己にはない愛姫子の生き方に混乱していた。


(何にでも首を突っ込む愛姫子……悔しいが確かに……)


 審査員らも観衆も、もう誰も愛姫子に不安を抱く者は一人もいなかった。

 そして次なる刺客をどのように裁くのか見物であるかのようにモニターに熱視線を送るのであった。



 愛姫子は扉を無事に返却し終わると、マップを取り出し向かう先を確認。

 自分の住んでいる町によく似た風景を眺めながら歩き始める。

 ほどなくして例の泥棒がご挨拶とばかりに愛姫子に体当たりしてきた。

 黄泉姫はその不審者をそのまま見過ごしたが、愛姫子はそうではなかった。



「ちょっと! いきなり人にぶつかっておいて何の謝罪もないわけっ!?」


 怒気を含んだ愛姫子の声に一瞬身体をビクつかせたのは泥棒・雲月であった。

 懐を大事そうに押さえながら黒ひげに唐傘(からかさ)模様の頭巾を被った、まさに泥棒の手本のような容姿の雲月はボソボソと何事か呟くと、急いでその場を離れようとしたが、そうは問屋が卸さないとばかりに愛姫子は雲月を羽交い締めにして逃さなかった。



「な、何をする! ちゃんと謝っただろう」

「はぁ!? そんなでっかい声が出せるのになんで謝罪はボソボソと聞こえるか聞こえないかなのよっ! つーかあんた間違いなく泥棒でしょ!? しょっぴいてやるわっ」


 二人の押し問答は果てしなかったが、程なくして現れたのはレアキャラ、泥棒の恋人・前戯(ぜんぎ)であった。


「またまた出ましたレアキャラが!」

「だな。泥棒の関係者とみた!」



 前戯は二人の揉め合いに割って入ると、突然土下座して愛姫子に謝罪した。


「すみませんでした! 雲月様はボクのために盗みを働いたんです……本当は紳士的で誇りのある方なんです!!」

「前戯、よせ! 武家の娘が町娘になど頭を下げるな!!」


 いったい何のドラマが始まったのだと審査員や観衆、実況と解説らはモニターに注視したが、それは愛姫子も同様であった。

 愛姫子はもう逃げないと感じると羽交い締めを解き、事情を聞くスタンスを取る。


「この辺が意外ですねぇ!?」

「だな! 愛姫子ならとにかく問答無用で役人に引き渡しそうなもんだけどな!」



 雲月は土下座する前戯を抱えるように立たせると、自身が犯してしまった過ちをつらつらと話し始めた。

 なんでもこの先にある道場からある密書を盗んだのだ。

 それには理由があり、現在この町には二つの町道場があるのたが、お上(役人)からお達しがあり、道場主同士で立ち合い、勝利した道場にまだ若い武家の次男やら三男やらを任せる許可を出すという話が持ち上がったのだとか。



 老いてもなお血気盛んな機械流剣術道場の道場主であるビジョンと、魔剣流道場主のオルドランは一騎討ちの勝負をし、雲月が師範代を務めていた機械流の道場主ビジョンは魔剣流オルドランに惜敗。


 かくしてたちまち機械流道場の経営は傾き、そこの一人娘である前戯もまた日々糊口(ここう)を凌ぐべく内職やらに精を出す貧しい生活を強いられていたのだとか。

 だがそんな事情を聞いた愛姫子は即座に一言返したか。



「それでなんで盗みを働いたことに繋がるわけ? 聞いたところでは別にそのオルドランとかって奴が悪いわけじゃないじゃない? 真剣勝負だったんでしょ?」 


「違うのだ! お上は民衆に多く親しまれ、敬われる我が師匠ビジョンが妬ましかったのだ。真面目な我が師はお上の悪政に忖度せず抗議なされる故……目の上のたんこぶであるビジョン先生を追い落とそうと、老いをいいことにこの町一番の剣士と誉れも高きオルドランと無理矢理戦わせたのだ!」


 雲月の必死な弁明にも関わらずなおさら首を傾げる愛姫子は再度質問を投げかける。



「だからってなんでオルドランの道場から盗みを働くのかって聞いてんのよ! ていうかオルドラン何も悪くなくない?」


 なかなか結論に至らない問答は続いていくのであった。


 なんの話だ、これは。


 つづく




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