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三本勝負編1 お料理対決

 まさか最終決戦がこんな形で終わりを迎え、よく分からないなんの勝敗を決めるための、そして勝ったらどうなるのかまるで理解し難い謎のコンテストは開幕した。



 何度も言うが、いつこんなことを考えたのかは定かではなかったが、手際よく運営を回すアシガルの姿が確かにそこにはあり、司会者から審査委員の選定までこなしつつ、椅子に座らせられた愛姫子、美菓子、氷雨、そして世界をその手に収めんと永きに渡り暗躍してきていた真の敵であるはずの黄泉姫もまた、その長い脚を組んでその時を待っていた。



「愛姫子ぉ! お前バトル以外に得意なものなんぞあるのかー?」

「そうよそうよ! ()()()なあんたは負け決定よっ!」

「何を言うのですか岳才! それにラヴチューン殿! 愛姫子はきっと何でも出来るさ」


 愛姫子推しの岳才はからかい半分によく響く声を上げて観覧席からエールを送り、ラヴチューンは恋にバトルにライバル視する愛姫子に盛大なヤジを飛ばした。


「うっさいわね! 黙って見てなさいよっ」  


 一旦は合体を解除した愛姫子は短いセーラー服のスカートから伸びる脚を黄泉姫とは反対側に組むと、腕組みし眉を吊り上げて勝手なことを述べる者達を黙らせた。


 そして司会進行役に抜擢されたアッパレは、何処で調達したのか不釣り合いな蝶ネクタイを絞めて、猫型ロボットのニッタさんを抱っこして愛くるしいプニプニの肉球を握りながら第一声を発した。

 どうやらニッタさんはマイク機能も備わっているようだ。


「わたしの()()確かなら! 理想の女性像を決めるコンテストがこれから開幕するでござる!」


 意味不明なマイクパフォーマンスに会場はどよめいたが、ニッタさんに猫パンチをもらったアッパレは緊張がほぐれ、進行し始めた。


「アシガルプレゼンツ! 第一回・理想の女性像決定戦、三本勝負を開催致します! なお今回の大会規定はアシガルパーティーと魔神・黄泉姫との勝負であり、審査委員長兼運営本部長を司る勇者アシガルの独断と偏見に満ち満ちた内容となっておりますが、出場選手らの了承は先に得てあることをまずはお知らせしたいと思います!」


 無茶苦茶な内容に賛否両論か、いきなり痛烈なツッコミを入れたのは龍神・伴峰であった。


「なんじゃそら! アシガルのいいように出来るっつーことは不正じゃねーのか?」


 その文句に司会者アッパレはアシガルから手渡されたメモを握りつつ、汗をふきつつ、ニッタさんを抱っこしつつ、解答する。


「えぇ……先程もお伝え致しました通り、今回の三本勝負に出場する選手の皆さんには既に了承は得てあります! そしてアシガル運営本部長曰く、独断と偏見はあるが、両者間どちらかに加担する気は毛頭なく、これから紹介致します選ばれし審査員の皆様方にも事前に公平な審査を約束する書面にサインを頂いているようです。最後にアシガル運営本部長からの伝言を…………えぇと……足を運ばれた観覧者の皆様方には出場する選手らを是非とも公平に、そして温かく見守りつつ、熱烈なる応援を願うものである。勇者の名に恥じぬよう運営本部長としての責務を全うし、最後には審査委員長として勝敗を決めます。とのことです!!」



 これまでの激しくも長い戦いの日々は何だったのかと野暮ったいことをぬかす輩はもはや一人もいなかった。

 いるのは熱狂的なアシガルパーティーの信者と化した表世界の住民はもとより、魔軍の幹部らであり、全会一致を示すかのような大きな拍手を持って大会が開かれたのであった。



「それでは早速、審査員の皆様方のご紹介に入りたいと思います! ザ・魔界のグルメフーディこと、魔王ジクイル様! よろしくお願いします!」


「ウム。余は宮廷料理から街角の路地裏のしょっぱい店まで美味いものを食べ尽くして来た。舌は肥え肥えに肥えておる。任せよ! それに美女にはうるさいぞ」


「これは力強いお言葉! 頼もしい限りであります! 皆様もご存知の通り、第一回戦はお料理対決であります! 続きましては謎の国ヒノモトにその人ありと言われる程のワショクの鉄人! 興野流棟梁・居島殿!」


「ウム。ワシがこれまで興野流と共に日々精進してきたワショクに通じる物であれば評価は出来ようぞ! そしてワシもこれまで幾千もの美少女をくノ一に育て上げてきた。この眼は確かぞ! フォッフォッフォッ」


「なるほど! よろしくお願いします! えぇ続きまして、野獣のような猛者達を束ねる南の大地の覇者! 獣人王・ベアー様!」

「やっとワシの名を呼んでくれたか! 荒々しき我が国の豪快な料理との対比で審査しようぞ! 獣人のように愛らしい耳や尻尾はなかれども、これまた獣人と比べて判断してくれる。ワハハハハハハ」


「次なるは妖精国にて絶大なる人気を誇る聖女! ビューティーマスター・クイーンスフレ様!」

「氷雨頑張ってー! 美容にまつわるお料理並びに、体型維持と内から湧き出る正真正銘な女性を選んで差し上げますわ❤」


「ありがとうございます! 次は新生竜人国の代表となり、さらにイケメンに磨きがかかる今世紀最大の美少年! 竜王・長嶺様!」

「僕も愛姫子だけ見ていたいが、民草がそれを許さぬということか。何人(なんぴと)たりとも平等に、そして公正なる審査を約束します」


「はいっ! そして最後にスペシャルゲスト審査員! 今や閉ざされた天界の住人にして、オモチと双璧を成す無口担当! 龍神・海鏡様ぁ! よろしくお願い致します!」

「……ウン…………」

「はぁぁぁ〜!? なんで海鏡が……なんで俺じゃねーんだよ!!」



 黙って見ていた伴峰は、自分を差し置いて海鏡が審査員であると知ってまた暴れだしたが、そこは無言で大会運営を見守るアシガルが既に手を打っていた。


「最後になりましたが、これまたスペシャルゲストコメンテーターを紹介します。今や閉ざされた天界の住人にして、アシガルと双璧を成すツッコミの達人! 龍神・伴峰様ぁぁ!! よろしくお願い致します!」


 コメンテーターという地位を貰った伴峰は、即座に機嫌を直し、招かれた実況席につくとニヤニヤした。

 そしてお膳立ても全て終わり、ついに理想の女性像決定戦が開幕していくのであった。


「それでは第一回戦! アシガル委員長、よろしくお願いします! 実況はわたくしアッパレ、解説は伴峰様でお送りします!」



 笑いが止まらないアシガルは一歩前に出ると高らかに第一回戦の対戦者を発表していくのであった。


 話変わってないか、アシガルよ。


 つづく

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