決戦編7 美魔神・黄泉姫、降臨! だがしかし!?
直江は美菓子の一撃で消え去った。
しかし灰色の煙となって二の丸の秘密部屋に安置されていた少女に乗り移ったようであり、それが証拠に二の丸で調べた時には感じなかった命の、心臓の鼓動までがそれぞれに聞こえるようであった。
五明が甲高く述べた名前は確か黄泉姫であったか、目を開けたその黄泉姫は両手を広げると、五明が四天王らに切り札として渡していた魔神の欠片が引き寄せられるように黄泉姫の元に集った。
そして一つは黄泉を包み込み、漆黒のダークローブに。
もう一つは深紅に染まる三股の矛に。
そしてもう一つは闇夜のように深く黒いロングヘアーの頭上にティアラとなって被さった。
「なるほどね、あれが直江の本当の姿ってわけね?!」
「じゃああの娘を倒せば世界は救われるのね!?」
愛姫子と美菓子は改めて黄泉姫打倒の決意を固めたが、アシガルはお得意の欲情目線でラスボスたる黄泉姫を見ていた。
(ちょ、ちょっと待ってくれよ! 直江は胸もないし、マッチ棒みたいな身体付きだったじゃないか! だけど黄泉姫はどうだ?! 美菓子ちゃんの乳を遥かに凌ぐ……あれはもう氷雨さんと互角かそれ以上!! そんでもってなんだよあの服は! 裸体は好きだけど、やっぱり見え隠れするのが男は好きなんだ!! それを見事に体現しているかのように、たわわな胸をこれでもかと全面に押し出す胸元の絞めつけ具合といい、腰の辺りからスリットの入った下半身!! あんなに美脚だったなんて!!! 絶対パンティは黒だ! 愛姫子ちゃんは純白のサテンパンティ、しかもヒモパンなんだから黄泉姫も黒のヒモパンでお願いしたい! いやいや!! わらわとかって何だか女王様っぽい口調だから、ここはやはりTバックってぇのが定石ではないだろうかぁ!! それに…………ぶぐっ)
この物語始まって以来の長々とした心妄想であったが、途中で制裁を加え、その長ったらしい欲情を止めたのはやはり愛姫子であった。
愛姫子はアシガルの心模様が手に取るように分かっていたのか、まるで彼氏を取られたかのように逆上し、敵の手に落ちる前にアシガルを屠りそうな勢いであったが、程よいタイミングで美菓子とシンガンが仲裁に入り、アシガルはすんでのところで命を長らえたか。
「お、おい。そこの勇者! 早速死にそうだが、大丈夫なのか」
まさかのラスボスに心配されたアシガルであったが、霞む視界の中で美魔神・黄泉姫を見ると弱々しく回答した。
「だ、大丈夫っすよぉ……あんたスタイルの修正し過ぎっすよ」
「なっなんだと! これがわらわの本来の姿であって、直江は仮の肉体だ! それを努々忘れるでないわ!」
「直江の本当の姿がこんな美人だなんておかしいわよ!」
「そうだよね! 直江さんは無口で陰キャなはずだもん!」
「お前ら人の話を聞いていたのか!? これがわらわの本当の姿だと言っておろうが!」
「直江よ、正直に言ったらどうだ? 修正したとな」
「頭わりーのかお前ら! わらわは黄泉姫であり、この姿が真実だと言っておろうがっ」
ラスボス黄泉姫との無益にして無駄な論争は終わることを知らず、しばらくはそんな押し問答が続いたが、時間に限りのあるシンガンがその口喧嘩を止め、互いに一触即発と相成った。
(面白いですねぇ。我が主でもアシガルらのペースに巻き込まれるとは……しかし完全体となった黄泉姫様に敵う者などこの世界にありはしない!)
そう自信を覗かせた五明は改めてシンガンと激しい魔法対決へと突入し、並々ならぬ妖気を発する黄泉姫には愛姫子と美菓子が攻撃を開始したことで最後の戦いがスタートした。
「こい、竜王牙! 幻狼剣! いくわよっ直江!!」
「マジカルショットステッキ! 援護するわ愛姫ちゃん!! 直江さん覚悟して下さいね!」
「ホントに頭わりーんか! 黄泉姫だって言っておろうがっ」
「フフフなんとも楽しげな。さてこちらも決着をつけるか? 魔界の頭脳君よ」
「完全体となった黄泉姫様の恐ろしさをとくと味わうがいい! ですがその前にあなただけは排除しなくては僕の面目が立ちませんよねぇ」
世界の未来を占う壮絶にして過激なバトルが今、始まっていくのであった。
(よし、むさ苦しい男同士の勝負は放っておこう! ここはやっぱり美尻の愛姫子ちゃんとたわわな美菓子ちゃん、それに美魔神・直江のハラハラドキドキ対決を目に焼き付けるしかないっしょ!!)
世界の未来を占う壮絶にして過激なバトルが今、始まっていくのだぞ、アシガルよ。
それに直江ではない、黄泉姫だってよ。
つづく




