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決戦編14 アシガル立つ!

「な、なんと! まさか刻の賢者が殺れるとは……」

「五明め、最後まで我を通したてか……なんと罪深いことを……シンガン殿、すまぬ…………」

「ご、ご先祖様が……」


魔王ジクイルを筆頭にビジョン、そして子孫であるテンガンはシンガンが命を落とした事に複雑な表情を浮かべたが、戦いはさらに加速しゆく。

シンガンを失った悲しみからか、ついにアシガルは幾度となく聞かされてきていた勇智剛徳(ゆうちごうとく)を発揮。


それに反応する形で神龍石、精霊石、そして心理石は愛姫子らから離れ、アシガルの胸元の聖玉盤へと集まった。

それは聖竜姫とマジカルフェアリーの解除を意味し、氷雨のバージョンアップも解け、愛姫子の手からは既に幻狼剣が狼王となってシンガンの元へと戻ったが、息つく暇もなく獣霊石へと変化した。


空を飛ぶことさえ出来なくなった愛姫子は、なおも黄泉姫への攻撃をやめなかったが、美菓子はなおさら塞ぎ込み、氷雨は力なくシンガンを抱くアシガルを見詰めていたか。



「フハハハハハァ!! アシガルパーティーついに観念したか! 勇者よ、もはやこれまでぞ! 魔城に集結する者共を助けたくば無駄な抵抗をやめよ!」

「うっさいわね! まだあたしが相手してるでしょうが!!」


黄泉姫の言葉を切った愛姫子は不得意な魔法攻撃でなおも抵抗したが、黄泉姫は不思議な力を示し始めたアシガルを牽制するかのようにさらに絶望を味合わせる。


深紅の矛から繰り出した暗黒の稲妻は愛姫子と美菓子、そして氷雨を襲い、三人は激しい衝撃に悲鳴をあげる。


「きゃあああーー!!」

「いやぁー!」

「あぁぁぁぁーーー!!!」


向かうところ敵なしであった三美少女は黄泉姫の力になす術なく、この旅最大のピンチを迎える。

魔城に集う者達もアシガルパーティーですら敵わぬ存在に畏怖し、希望を失いかけたがテンガンはご先祖を失った悲しみを振り払うかのようにアシガルを指差して声を張り上げた。



「まだ諦めてはなりません! 勇者アシガルを見て下さい! あの輝きこそ悪を退ける力を持つと言われる勇智剛徳に他なりません!!」

「た、確かにおぞましき黄泉姫の妖気を消し去るが如き聖なる光じゃが……」


テンガンに呼応する形でビジョンはアシガルが放つ閃光を見詰めたが、ジクイルはすべての謎が解けたかのようにテンガンよりもさらに大きな声を上げた。



「わかったぞ! 勇者一族は天界から使命を果たすべく送られた血筋であったか! すべてを創造したと言われる天界の神々が誕生させた存在であればこそ、各国を守護する石を使用することもまた可能であったか」

「しかし、このままでは……スズキもサトウも……そしてタカハシも黄泉姫に動きを封じられていては……」


謎解きジクイルはオルドランのそんな弱気な発言を打破するかのように羽を広げると、なんと愛姫子らを救うために突撃していく。


「ジ、ジクイル様ぁ!! 無茶ですぞぉーー」

「ビジョン! それぞれと協力し、城を守れよ! 余はアシガルパーティーの助勢に向かう」



永遠と続く黄泉姫の攻撃にさすがの愛姫子も身動き一つ出来ず、美菓子も氷雨も既に意識を失いかけたが、ジクイルの鋭い一撃は黄泉姫の怒涛の攻撃から三人を救い、黄泉姫と向かい合った。



「ジクイルか。よもやわらわに勝てるとは思ってはいないようだが、どういうつもりかえ?」

「フン! 性分ではないのだがな、急にアシガルとやらの真の力をこの目で見たくなっただけのこと! 勇者アシガル! さっさとその力を発揮せぬかっ」



しかしアシガルが行動を起こす前に黄泉姫が、ジクイルも含めて愛姫子らに魔界の稲妻を再び落とす。

ジクイルは守りの態勢にはいったが、さすがに全員を助けることは出来ず、逆に自分も黄泉姫の攻撃を受ける結果となってしまった。


もはや魔王が参戦したとて黄泉姫の絶大なる力の前では劣勢を覆すことは出来なかったが、ついにアシガルはその真の力を見せ付ける時がやってきた。



「やめろぉぉぉーーー!!!」


アシガルが黄泉姫に向かって叫んだその時、目映い光は四方に散り、愛姫子らを魔界の稲妻から救ってみせた。

そしてその光はさらに増大していくと、光の塊はアシガルに吸収されるかのように消えた。


「アシガル、やれるな?」

「あぁ! オモチ、シンガンを頼んだぞ」


今までとは別人のようにキリッとしたアシガルは度重なる黄泉姫からの攻撃で疲弊仕切っていたパーティーら一人ひとりを鼓舞するかのように声をかけた。


「氷雨! これから黄泉姫を倒す! オモチのところへ避難してくれ」

「えっ……あ、はい!」

「美菓子! 泣き崩れている場合じゃないぞ、パンツが丸見えだ!」

「えっ!? えーー!? やだぁ! もう!!」


「最後に愛姫子! 全力で黄泉姫を倒すぞ! 準備はいいか!?」


呼び捨てにされた氷雨は一瞬ドキッとしてオモチと重なるようになり、パンチラを指摘された美菓子もスカートを直しながらもそそくさと氷雨らと合流。

まるで三美少女らは受けたダメージを忘れたかのようであったか。


最後に声をかけられた愛姫子はボロボロになりながらもニヤっと笑うとこう言ってのけた。



「生意気じゃない! やってやろうじゃないの」


アシガルと愛姫子は今、空に悠然と浮かぶ黄泉姫と改めて対峙すると、正真正銘のラストバトルへと突入していくのであった。



(どうでもよいが、助けに入った余のことを忘れてはおらぬかアシガルよ…………)


プスプスと焦げ付き倒れ込んだジクイルは遠慮がちに心ツッコミをするのであった。


そうです。すっかり忘れてますね。こいつ。



つづく



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