決戦編6 ラスボス! その名は黄泉姫!?
遂に魔竜王ヴォルクスを仕止めて見せた美菓子であったが、体力も霊力も相当消耗していたか、その場にへたり込むと深い深呼吸をした。
伝説のスズキとサトウの力を目の当たりにした者達は、その底知れぬ二人の力に絶句し、この世界は救われたのだと一様に安堵したが、ご存じの通り最終決戦はまだ終わりではなかった。
アシガルパーティーはそれを知っているだけに曇天の空を見上げるとシンガンと五明がどうなっているのか気になっていた。
「やったじゃない! 美菓子!」
「もう! 精霊石が武器に変わるなんて知らなかったよぉ……」
「えっ? じゃあなんであの時……」
美菓子は愛姫子の仕草からヒントを得たのだという。
愛姫子のヒントとは、その豊満なバストの中心に装着された精霊石をもぎ取るジェスチャーであったとか。
アシガルは厳しくも美菓子自身で気づくべきだと放言した愛姫子が、実はヒントを与えていたことに何故か心が和んだ。
そして三人揃って空を見上げると、凄まじい勢いで落下してくる者が一人。
切り札たる魔神の欠片を使用し、全力で挑み、シンガンを降す手筈であったが、どうやらシンガンの方が上手であったらしい。落下してきたのは五明であった。
そしてゆっくりとしたり顔で降りて来たシンガンはロングサンとヴォルクスが倒されていることを確認すると、愛姫子と美菓子を見て大きく頷き、氷雨とオモチの容態を心配した。
「誰だ? あれは」
心眼の腕輪がまさか342年前の刻の賢者へと変身出来ることを知らないメンバーに説明を加えるロキスやら前戯であったが、そんなことはお構い成しに、勝負は終わったわけではないが、余裕をみせるシンガン。
そして一層憎しみと怒りの感情を抱いた五明であったが、直江の気配を感じると気持ちを落ち着け、冷静になろうと努めた。
「どうだ、四天王もヴォルクスもアシガルパーティーにひれ伏した。貴様もそろそろ本性を現したらどうだ」
シンガンのその言葉に沈黙していた五明は静かに笑い始めると天高く腕を突き上げ、声を張り上げて言った。
「よかろう! 我が主にして魔界の真の支配者、黄泉姫様だ! 跪け、下郎ども!!」
五明の指差す空を見上げたアシガルらであったが、そこにはこれまで五明に付き従い、様々な雑用をこなしてきていた直江の姿しかなく、困惑しつつもヒソヒソと会話を始めた。
「ねぇ! あれって直江よね? あれのどこが魔界の支配者なのよ?」
「さ、さぁ……直江って無口で黙々と作業をこなしてるイメージしかないんだけどなぁ……つーかなんか久々に見た気がするな、直江」
「ラヴチューンさんと戦ったことあったけど、そこまで強くはなかった気がするよねぇ?」
そんな会話に耳を傾けていたシンガンであったが、直江のそのまた真上に浮遊する裸の少女に気付くと、美菓子に即座に命令した。
「美菓子! 直江を狙って矢を放て! 急げ!」
「えっ!? な、なんで急に……えぇーい、射!!」
慌てながらも直江に矢を放った美菓子、何がどうしたのか理解できない愛姫子とアシガルはシンガンと美菓子とそして直江を順番に見回した。
美菓子の放った一撃は無防備な直江の額に命中。
身動き一つせず、冷たい視線をアシガルらに送り続ける直江は痛みすら感じないのか、無感情に口を開いた。
「さすがは伝説のスズキとサトウといったところか。もはや用済みのヴォルクス一派を掃討したこと天晴れである。どうか、今後はわらわの配下として全世界を統べる礎とならぬか」
額に矢を受けてもなお、真顔で口を開く直江に悪寒のようなものを感じた美菓子とアシガル。
だがシンガンは黙ってその直江を見詰めていたし、愛姫子はその勝ち気な性格で反論する。
「はぁ!? あんたバカなの? 勝負はあたしらの勝ちよ、あんたこそ額のキズを治すことにでも専念したらどうなのよ」
しかし愛姫子の言葉を嘲笑う直江。
そのすぐ脇に五明が侍ると、また静かに口を開いて頭上の少女を引き寄せる仕草をとった。
「バカな人間どもよ、跪き、刮目するがよい! 我が究極の魔体と一つとなりしわらわの力になぁ!!」
直江がそこまでいうと、額のキズ口からバリバリとヒビが入り、遂には直江の身体は粉々に砕け散った。
だが、灰色の煙のようなものが発生し、ゆっくりと裸体の少女を取り巻き始めた。
「魔界の支配者にして魔神の末裔、黄泉姫様のご降臨ですよ! 先程までの非礼、とくと後悔するんですね」
五明の言葉と少女が目を開けるのとが同時であった。
その少女に見覚えがあったのは愛姫子であり、美菓子であった。
「ん!? あれって二の丸の隠し部屋に寝かされてた子じゃない?」
「本当だ! あの時は命の息吹みたいなものは感じなかったけどなぁ」
(そうなのか? いやそうだ! 真っ裸の女の子いたよな! 邪魔されて三人で絡まり合った素晴らしい思い出が甦ってきたぞぉ!!)
と、愛姫子のお尻をもみもみしたことしか思い出さないアシガルなのであった。
またそれかい。
つづく
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