決戦編9 刻の賢者×魔界の頭脳 part2!
魔元城での戦いではすべてにおいてシンガンが五明を圧倒していたと言っても過言ではない。
生きた歳も五明はシンガンを遥かに上回り、脆弱なはずの人間よりも頑丈な肉体と高い魔力を持つ魔族の方が圧倒的に強いはずであったが、その常識を覆すかのように魔神の欠片を使って決死の覚悟で迫る五明を圧倒するシンガン。
五明と共に観戦する者達は、一様にその人間離れした実力を持つシンガンとはいったい何者なのであろうと思ったに違いない。
その多くの者の疑問に答えるかのようにシンガンはニヤニヤ笑いながら嘯いた。
「アシガルパーティーはなぁ特別なのさ! 俺は生まれながらにして人間の最高峰の霊力を持っていたが、それ以上に珍しい存在なんだよ」
固唾を飲んでシンガンの言葉を聞く一同と五明。
ある者は顔を合わせ首をひねり、そしてある者は腕組みしてその答えを考えてみたが、ついぞその答えには辿り着けなかった。
だが、集中治療にて動けるまでに回復していた氷雨はハッと何かに気付いたかのようにテラスにまで出ると、シンガンに問うた。
「ま、まさか……口なし、シンガンさんも隠し名を!?」
「さすがは聡明な氷雨姫! そうだ、俺もまた隠し名・タナカを持つものなり!!」
珍しい隠し名を持つ者同士の共鳴なのか、そう宣言した直後にシンガンは黄金に輝き、氷雨はエメラルドのオーラに包まれた。
「覚悟せよ、五明! スズキとサトウ、そしてタカハシに次ぐ力を保有する俺に不可能はない!」
生まれ落ちたその時に神の加護を受けるというその隠し名。
アシガルパーティーには世にも珍しい名前が揃い踏み、もはや敵ではないと言わんばかりに五明に怒涛の攻撃をしかけるシンガン。
「さぁ! どこまで持ちこたえれるか、魔界の頭脳君! グランドインパクトォォ!!」
「くっ! ここで敗北したら何のために生きて来たかわかったものではありませんよ」
五明にも意地がある、互いに一歩も譲らぬ魔法攻撃の嵐であった。
「暗黒瘴円波!!」
「ぬるい! 羅刹蒼炎斬!!」
「くっ……瘴飛瞬殺弾!」
「はぁぁぁぁーー!!」
シンガンは左手に霊力を集中すると五明が放った瞬殺弾を遥か彼方へと弾き飛ばした。
だが頭に血が上っていた五明は弾かれると知りながらもなおも連続で瞬殺弾を放つが、シンガンは逆に弾き飛ばしながらも徐々に間合いを詰めていく。
「ムダだ! 貴様では俺には勝てぬ! 最後に見せてやろう、四つ目の究極魔法をなぁ」
シンガンは瞬殺弾を弾き飛ばしながらもそう言い、右手に持つ棒にも己の霊力を注入。
それは実に器用であり、まさに攻防一体の無敵の構えで五明に迫った。
「過去の過ちを悔い、改めよ、五明! 大地炸裂!!!」
木々が川が、そして山々がその生きる活力をシンガンにもたらし、黄金に輝く大地から五明に照準を合わせたかのように激しい光線となって発射された。
五明はこれまでに見たこともない大きな生命の息吹に翻弄されるかのように、無防備にも直撃を受け、水面にたゆたう水草のように空中で揺らめいた。
「こ、こんな力を持っていたとは……か、勝てるわけがないですよ……」
大地の力を操るかのように両手を全面に押し出していたシンガンはニタリと笑うと、何故か程よいところで魔法攻撃を止め、五明はその反動でまっ逆さまに地上へと落下していった。
「どうだろうか、あとはビジョンとバルザーク、そしてここに居並ぶ者達で頭脳君を裁いては」
余裕を見せ続けていたシンガンも膨大な霊力を消費したことによってか流れる汗と息を弾ませて魔城に避難していた有識者らに五明の措置を委ねた。
ビジョンとバルザークは頷き合うとジクイルと長峰、そして各国の首脳陣らと五明の処理について後日改めて会合の場を設けることで一致した。
シンガンは342年前、五明の竜王暗躍さえ阻止していれば。
もしかしたら竜王・炎舞は天命をまっとうできたかもしれない。
そして五明は黄泉姫の傀儡とならなかったかもしれない。
しかしたらればを語るには時が流れ過ぎていたし、カラケルとの約束達成も目前まで迫っていたこともあり、天を仰ぐしかないシンガンなのであった。
(カラケルよ……もう少しぞ……)
膨大な霊力を使い、五明を降したシンガンであったが、愛姫子と美菓子は苦戦を強いられ、これまでにないピンチを迎えていたのだが。
(そこ! あぁん! もうちょっとで美菓子ちゃんのおっぱいがポロンてするところだったのに!!)
呑気にもエロまっしぐらな主人公はまだそれに気付いてはいないのであった。
お前まだそれかよ。
つづく
 
 




