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決戦編11 無敵の黄泉姫とアシガル暗殺の件

三方から放たれた究極魔法を黄泉姫は顔色一つ変えず受け止めてみせた。

シンガンの大地炸裂(アースデトネーション)はダークローブから発せられる妖気で、そして左舷からの氷雨のストームリングは深紅の矛で軽く受け止めた。


「なっ!? なんだと!」

「せっかく魔法を使えたのに黄泉姫に届かないなんて……」


シンガンと氷雨はそれでも全力で究極魔法を続け、右舷から美菓子のミラクルホーリーブリザードが黄泉姫を急襲したのだが、五明から受け取った魔神の欠片に己の妖気を吹き込んだ黄泉姫は声高らかに叫んだ。



「出でよ! 降魔(こうま)の盾!!」


巨大な盾へと変化を遂げた欠片は、美菓子のミラクルホーリーブリザードを弾き返した。


「えぇー!? ちょちょっとぉ!! ま、負けるなぁ!!」


しかし美菓子も負けじと巻き返しをはかる。

それに呼応する形で氷雨もシンガンも盛り返したが、肝心の凝縮(コアグレーション)まで辿り着けなかったか。


「もう! 何やってんのよ! 待ってられないわ! 隕石開花(メテオブロッサム)!!」


頭上から急速落下しつつ、愛姫子もまた究極魔法を唱えた。

しかし軽々と四つすべてを受け止めた黄泉姫は冷ややかに笑うと反撃に出た。


「これでわらわとそなたらのレベルの差がわかったか。消し飛べ! 雑魚どもがっ」


内から発する強大な負のオーラは四人を吹き飛ばし、中でも氷雨とシンガンは大木や岩肌に激突し、額からは血が滲み出た。

愛姫子と美菓子は吹き飛ばされながらもなんとか踏みとどまってみせ、改めて完全体なる黄泉姫の桁違いのパワーに絶句してしまっていた。



「アハハハハハ! 先ほどまでの威勢はどうした! こないならこちらからいくぞ」


不気味な黒い影を引き連れるかのように残像が愛姫子に忍び寄る。迎えうつ愛姫子も二刀流で応戦したが力は歴然、その圧倒的な妖気に再度吹き飛ばされ、魔城へと激突。


援護すべくマジカルキュートボウでレインボーアローを放った美菓子であったが、例の降魔の盾はまたしてもそれを防ぎ、逆に深紅の矛を軽くしごいただけにみえたその一振は、切れ味鋭いかまいたちとなって美菓子を襲い、避けることも防御壁を作る間もなくただ両手をクロスして耐えるしかなかったが、大地へと叩きつけられた。



「な、なんだよ……全然相手にならないじゃないか」

「んんん……や、やるじゃない! 直江……」

「だ、大丈夫か!? スズキ! やはり魔神はこの世で最強なのか……」


魔城を守護するつもりのジクイルであったが、黄泉姫の桁違いの強さに呆然とするあまり、吹き飛ばされて来た愛姫子をフォローすることが出来なかった。

魔城にめり込んだ愛姫子を建前上でら心配してみせたが、本音はやはりかつて魔界を席巻した種族に畏れを成していたか。



「あ、あんたねぇ! ……まぁいいわ。魔神てなんか弱点とかないの?!」

「……ない! ハッキリ言ってそんなものはない! だからこそ魔界の覇者として君臨していたのだっ」


腰に手を当ててキッパリと断言したジクイルに舌打ちした愛姫子は、テラスへと降りると、空に浮かぶ黄泉姫をしばらくは睨みつけていた。


「どうするつもりだ愛姫子!」

「勝てる見込みがないのであれば一時撤退も考えるという手も……我が国に居られる八龍神様方に助力を乞うとか……」

「うるっさいわね! 今それを考えてんじゃない! だけど死んでも龍神の力なんか借りないからね」


岳才と久遠の言葉に激しい口調で反論した愛姫子は、地面に伏せている美菓子を急いで捕まえると言った。



「美菓子、あんたまだやれるわよねぇ?」

「えっ……だけど全然こっちの攻撃が当たらないしさぁ……」

「ヘタってんじゃないわよ! こうなれば玉砕覚悟で攻撃が当たるまでとことんやってやろうじゃないの! 行くよっ」

「えっあぁちょ、ちょっと待ってよぉー愛姫ちゃ~ん!!」



破れかぶれとはまさにこのことか、敗けを認めないことは立派であった。が、しかしそんなことで倒せるほど黄泉姫は甘くはなく、愛姫子と美菓子の波状攻撃すら軽く受け流しつつも、黄泉姫は五明の行動を待っていた。



(フフフ。もはやこれまで。だが我が野望を完遂することを度々阻止してきたのはスズキでもサトウでも。ましてや刻の賢者でもない! あの無能勇者の力がなければそもそも烏合の衆。今後に支障をきたしそうな存在だけは僕が討ち取ってご覧にいれますよ、黄泉姫…………)


既に虫の息であった五明ではあるが、世界で唯一人の存在である勇者を抹殺することが己の最後の使命とばかりに、全生命力を右手に集中し、武者震いしながらも黄泉姫のフォルムにムラムラする奇妙な変態勇者を一点に見詰めるのであった。



そしてシンガンもまた伝説のパーティーの力では勝てぬと悟り、正真正銘最後の切り札たるカードを切るべく、五明と同じようにアシガルに視線を送るのであった。



(やはり最後にはヤツの真の力を引き出すしかないのか……だがこれまで急成長を遂げて来てはいたが、ついぞその力を発揮することはなかった……しかもこの状況下で果たしてどうやったらよいのやら……)


そんなことを考えつつも、シンガンは偶然にも最後の力を振り絞ってアシガルの暗殺を企てる五明を発見。

己の持てる力すべてを賭して、駆けるのであった。


(まったくもって……世話の焼ける連中だ!)



そうですよね。

特にアシガルのことですよね。



つづく

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