決戦編17 攻撃と口撃
大きく深呼吸したアシガルは脳内で段取りを決めた。
やはり魔城に仲間が避難していることは無視出来ない。いつ黄泉姫がそちらに攻撃を加えるか分かったものではないと判断したアシガルは、真の力を発揮しゆく。
「まずは美菓子と氷雨にいくぞっ! 勇智剛徳・スーパー煩悩照射ぁぁ!!」
城の防衛をより強固にするために二人に行った照射は、自らスーパーと付け加えるだけあって、さらに強く輝く光となって二人を照らした。
何故か真の力に目覚めてからパーティー内の美少女らを呼び捨てにするようになったアシガルにドキッとしたのは氷雨であり、それは美菓子も同様であったか、ほんのりと頬を朱に染めつつも、アシガルの要望に答えるように愛姫子から分離した神器を身にまとい、鉄壁の防衛ラインを敷いた。
即ち美菓子は竜気のマント、氷雨は竜心の胸当をもって黄泉姫に視線を向け続けた。
「よし、今度は愛姫子だ! 準備はいいか?!」
「何回言わすのよ! 準備万端! さっさとやりなさいよ」
美菓子らと同じく呼び捨てされた愛姫子も二人よりもより一層全身を紅潮させたが、鈍感勇者アシガルはその血色の良さをバトルにワクワクしている程度にしか認識していなかったか。
「いっくぞぉー! 勇智剛徳・アシガル照射ぁぁぁーーー!!!」
その言葉と同時に燦然と輝く光の球体となったアシガルは愛姫子と一つになるかのように折り重なっていく。
執拗に黄泉姫から攻撃を受け続けていたこともあり、愛用のライトアーマーもグローブも、そしてブーツもいつの間にか消し飛んでいたが、最初から身につけていたセーラー服と腕に残った龍神の腕輪のみは無事であり、アシガルを体内に取り込むとその見た目が変化しゆく。
聖竜姫のように豪華な鎧武具などは一切なかったが、赤茶けたロングヘアーは金色に輝く髪へと変色し、右目は真っ赤に、左目はゴールドに輝くオッドアイとなり、燃え上がる愛姫子のオーラをアシガルの輝く霊気が包み込むような二重の炎となって愛姫子を取り巻いた。
「これがあんたの真の力だってわけ!?」
「んん?? そうみたい……おぉ! 俺は今まさに愛姫子ちゃんと一つになっているのか!? 溶け合うようになんだか気持ちいい気がしてきたぞぉ!!」
端から見れば愛姫子がアシガルを吸収したようにしか見えなかったが、それは合体に近かった。
愛姫子は体内に不純物でも侵入してきたかのような、何とも気色悪い感じがしたが、これは黄泉姫を倒すための最後の手段であると己に言い聞かせようと努めたが、残念ながらその嫌悪感は正解であった。
アシガルは愛姫子の体内に入り込んだことをいいことに、身体中をまさぐりまくり、胸や尻や太ももをおさわりしまくっていた。
「ちょっちょっと!? あんた何やってんのよ」
「えっ!? あ、いやつい……だって触りたい放題なんだもん」
「ふっざけんじゃないわよ! あっ♡ またあたしのお尻を触ったわね!? 分離したら真っ先に殺すわよ!!」
それをご丁寧に黙って見ていた黄泉姫は、そういった経験が乏しいのか、愛姫子の喘ぐ声を聞き、アシガルの欲情した声を聞くにつけ股の辺りをもぞもぞしていたか。
「お、お前達! 真面目にやる気はあるのか!? わらわはいつまで待てばよいのだっ」
焦らされ続けていた黄泉姫はついに昂然と抗議しだしたし、聞きようによっては順番待ちしているように見受けたが。
「よし、お遊びはここまでだ! いくぞっ黄泉姫! 愛姫子GO!!」
「命令すんじゃないわよっ! はぁぁぁー!! ブレイズブロー!!」
素手に素足、着衣はセーラー服のみで黄泉姫に立ち向かう愛姫子。
かたや黄泉は欠片からなる矛と盾を駆使して迎え撃つ。
烈火の如き豪炎を握り絞めた愛姫子は猛攻撃を開始、アシガル照射を受けたことにより、黄泉姫と対等に渡り合えるまでにレベルアップしていた。
「くっ! やるではないかっ。ヘルズファイアー!」
聖なる炎と邪悪な炎は巻き付き、絡み合うように互いを押し潰そうとするが、その度に新たに攻撃を加えていくために真っ赤な炎とどす黒い炎は天高く昇り、全てを焼き尽くすかのような熱気が辺り一面を覆い尽くす。
一瞬の隙をついて腕輪から竜王牙を抜いた愛姫子は畳み掛けるように技を繰り出す。
「くらえー! 烈火爆流斬!!」
ラヴチューンと対戦した時に編み出したその技は、竜王牙と経験値を積んだ愛姫子の霊力によって、まったく別物のようであり、黄泉姫を飲み込むかのように襲う。
「小癪な! 冥府彷滴。邪悪な水流に飲み込まれよっ」
だが数多の気を操る黄泉姫はその都度、臨機応変に冥界の炎、水、風、そして大地の力を縦横無尽に繰り出した。
炎系一辺倒の愛姫子は自然と圧され始めたが、勝ち気な愛姫子はそれでも立ち向かい続ける。
「破邪拳聖! うぉぉぉ!! こいっ狼王! 正拳突!」
戦闘の申し子、愛姫子は無属性攻撃で盛り返し、狼王を呼ぶと竜王牙と幻狼剣の二刀流で今度は挑む。
紅蓮の聖剣と漆黒の魔剣を軽々と振り、黄泉姫の深紅の矛と衝突する度に閃光を撒き散らし、降魔の盾が防ぐ度に黄泉の亡者共がその盾からオドロオドロしい悲鳴を上げた。
「実力伯仲ってか!? 愛姫子が動く度にプルプルって胸がいい感じに揺れるのね。俺が支えているからね、このキュッとしたお尻を!」
「ヒャッ♡ 戦いの邪魔よ! バカアシガル!!」
「俺にはちゃんと見えてるぞ、直江。そのエッチなローブから見え隠れするたわわなおっぱいと、絶妙なスリットから伸びるちょうどいい太ももがなぁ」
「す……よ、黄泉姫じゃとゆーとろうが! わらわを穢らわしい目で見るでないわっ」
直接攻撃と言葉攻めでじりじりと黄泉姫を圧し始めた愛姫子+アだが、互いに致命的なダメージはまだ負ってはいない。
まだまだ勝負の行方は分からない。
アシガルのそれいる?
つづく




