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決戦編18 黄泉姫、切り札使うってよ

愛姫子+アは黄泉姫と五分五分の戦いを演じ、魔城から観戦するしかない各国の人々は世界の行方を占うこの戦いに終始していた。



愛姫子の底知れぬ霊力からくる強烈な技の数々は黄泉姫を次第に追い詰め、追い討ちをかけるかのようにエロ勇者アシガルの卑猥な言葉が飛びかった。

しかし、かつて魔界を席巻した魔神の最後の末裔たる黄泉姫は間断なく攻め寄せる愛姫子の攻撃をすんでのところでいなし、避け、よく防いだ。


だが免疫のない身体をくすぐるかのようなアシガルの言葉にだけは、やはり動揺を隠しきれないでいたか。

我慢しきれず最大魔力にてすべてを吹き飛ばす一撃必殺の技を放った。


「えぇいちょこまかと! 消し飛べ、冥府妖衡波(めいふようこうは)ぁぁぁ」


数億からなる亡者の群は黄泉姫の魔性の妖気を帯びて巨大な一塊の球体となって愛姫子に襲いかかる。

対する愛姫子はこの攻撃をはね除け、自身の最大火力の一撃で決着をつけようと竜王牙と幻狼剣で受け止めた。



「無茶だ愛姫子! 受け止めきれないって!」

「なに言ってんのよ! 直江の一撃を跳ね返せたら流れはこっちのもんじゃない! ていうかあんたも少しは手伝いなさいよねっ」

「つーか黄泉姫だって、ホントバカなのか!? そなたらは!」


黄泉姫のツッコミをシカトし、必死に受け止めようとする愛姫子に促されるまま、その体内でたゆたうアシガルは自分に何が出来るのかと考えあぐねたが、もしかしたらと一発勝負をかける。


「よぉーし、俺も内部から煩悩パワーを送るっきゃない! いくぞー!! それっ」


発想はすこぶる素晴らしかったのだが、行動は最低であった。

アシガルは煩悩を瞬時に貯め込むために、あろうことか愛姫子の乳や尻や太ももを遠慮なしにおさわりしまくった。


「あそっれっ、胸を優しくもみもみもみ」

「ひゃっ!」

「お尻を下から上へとべろんちょ」

「あぁん♡」

「最後に太ももを背後からガッチリ鷲掴み!」

「んんん……ちょ、ちょっと……んんー!」

「よっしゃ、煩悩注入!!」



一連の動作は間違いなくただの犯罪であったが、効果もまた抜群であった。

注入された煩悩は愛姫子に流れ、二剣に伝達。

黄泉姫の必殺の一撃を見事にはね除けてみせた。


「な、なんだと!? わらわの最大の秘術を…………」



「はぁはぁはぁ…………あんた真面目にやんなさいよっ!」

「へへぇん。俺は大真面目! そのお陰で跳ね返せたじゃないか」


リクエストに手伝ったアシガルであったが、度重なるセクハラなくして押し退けることが出来なかったことに愛姫子は一瞬落ち込んだ。

だが間違いなく黄泉姫に隙が出来ていることも確かであり、その一世一代のチャンスを逃す愛姫子ではなかった。

二剣を強く握り締めると自身で編み出した究極技を放つ。


「アシガル、あんたマジで覚えときなさいよ! 隕石開花(メテオブロッサム)!」


そんな(いとま)はなかったのが、ドスのきいた一言を言いつつも究極魔法を二刀流に込め、驚きの表情でこちらを見詰める黄泉姫に照準を合わせた。



「いっけぇ!! メテオスラッシュ・クロス!!」


巨竜と巨狼が力いっぱい振った二剣から踊り出、真っ直ぐに黄泉姫へと灼熱の炎となって(ほとばし)る。

黄泉姫は両手を十字に降魔の盾を前面に押し出して防御態勢をとるが、出力マックスの愛姫子のメテオスラッシュ・クロスはとどまることを知らず、黄泉姫もろとも飲み込むかのように大空を真っ赤に染めて立ち昇る。


「おのれぇぇーーー!!」



かつてない強烈な霊力の波が黄泉姫を襲い続けたが、瞬間的に己の魔力を最大値にまで高めた黄泉姫は、メテオスラッシュ・クロスを相殺。

しかしさすがの黄泉姫もついにダメージを負ったか、余裕の笑みは消え失せ、冷や汗が頬を伝うと、これまでにない悪寒が脳裏を過る。


(過去にこれ程までにわらわが追い詰められたことがあったか……)



魔軍が封印されていた間、黄泉姫は究極の魔体を完成させる傍ら、五明に伝説のスズキとサトウらについて研究をさせていた。

しかし勇者については何処にいるのか、そしてどんな能力を秘めているのかまったく把握出来ぬまま今に至った。

そんな黄泉姫と五明がまず初めに成すべきことは勇者の暗殺であったが、これまたいつどこで誕生し、どんな容姿なのかすら掴めてはいなかったのだ。


当初ヴォルクスの使者を偽って表世界にやって来た五明と直江(黄泉姫)はマヌケ面でエロ過多な平凡な少年によもやこれ程の能力が備わっていようとは思ってもいなかったのだ。


だがそんな余裕はみるみるうちに焦りに変わり、勇者アシガルはここ数ヶ月の間に急成長を遂げ、伝説のスズキを操るかのように目の前にいる。



今ここで勇者アシガルとスズキ、ならびにサトウとタカハシなる稀有な存在達を滅ぼさずして己の野望達成はあり得ないと改めて確信した黄泉姫は、二の丸にて秘密裏に分離させていた虎の子の部隊を召集することを決断。


深紅の矛を天高く突き上げると、深淵なる闇の雷を幾度となく曇天の空に向かって発射。

それはまさしく中央大陸最北端に駐屯するはずの精鋭部隊への狼煙(のろし)であったのだが。



「なんだぁ? 空に向かって」

「気を引き締めなさいよっ! またなんか汚い手を使って来るかもしれないんだから」



そんな会話を重ねる愛姫子+アを、伏兵をもって屠れると思うと笑いが止まらない黄泉姫なのであった。


(我が闇の軍団をもって魔城を強襲し、乱れたところで仕留めてみせるわ!)



「ウハハハハハハハハハァァァァァーーーーー!!!」



つづく



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