決戦編3 舞い降りるは天使か
美菓子奮闘三部作をまとめて更新致します!
愛姫子が四天王・ロングサンをボコボコにしたその頃、その遥か上空では翼をはためかせた美菓子と魔王ジクイルは超巨大な魔竜ヴォルクスと死闘を演じていた。
互いに魔法力に優れた二人は間断なく攻撃魔法をヴォルクスへと繰り出し、ヴォルクスもまた魔竜特有の波状攻撃で一歩も引かなかった。
「くっ……どういうことだ! ヴォルクスがここまで強くなっているとは……」
以前、魔界で凌ぎを削っていた頃とは比べ物にならない程にヴォルクスは力を付け、さしものジクイルももはや一人では太刀打ち出来ないのだと悟った。
しかし、伝説のサトウである美菓子は内心感じていた。
(どれほど強いのかと心配してたけど、大したことないかも?)
それは愛姫子と美菓子の能力がこの世界で既にカンストしているからであり、自分自身では無類の強さを誇っていることに気付いていないだけであったのだが。
現に最初に威嚇射撃として射たレインボーアローは弾かれたが、少し強めに射つと全てヴォルクスに突き刺さり、今では至るところに矢傷を負わせ、しかも相当なダメージを与えているようであった。
そうこうしているうちに徐々に大陸全土が見渡せる位置まで下降し、真下には魔城があることが認識出来た。
「小癪なサトウめ! ジクイルもちょこまかとうるさいハエのようだ……」
そのように文句をたれたヴォルクスもまた魔城の真上であると知ると、腹いせに避難所となっている魔城目掛けて闇の咆哮を放った。
急襲を許したことに慌てた美菓子であったが、何故かそれ以上に動揺しつつも城を死守してみせたのは他でもないジクイルだ。
いかなバリヤーを張り巡らしてある魔城といえども、超強力なヴォルクスの一撃を凌ぐかどうかは五分といったところなのか、とにかくジクイルは急降下すると城の目前で180度回頭し、お得意の魔王バリケードでその咆哮を消し去ってみせた。
「おぉ、ジクイル様! よくぞご無事で!!」
「ジクイル様は健在であられたか!」
「やったぁ! みんなが一致協力したお陰だね!」
既にジクイル救出の一報は受けていたが、その目で直にジクイルの姿を確認したビジョンとゴウワン、そしてマタタキは手を取り輪になって喜んで回ったか。
「あれが表世界を牛耳ろうとしていた魔王ジクイル…………」
ジクイルを初めて見る各国のお歴々は、かつての侵略者が今では手を携える協力者であることに不思議と縁を感じ、実際に魔軍の本拠地に避難しているのだから尚一層その思いは強まった。
「ビジョン、心配をかけたな! で……余のコレクションはノンプロブレムであろうなぁ??」
その問いに目頭を熱くさせながらもしわくちゃ顔を綻ばせたビジョンは両手を頭の上にし、大きく丸を作ってみせた。
「ならばよしっ! もうすぐヴォルクスとサトウが降りて来る。城の防衛をくれぐれも怠るなよ!! いやいや心配だ、余が直々に防衛に当たることとしよう」
そう言ったジクイルであったが、共闘する美菓子の実力を既に分析し尽くしていたか、もはや己が戦闘に加わらなくてもヴォルクスを倒せると判断し、コレクションという名のブロマイドと部下達を守るために鉄壁の防御を敷いて空を仰いだ。
上空数千メートルから激しくぶつかり合いながらも、その影は次第に魔城から鮮明に見える位置にまで来ていたか、愛姫子はたった今、どちらが優位に戦いを展開しているのか見極めるかのように目を細めていたし、アシガルもまた手で即席の望遠鏡でもこさえたかのよう鈍よりと曇る空を見上げた。
「どうやら美菓子が押してるみたいよ!」
「そ、そっか! じゃあ美菓子ちゃんも煩悩照射はいらないかな? つーかシンガンはどうしたんだ……」
しかし性格とは裏腹に多彩な攻撃でその都度鋭く美菓子に攻撃を加えるヴォルクスもまた背水の陣。
そう簡単には勝敗は決死はしなかった。
「あっ! 愛姫ちゃーん!! 無事だったぁー?? 氷雨お姉様とオモチちゃんはどうなのぉ」
呑気にも愛姫子を目敏く発見した美菓子は、それなりにヴォルクスの攻撃を受けているようであったが、ほんのかすり傷程度であり、どう見ても矢が数多突き刺さるヴォルクスの方がダメージを負っているように見受けた。
「あ、あれが真の敵、魔竜王・ヴォルクスか……」
「なんと巨大にして邪悪な魔力か……」
ジクイルを見た時とは正反対な反応を示すお歴々であったが、マジカルフェアリー・美菓子の神々しい様を見るにつけ、世界は何か大きな力によって守られているのだと思わずにはいられなかった。
「ロングサンはボコボコにしてやったわ! ヒサ姉の仇はとったかんね!」
「いやいや死んだわけじゃないからね?」
「そっかぁ! じゃあ私も全力でヴォルクスさんをやっつけるだけだね!」
相変わらずの安定の余裕をみせるアシガルパーティーに、そこに立ち合う者達は絶大なる希望を託しつつも、ついつい美菓子の衣から溢れんばかりの崩れないプリンのような胸元と、ムチムチしたボディに釘付けとなっていくのであった。
(でしょでしょー?! 美菓子の肉付きは太鼓判なんだってば! 眼福眼福ぅ~)
貴様ら少しは緊張したらどうなのだ。
つづく
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