決戦編21 ラストスタイル黄泉姫!?
「!? おかしいわ、直江……じゃなかった黄泉姫の魔力がどんどん上がってるわ」
愛姫子は力なく佇む黄泉姫をやっとその名で呼んだのだが、アシガルも急に魔力を増し始めた黄泉姫に底知れぬ不気味さを感じ、隙だらけにも見えるが故に愛姫子を促し、攻撃を再開した。
氷雨も美菓子も龍神二人とバトンタッチするように戦列に加わり、愛姫子+ア、美菓子、氷雨vs黄泉姫の構図が出来上がった。
龍神二人はジクイルが思った通りの内容を連合軍にもたらし、天界がこの世に邪悪が蔓延らんとする時に遣わす勇者がアシガルなのであると語った。
「なんですかな、勇智剛徳でしたかな? その力を使える唯一の存在がアシガルであると……」
「あぁ。だが黄泉姫も魔界を牛耳る程の実力を持つ魔神の最後の生き残りだからな。そう簡単には勝てないかもな」
まるで他人事のような口調で腕組みした龍神・伴峰を畏れ多い存在であると皆々はかしずき、魔王ジクイルもそれは同じであったが、海鏡を見るにつけ己の最大の欲求を呟くのであった。
「龍神か……是非ともコンプリートしたい!」
そんな中、激しく黄泉姫に仕掛ける愛姫子+アであるが、黄泉姫の不気味な魔力に防がれ、合流した美菓子と氷雨とどうしたものかと作戦を練っていた。
「なんなの? やる気なさそうのに相変わらず攻撃が当たらないなんて……」
「そうなのよ! ムカつくったらありゃしないわよ」
「もしかしたらまだ余力を残して戦っていたのかもしれないわね……」
「…………とにかく勇智剛徳の力と俺達ので倒すしかない!とにかく攻撃開始!!」
アシガルの掛け声で一斉に黄泉姫に飛びかかる三美少女。
しかし今後のことを脳内で細部に渡って考え巡らせた黄泉姫はギョロリと目を見開くと、これまでにない強い魔力を開放し、即座に点在するアシガルパーティーの位置を確認。
深紅の矛と降魔の盾を左右に広げると何事か呪文のようなものを唱え始めた。
「ホーリーブリザード!!」
「くらえ、押忍気功波・極!!」
「はぁぁぁー!! バーニングスラッシュ・ダブル!!」
「今度こそそのたわわなおっぱいを触っちゃうぞぉ〜!!」
「我、冥府の王にして世界を混沌の闇に落とす者なり! いでよ魔界の瘴気! わらわの腸を存分に喰らい、我が力となれっ」
なんと黄泉姫はおぞましい程の怨念宿る瘴気を瞬時に発生させると、己の腹部に吸収していくようであった。
そして三位一体攻撃を展開する三美少女へと一度は取り込んだその瘴気を放出する。
「妖魔撃滅波ぁぁぁ!!!」
凄まじい怨霊が腹部から決壊する濁流のように噴出し、それぞれが放った技共々、美少女らを吹き飛ばす。
それに一番驚いたのはアシガルであった。
彼はこれまで卑猥な言葉を黄泉姫に浴びせ続け、まるで純粋無垢な少女のように恥じらう彼女に淫らな妄想と陵辱の快感を覚えてきていたのだが、まったく聞いてはいなかったし、効いてもいなかったからだ。
「どうなってんだ!? 俺の言葉攻めがきいてない……」
戦いとはまた別に驚愕するアシガルをどつきたかったが、一体化しているが故にそれはかなわなかった愛姫子、それでも何とか撃滅波を防ぎきった後にツッコんだことは言うまでもない。
「あんたねぇ! しっかり弄ぶような口調でやんなさいよ!」
「いやいや、しっかり犯すような視線を送ったし! エロい口ぶりだったでしょうがぁ」
これまで直接攻撃と言葉攻めに味をしめていた二人は何処かピントのずれた口論を繰り広げたが、その間に黄泉姫の見た目は段々と変化しゆく。
貧血ぎみのような白い肌は徐々に褐色の肌へと変わり、漆黒の髪は所々に白髪が絡み、その見事なボディはさらに弾力のあるスタイルへと変わった。
呼応するかのようにまとうローブも伸縮を繰り返し、最後にはチャイナドレスの要諦を呈した。
ティアラ、矛、盾、そして魅惑のドレスに同様の模様、即ち漆黒と銀が織り交ぜられた装飾が現れた時、正真正銘の美魔神・黄泉姫は降臨した瞬間であった。
「おぉ!また見た目が変化してる! 残念だけど氷雨さんを凌駕するスーパーダイナマイトボディじゃないかチクショー!!」
「あれが黄泉姫の最終形態ってことなの!?」
「あぁー!! いいなぁチャイナドレス!」
「なんだか魔女から格闘家にでも転職したみたいね」
それぞれが黄泉姫を評価したところで、すべての力を引き出した黄泉姫の反撃が開始されていくのであった。
(かぁ!! ここへきての褐色肌はムラムラするし、あの強気な目を是非ともまた俺の言葉攻めで陵辱したいんだよねぇ)
相手はパワーアップしたのだぞ、アホ勇者アシガルよ。
つづく




