決戦編8 刻の賢者×魔界の頭脳
遂に四天王とヴォルクスを打ち破った愛姫子と美菓子。
そして正体を現したラスボスこと魔神・黄泉姫とそれに付き従う五明。
シンガンは今、342年前からの因縁に決着を付けるべく、黄泉姫を伝説のスズキとサトウたる愛姫子と美菓子に任せ、己は五明と対峙していた。
各国のヒーリングマスターの治療を受けていた氷雨は意識を取り戻すと、これまでアシガルパーティーにしか知らされていなかった事実を、集まる有識者らにもたらした。
その新事実に他者よりも一層驚愕する者が二人。
一人目はその昔、五明を弟子として魔技術の手解きをしていた師匠筋の魔参謀ビジョンであったか。
前途洋々たる才気漲る若きホープに、己の夢を託すかのように、大切に大事に育て上げてきていたのが五明であったが、ある時を境にその性格までが変貌し破滅の道を選び、全てを捨てて、そして全てを持ち去った。
ビジョンはあらゆる手を使って五明の行方を探ったが、魔界の奥底に潜伏する五明を遂に発見出来ぬまま、勇者カラケルパーティーらによって魔軍もろとも封印されたのだ。
何らかの力によって復活を果たした魔軍ではあったが、魔王ジクイルの言うコンプリートを果たすために忙殺されていたビジョン。
だが頭の片隅にはいつも愛弟子である五明の姿があった。
そんな中、封印されし数百年の間に、魔界を掌握したという魔竜王ヴォルクスの使者として目の前に五明が現れた時には愕然とした。
(まさか長年ジクイル様と対立してきていたヴォルクスの配下になりさがっていようとは……)
英邁な瞳が恐ろしく濁り、光を失っているように見える弟子と再会しながらも、魔軍の統率にかかりきりであったが、よもやヴォルクスの配下になったという話も真っ赤なデタラメであり、その昔、魔界を席巻していたという強大な力を有する魔神の下僕と成り下がっていたという事実はビジョンをさらに困惑させた。
果たしてそれが五明の本意なのか、はたまた黄泉姫に洗脳されているのかはビジョンにとって知る術はなく、不祥の弟子・五明の過ちを糺してやることだけを考え、対峙するシンガンに声を張り上げて叫んだ。
「シンガン殿! 我が出来損ないの弟子を厳しく処断してやってくれぃ!」
そしてもう一人。
前竜王・炎舞の側近であったバルザークもまた、主を守ること叶わず、暗殺を許してしまった経緯がある。
炎舞の遺言に従い亡命し、竜王暗殺の首謀者という無実の罪を擦り付けられ、世界指名手配となったバルザークは、ひょんなことから魔軍に席を置くこととなり、一廉の武人として魔軍にはなくてはならない将軍にまで登り詰めたが、心の奥底では、敬い慕う前主の敵討ちを胸に秘めていたのだ。
竜王暗殺の首謀者は五明である。
氷雨がもたらしたその事実はバルザークの胸に煮えたぎる怒りの憎悪を生んだが、ビジョン同様に刻の賢者シンガンに委ねるしかないと、万感の想いを込めて叫んだ。
「刻の賢者殿、我が主・炎舞様の仇を取って下され! お頼み申す!!」
積年の恨みと悩みとを一身に受けたシンガンは、賢者の杖を強く握ると、悪魔に身を捧げた五明を睨みつけて言った。
「罪な男よ! 償うには罰を受ける必要がある」
「罪? 罰? ハハハハハ! 我が野望を果たすために歩んで来た道に、たまたま踏み台になりそうなモノがあったに過ぎませんよ。師匠ビジョンも竜王・炎舞もねぇ」
「汚れきったか、五明!」
「貴様に竜王様の生き方はわかるまい!!」
「ハイハイ。むさ苦しいほど暑苦しいですね。では罰とやらを与えて頂きましょうか? 刻の賢者様」
腐りきった言葉しか発しない五明を何故かシンガンは滑稽に思えてならなかった。
 
(こやつは操られていることに気付きながらも、身を委ねたのだ……それ即ち悪なり!)
正しい生き方を諦め、洗脳されていると気付いてもなお、悪に手を染め続けた報いを受けさせるために、シンガンは持てるすべての力を使って五明との戦いを始めるのであった。
(ビジョンとバルザークだけではない! 貴様らのお陰で俺とカラケルの人生も大いに狂わされたのだ。カラケルの願いと共に打倒してみせる!)
その頃アシガルは激しい戦闘を繰り広げる愛姫子と美菓子、それに黄泉姫の乳や尻や太ももでテンションMAXであった。
(キュッとしたお尻がナイスですねぇ! ぷるんぷるんのおっぱいもナイスですねぇ! スリットから伸びる程よい太さの太もももナイスですねぇ! もうナイスなんですねぇ!!)
こんなやつに最後を託すしか方法がないのがまた無情であろうよ。
つづく
 




